「大口顧客だから儲かる」は本当か?

「大口顧客だから儲かる」は本当か?

記事
ビジネス・マーケティング
売上の大きい顧客は、会社にとって重要な存在です。

毎月の売上を支えてくれる。
売上計画を作るうえでも大きな割合を占める。
営業担当者にとっても、失いたくない大切な顧客です。

そのため、
 ・大口顧客を優先する
 ・多少の値引きには応じる
 ・急な要望にも対応する
 ・個別対応もできるだけ受ける
という判断をすることがあります。

もちろん、大口顧客を大切にすること自体は間違いではありません。

しかし、注意したいことがあります。
売上が大きい顧客ほど、必ずしも利益が大きいとは限らないということです。
今回は、顧客別に売上と利益を見るときの考え方を整理します。

1.売上が大きい顧客は、目立ちやすい

会社では、売上金額の大きい顧客ほど目立ちます。
売上が大きい顧客は、会議でも話題に上がりやすいです。
売上計画への影響も大きく、経営者や営業責任者も気にします。

そのため、多くの場合、売上の大きい顧客は「重要顧客」として扱われます。
もちろん、それ自体は自然なことです。

売上がなければ利益も生まれません。
大口顧客との取引が、会社の安定につながっていることもあります。

ただし、売上だけを見ていると、判断を間違えることがあります。
大切なのは、売上の大きさだけではありません。
その売上からどれだけの利益が得られているかです。

2.売上が大きくても、利益が残らないことがある

顧客別の採算を見るときは、
売上だけでなく、限界利益を見ることが重要です。

ここでいう限界利益とは、売上高から原材料費や外注費など、
売上に応じて増える費用を差し引いた利益のことです。

例えば、次のような2つの顧客がいるとします。
ブログ29_図.png

A社は大口顧客で、定価ベースでは1億2,000万円分の取引があります。
しかし、大口であるため値引き率が高く、実際の売上高は8,400万円です。
さらに、A社向けの製品は仕様が複雑で、原材料費や加工費などの変動費も
高くなっています。
そのため、限界利益率は25%にとどまります。

一方、B社は定価ベースでは4,000万円の取引です。
売上規模はA社より小さいものの、値引き率は10%に抑えられており、
標準仕様に近い製品が中心です。
そのため、変動費も抑えられ、限界利益率は50%あります。

売上だけを見ると、A社の方が圧倒的に大きな顧客に見えます。
しかし、限界利益で見ると、A社は2,100万円、B社は1,800万円です。
この時点で、売上規模ほどの差はありません。

さらに、A社には、
 ・個別仕様への対応
 ・短納期対応
 ・専用在庫の管理
 ・営業や事務の追加対応
といった個別対応コストが多くかかっています。

ここでは、限界利益から個別対応コストを差し引いたものを、
顧客別利益として考えます。

その結果、顧客別利益で見ると、
A社は500万円、B社は1,300万円となります。

つまり、売上はA社の方が大きいのに、
社に残る利益はB社の方が大きいということが起こります。

3.見落とされやすいのは、対応コスト

売上や限界利益までは見ていても、
個別対応コストまで見ていない会社は少なくありません。

大口顧客には、次のような対応が発生しがちです。
 ・値引き対応
 ・短納期対応
 ・専用品や特別仕様への対応
 ・個別の資料作成
 ・専用在庫の確保
 ・返品やクレーム対応
 ・営業担当者の訪問回数増加
 ・事務処理や問い合わせ対応の増加

一つひとつは必要な対応に見えます。
しかし、それらが積み重なると、会社の中に大きな負担が生まれます。
しかも、この負担は見えにくいです。

原材料費や外注費のように数字で見えやすいコストだけでなく、
営業、製造、物流、事務、管理部門の時間も使っています。

そのため、売上が大きい顧客ほど、
実は会社全体の負担も大きくなっていることがあります。

4.大口顧客が悪いわけではない

ここで誤解してはいけないのは、大口顧客が悪いということではありません。
大口顧客は、会社にとって非常に重要です。

売上を安定させる。
生産量を確保する。
実績や信用につながる。
新しい取引先への紹介につながる。

こうしたメリットもあります。

問題は、大口顧客を大切にすることではありません。
売上が大きいという理由だけで、採算を見ずに優先し続けることです。

売上規模だけを見ていると、
 ・値引きを受け入れすぎる
 ・個別対応が増え続ける
 ・現場の負担が大きくなる
 ・他の利益率の高い顧客への対応が後回しになる
ということが起きます。

