卒業生に送る色紙などに何か一言書くように求められた時「能忍自得」(よくにんずればおのづからう)という言葉を書くようにしています。
この言葉は、大学時代の自分の師匠からもらったものですが、この「能忍」という言葉には、深い意味が込められています。
是非、皆さんにこの言葉の意味を知ってもらいたいと思います。
授業の中では、折に触れて私の師匠であるF教授のことを話して来ました。
その学問に対する厳しい姿勢は、まさに「鬼」と呼ぶにふさわしいもので、自分に対して厳しい分弟子の我々にも大変厳しい指導で臨んでいました。
毎年、4月の最初に50人ぐらい履修していた学生が、余りの厳しさに脱落し1か月ほどで10人以下まで減るという状態でした。
そのようなF先生のゼミの中で、我々に繰返し述べていたのがこの「能忍」の精神です。その中身を箇条書きにしてみます
「能忍」の精神は、感謝の念なくしては決して生まれない
「能忍」の精神は、現況を肯定する気持ちとはっきりと乖違する。その乖 違心こそ「文学の心」である
「能忍」の精神は、心の革新を追及するものである
「能忍」の言葉の意味は「我慢できる」というものです。一切の雑念を排し、他の欲望を抑え込んだ上で真摯な態度を保持しながら学問に正対して行く、要するに我欲をおさえ学問に精進することを言っているのです。
そこで常に我々に求められたことは「能忍自切磋(能く忍ずればおのずから切磋す)」という姿勢でした。うそやごまかしのない純粋な学問の世界で互いに切磋することを厳しく求められていたのです。
志望校に向けて一所懸命に勉強するということは、大学合格につながるだけではなく、大学入学後専門課程に進むための基礎知識のまとめを行っていると言えます。
現状より更に高いレベルを目指すために、我欲をおさえて努力する。皆さんが文学を志すわけではありませんが、今の努力が大学での研究活動に直結していることも頭の片隅に置いておいて下さい。