その「焦り」は、野生の勘かもしれない
「まずは就職して、社会勉強をしてから」
「人脈もスキルもないのに独立なんて無謀だ」
学生や20代の若手社会人が「自分の力でやってみたい」と口にすると、周囲からは決まってこのような「大人のアドバイス」が返ってきます。
もちろん、心配してくれているのは分かります。
しかし、そのアドバイスに従って「安全なルート」を選ぼうとする時、胸の奥で何かが燻るのを感じるのではないでしょうか。
「今じゃないと、動けなくなる気がする」
その直感は正しいものです。
世間一般の常識とは裏腹に、ビジネスの世界において「何も持っていない(失うものがない)ということは、何にも代えがたい最強の武器になります。
今回は、家庭を持つ前の「身軽な時期」に独立・法人化することの合理性と、そのディテールを紐解きます。
「家族」ができると、想像以上に動けなくなる
「結婚してから」「子供が大きくなってから」と先送りにする人もいますが、現実は残酷です。
いざ守るべき家族ができると、独り身の頃には想像もしなかった「重力」が働きます。
(1) 「失敗」が許されない心理的プレッシャー
学生や独身であれば、最悪の場合、実家に戻ったり、友人の家を転々としたり、カップ麺で凌いだりしても生きていけます。
自分一人の責任で済むからです。
しかし、配偶者や子供がいるとそうはいきません。
「今月、給料が出ないかもしれない」という事態は、家族の生活を脅かすことになります。
「家族のために挑戦したい」はずが、いつの間にか「家族のために無難な道を選ばざるを得ない」というジレンマに陥ってしまうのです。
(2) 時間というリソースの枯渇
創業期は、寝食を忘れてビジネスに没頭する時期が必要になることもあります。
しかし、家庭があれば、育児や家事への参加も大切な責任です。
自分の全時間をビジネスという一点に集中投下できるのは、皮肉にも「独り身」である今だけの特権なのです。
失敗しても「キャリア」は死なない
若くして独立することへの最大の懸念は「失敗したらどうするんだ」という点でしょう。
しかし、仮に事業がうまくいかなくても、人生が終わるわけではありません。
むしろ、選択肢は広がります。
(1) 「足りないもの」を知って再就職する
一度でも自分で商売をやると、「自分には営業力が足りなかった」「経理の知識がなかった」と、痛みを伴って理解できます。
その状態で会社員に戻ると、ただ漫然と働いている人とは「仕事への解像度」が段違いになります。
結果として、高い評価を得て活躍する「出戻り組」は非常に多いのです。
(2) 知り合いの会社の「幹部」になる
自分でリスクを取って挑戦した経験は、同じように挑戦している経営者から見れば、喉から手が出るほど欲しい資質です。
「一度経営の苦しみを知っている」という信頼感から、創業メンバーや役員(幹部)として迎え入れられるケースも多々あります。
つまり、独立は「成功か、野垂れ死にか」の二択ではありません。
「成功すれば経営者、ダメでも最強の幹部候補」という、どちらに転んでも美味しいキャリアなのです。
「社会人経験」は時に邪魔になる
「会社で仕組みを学んでから」という意見も一理ありますが、大企業での経験がスタートアップや独立でそのまま生きるとは限りません。
大企業のスキル:
整ったレールの上を、脱線しないように走るスキル(調整力、社内政治)。
独立のスキル:
道なきジャングルを、ナタ一本で切り開くスキル(突破力、生存能力)。
むしろ、会社員生活が長くなると、「予算がないと動けない」「上司の許可がないと決められない」という「サラリーマン的な思考のクセ」が染み付いてしまうリスクがあります。
何の色にも染まっていない真っ白な状態だからこそ、常識外れのアイデアで市場を突破できることも多いのです。
まずは「小さな箱」を持つ
では、具体的にどう動くべきか。
いきなり「世界を変える」ような巨大なビジネスを目指す必要はありません。
まずは個人事業主、あるいは「一人社長」で法人化する:
学生や20代のうちに、「自分の箱(法人)」を作ってしまうことをお勧めします。
狙い:
「給料をもらう側」から「請求書を切る側」へ意識を切り替えるためです。
たとえ売上が小さくても、自分で稼ぎ、税金を納める経験は、どんな研修よりも濃密なビジネススクールになります。
将来の家族を守るための「今の挑戦」
独立や起業は、決してギャンブルではありません。
それは、会社という看板がなくなったとしても、自分の力で生きていける「生存能力」を鍛える訓練です。
今、リスクを取ってその筋肉を鍛えておくことは、将来、大切なパートナーや子供ができた時に、彼らを守るための「最強の盾」になります。
会社が倒産しても、リストラにあっても、「大丈夫、俺が(私が)何とかするよ」と笑って言える。
そんな頼もしい自分になるために。
守るものがない今こそ、荒野へ飛び出し、自分という旗を立てる絶好のチャンスなのです。