その結果、会社全体としては忙しいのに利益が残らない状態になります。

5.顧客別に見るべき3つの数字

顧客別の採算を見るときは、少なくとも次の3つを確認したいところです。

① 実売上高
まず、どの顧客がどれだけ売上を作っているかを見ます。
ここで大切なのは、定価ベースではなく、値引き後の実売上高を見ること。
大口顧客の取引額は大きいですが、その分、値引き率が高くなっていることがあります。

② 限界利益・限界利益率
次に見るべきは、限界利益です。
同じ売上でも、変動費が違えば残る利益は変わります。

特別仕様が多い。
原材料費が高い。
加工の手間がかかる。
外注費が増える。

このような顧客は、売上が大きくても限界利益率が低くなることがあります。
売上高ではなく、限界利益で見ると、顧客の見え方が変わります。

③ 個別対応コスト
最後に見るべきは、個別対応にかかっているコストです。
 ・営業の訪問回数
 ・見積や資料作成の手間
 ・製造や物流の特別対応
 ・問い合わせ対応
 ・クレーム対応
 ・専用在庫の負担
こうしたものを厳密にすべて数値化するのは難しいかもしれません。
それでも、どの顧客にどれだけ手間がかかっているかを把握しようとすることは重要です。

6.売上ではなく、残る利益で考える

顧客を評価するときは、売上だけでなく、
会社に残る利益で考える必要があります。

売上が大きい顧客でも、
 ・値引きが大きい
 ・仕様が複雑で変動費が高い
 ・個別対応が多い
 ・現場の負担が大きい
 ・専用在庫が必要
 ・他の仕事を圧迫している
のであれば、見直しが必要です。

一方で、売上規模はそこまで大きくなくても、
 ・値引きが少ない
 ・限界利益率が高い
 ・標準仕様に近い
 ・対応が標準化されている
 ・継続的に購入してくれる
 ・現場の負担が小さい
顧客は、会社にとって非常に価値があります。

大切なのは、顧客を売上順に並べることではありません。
顧客ごとに、どれだけ会社に利益と余力を残しているかを見ることです。

7.まとめ
売上の大きい顧客は、会社にとって重要です。
しかし、大口顧客ほど、必ずしも儲かっているとは限りません。

売上が大きくても、
 ・値引きが大きい
 ・限界利益率が低い
 ・仕様が複雑で変動費が高い
 ・個別対応が多い
 ・現場の負担が大きい
 ・専用在庫や管理負荷がある
場合、会社に残る利益は小さくなることがあります。

一方で、売上規模は小さくても、限界利益率が高く、対応コストが低い顧客の方が、会社に利益を残していることもあります。

大切なのは、
売上の大きさだけで顧客を判断しないこと
です。

顧客別に、
 ・実売上高
 ・限界利益、限界利益率
 ・個別対応コスト
を見て、どの顧客が本当に会社に利益を残しているのかを整理する必要があります。

忙しいのに利益が残らない会社は、顧客別の採算を見ることで、改善のヒントが見つかることがあります。

もし、
「売上はあるのに、利益が残らない」
「大口顧客への対応で現場が疲弊している」
「どの顧客を重視すべきか整理したい」
という場合は、状況整理のお手伝いも可能です。

ブログでは一般的な考え方をお伝えしていますが、実際には会社ごとの商品構成、顧客別の条件、対応コスト、営業方針によって、取るべき対応は変わります。

現状の売上構成や顧客別の採算をお聞かせいただければ、どの顧客が本当に利益を残しているのか、どこを見直すべきかを一緒に整理することも可能です。

感覚ではなく、構造で整理する。
それだけで、顧客の見え方は大きく変わります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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