「少しずつ、無理なくやろう」
そう思っているのに、なぜかできない。
食事を整えようとしては無理をして続かず、
そのたびに「またダメだった」と自分を責めてしまう――
そんなことはありませんか。
この記事では、うつ病の回復期・維持期にいる方が、食事改善を「少しずつ、無理なく」進めるのが難しい理由について、意志や努力の問題だけではない視点からお伝えします。
結論から言うと、それが難しいのはあなたが怠けているからでも、弱いからでもありません。
脳の仕組みや回復の特徴を知ると、「責めなくていい理由」が見えてきます。
私は、管理栄養士として病院での勤務経験があり、現在はうつ病の方に向けて
食事や栄養の情報を発信しています。
私自身も、体調の波の中で「わかっているのになかなかできない」経験を繰り返してきました。
この記事を読むことで、
今日すぐ何かを変えなくても、
「できない自分を少し責めにくくなる」
そんな感覚を持ち帰ってもらえたら嬉しいです。
この記事について(大切な前提)
この記事は、
軽症〜回復・維持期にあるうつ病の方
を主な対象にしています。
すでに医師や管理栄養士など、医療者から個別の食事指導を受けている場合は、必ずそちらの指示を優先してください。
ただ、食事以外のことで「少しずつ」が難しいと感じている方にとっても、共通するヒントが含まれているかもしれません。
また、日本うつ病学会のガイドラインでは、食事は薬物療法や精神療法(カウンセリングなど)に代わるものとはしていません。
このため、ここで紹介する内容のすべてを実践する必要はありません。
「こんな考え方もあるんだと知れたら十分」
そのくらいの気持ちで大丈夫です。
脳が「自己否定」に慣れてしまう仕組みを知る
うつ病になるほど、長いあいだ自己否定が続いていると、
「自分は価値がない」
「ちゃんとできていない」
という考えが、気づかないうちに当たり前になっていきます。
私自身も、
ふとした瞬間に自己否定の考えが浮かぶことが、今もあります。
以前はそれを
「うつ病ときちんと向き合えていないからだ」
と考えていました。
そんななかで、精神科医・田所俊作先生の動画に出会い、見方が大きく変わりました。
動画の中では、自己否定が続くのはつらい環境の中で生き延びるために身についた適応であると説明されています。
脳には、慣れた感情を「安心」と感じやすい性質があります。
そのため、長く自己否定の状態にいた「自分はダメだ」と思いながら耐えてきたという経験が続くと、脳はその状態を「通常運転」として保とうとします。
この状態で急に
「前向きになろう」
「自分を大切にしよう」
とすると、かえって苦しくなることもあります。
だから、
食事を少しずつ改善しようとしても続かない
「無理なくやろう」と思うほど自己否定が強まる
ということが起こりやすいのです。
このように、
自己否定が続いた状態に脳が慣れてしまうと、
「少しずつ、無理なく」が難しくなる場面が増えていきます。
周囲やSNSと比べて
「この程度で休むのは甘えでは?」
「すぐによくしなきゃ」
と、自分に厳しくなってしまうこともあります。
また、うつ病の回復は一直線ではなく、良い日とつらい日を行き来しながら進むのが一般的です。
つらい日のタイミングでは、脳の仕組みによって、失敗とは言い切れないことでも「失敗した」と感じやすくなることがあります。
ここまで、脳の仕組みを中心に
「少しずつ」が難しくなる理由を見てきましたが、
このほかにも、
📌薬の副作用(体重の増加など)
📌ストレスの多い環境
📌遺伝
など、自分のせいとは言いきれない要因が重なっている場合があります。
すべてを理解する必要はありません。
そうした要因があるかもしれないと知るだけで十分です。
次の章からは、少し楽になるかもしれない考え方を紹介します。
できる日だけでOKです。
「少しずつ」が難しいのは、頑張ってきた証拠かもしれない
ここまで見てきたように、自分ではコントロールしきれない要因もたくさんあります。
「できないのは、意志が弱いから」
ではなく、
「そう感じやすい状態が重なっているのかもしれない」
と考えるだけでも、責める気持ちが少し緩むことがあります。
また、コントロールしきれない要因がたくさんあるなかで、「少しずつ」が難しいと感じる日が続くこと自体、責められることではありません。
それは、つらい状況の中で、それでも何とかやろうとしてきた証拠でもあるのではないでしょうか。
そう受け止められるようになると、「もっと頑張らなければ」という気持ちが、少し和らぐことかもしれません。
「〜と思っている」と語尾につけてみる
いったんは「自分を受け入れてもいいかもしれない」と思えても、時間がたつと、また同じように自分を責める考えが浮かんでくることがあります。
これは、私を含め、多くの人が経験することで、自己否定に慣れてしまう脳の仕組みが関係しています。
そんなとき、その言葉の後ろに、
「〜と思っている」をつけてみます。
例)
「また続かなかった」
→「また続かなかった、と思っている」
「こんな食事じゃ意味がない」
→「意味がない、と思っている」
たったそれだけで、浮かんだ考えと距離を取りやすくなり、
「それは“事実”なのか」
「他の考え方があるんじゃないのか」
といった考えが浮かびやすくなります。
私自身、今でも自分を責める考えにとらわれることがあります。
時間はかかりましたが、次に紹介する工夫とあわせて続ける中で、少しずつ距離を取れることが増えてきました。
悩みを外に出す(話せなくてもOK)
「~と思っている」と語尾につけることで、自分を責める気持ちと距離を取れることもあります。
それでも、
「それ以上、別の考え方が浮かばない」
「頭の中でぐるぐるしてしまう」
ということも多いのではないでしょうか。
「少しずつ、無理なく」が難しい理由は、一つではありません。
脳の仕組み、回復の波、環境――
一人で抱えるには多すぎます。
外に出すことで、一人では気づきにくい、ほかの考え方に気づきやすくなり気持ちが楽になる機会を増やせます。
必ずしも、誰かにうまく話せなくても大丈夫です。
📌ノートに書き出す
📌AIに「他の考え方はない?」と聞いてみる
📌信頼できる人に「今日はしんどい」とだけ伝える
どれも、「できたらラッキー」くらいで十分です。
おわりに|今日は、ここまでで大丈夫です
ここまで、少し楽になるかもしれない考え方をお伝えしてきました。
そのうえで、
「今すぐよくなる解決策がなくて、あまりすっきりしない」
と感じた方もいるかもしれません。
それは、自分なりの向き合い方を見つけるのに、時間がかかるものだからだと思います。
でも、「自分を責めなくていい理由」を知ることは、それだけで心の負担を少し軽くしてくれることがあります。
「少しずつ」が難しいのは、つらいなかでも頑張ってきた証拠ともいえる。
そう知るだけでも、今日は十分です。
回復には波があるため、今は目に見える変化がないように感じたり、むしろ後退しているように思えることもあるかもしれません。
それでも、あとから振り返ったときに、「あの時期も無駄ではなかった」と思えることは、意外と多いものです。
このブログでは、今回のような考え方を大切にしながら、うつ病の方にも取り入れやすい食事や栄養の話を書いていきます。
よければ、また元気なときにのぞいてもらえたら嬉しいです。
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参考サイト
日本うつ病学会「うつ病診療ガイドライン2025」2026/1/10閲覧
参考文献
功刀 浩, 阿部 裕二. 臨床に役立つ精神疾患の栄養食事指導. 講談社, 2021