【契約書ブログシリーズ第17回】契約解除条項の作り方|解除事由・催告・解除通知・清算条項を“揉めない形”に整える

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法律・税務・士業全般
契約って、結ぶ瞬間よりも「終わらせる瞬間」にトラブルが起きます。
そして、契約トラブルの最終局面で必ず出てくるのがこの一言。

「解除したい(された)。でも、どうすればいい?」

解除条項が弱い契約は、例えるなら非常口のない建物です。
いざ火が出たとき、出られない。
出られないから、揉める。長引く。費用が膨らむ。

この記事では、契約初心者にもわかりやすく、
解除条項の設計を「解除事由 → 催告 → 解除通知 → 清算」まで一気に整理します。

1.まず前提:「解除」は“勝手にできない”

解除は、ただ「やめます」と言えば成立するものではありません。

・契約書に解除事由があるか
・法律上、解除が認められる状況か
・催告(期限を切った履行請求)が必要か
・通知の形式はどうするか
・終了後の精算はどうするか

ここが曖昧だと、解除した側が逆に損害賠償請求されることすらあります。

2. 解除条項の“理想の設計図”

解除条項は、次の4点セットで初めて機能します。

・解除事由(どんなとき解除できる?)
・催告(警告と猶予は必要?)
・解除通知(どう通知すれば成立?)
・清算条項(解除後、お金・成果物・資料はどうする?)

順番に見ていきます。

3. 解除事由の作り方|「具体的に列挙」が強い

解除事由は、抽象的だと揉めます。
“解除できる条件”を具体的に並べるのが基本です。

解除事由の代表例(ビジネス契約でよく使う)
・支払遅延(賃料・報酬・代金の滞納)
・納期遅延(成果物が期日までに出ない)
・秘密保持違反(情報漏洩)
・競業避止違反(顧客持ち出し)
・反社条項違反
・破産・差押え・支払停止など信用不安
・重大な契約違反(業務放棄・虚偽報告など)

例文(解除事由:列挙型)
甲または乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当したときは、本契約を解除することができる。
(1) 本契約に違反し、相当期間を定めた催告を受けたにもかかわらず当該違反を是正しないとき
(2) 支払停止、手形交換所の取引停止処分を受け、または破産・民事再生等の申立てがあったとき
(3) 秘密保持義務に違反したとき
(4) 反社会的勢力に該当し、または関与していることが判明したとき

ポイント
・「重大な違反」だけだと曖昧 → 具体例を入れる
・“支払遅延”は「◯ヶ月以上」「◯回連続」など数値化すると強い
・反社・倒産は「無催告解除」にしておくのが定番

4. 催告の作り方|“必要な解除”と“不要な解除”を分ける

解除には2種類あります。

・催告解除:相手に「直して」と猶予を与えてから解除
・無催告解除:即解除(猶予なし)

ここを分けると、実務がめちゃくちゃ楽になります。

4-1. 催告解除(基本形)

例えば、軽微な遅れやミスは「直せば済む」ことも多い。
その場合は、いきなり解除すると逆に揉めます。

例文(催告)
甲または乙は、相手方が本契約に違反した場合、相当期間を定めて是正を催告し、当該期間内に是正されないときは本契約を解除できる。

ポイント
・「相当期間」は、目安として 7日〜30日 が多い
・何を直すべきか(未払いの金額、納品物の内容)を通知書に明確化

4-2. 無催告解除(即解除にして良い代表例)

次は猶予を与える意味が薄いので、無催告解除が一般的です。

・反社
・破産・支払停止など信用不安
・秘密保持違反(漏洩は取り返しがつかない)
・成果物の偽装、虚偽報告など信頼破壊

例文(無催告解除)
甲または乙は、相手方が次の各号に該当したときは、何らの催告を要せず直ちに本契約を解除できる。
(1) 破産等の申立てがあったとき
(2) 反社会的勢力に該当することが判明したとき
(3) 秘密保持義務に違反したとき

5. 解除通知の作り方|「いつ」「どうやって」が揉めどころ

解除は、通知が相手に到達して初めて効力が発生するのが原則です。
口頭やチャットだけだと、「言ってない」「見てない」になります。

例文(解除通知)
解除の意思表示は書面(電子メールを含む)により行うものとし、相手方に到達した時点で効力を生じる。

ポイント
・「書面」だけだと郵送限定に見える場合がある → メール可を明記
・高額・揉めそうな案件は 内容証明郵便が安全
・解除日を明示すると後がきれい
  「本書面到達日をもって解除する」
  「◯年◯月◯日付で解除する」

6. 清算条項の作り方|解除後に揉める“お金”と“成果物”を片づける

解除で一番揉めるのは、実はここです。

・途中までやった分の報酬は?
・着手金は返す?
・納品物は使っていい?
・資料やデータは返す?消す?
・未払いがある場合は?

解除条項は、清算条項まで書いて初めて完成です。

6-1. 報酬の清算(請負・委任で考え方が変わる)

委任(準委任)型(例:コンサル・顧問)
「作業した分」精算にしやすい。
例文:
契約終了時点までに提供された役務に応じて、当事者は協議のうえ報酬を精算する。

請負型(例:制作・工事)
「完成していないのに払うか」が論点になりがち。
例文(検収済み部分は支払う設計):
解除時点で検収済みの成果物については、当該成果物に対応する報酬を支払う。未検収部分については支払義務を負わない。

6-2. 成果物・資料・秘密情報の返還/消去

NDAとセットで入れておくと強いです。
例文:
契約終了後、受領した秘密情報および資料(複製物を含む)は、相手方の指示に従い返還または消去する。

6-3. 損害賠償との関係(解除しても請求できる?)

解除と損害賠償は別物です。
「解除したら終わり」ではありません。
例文:
本契約の解除は、解除当事者の損害賠償請求を妨げない。

まとめ|解除条項は「出口の設計」

解除条項は、揉めない契約の“出口”です。

・解除事由は具体的に列挙
・催告解除と無催告解除を分ける
・通知方法を明確にする
・清算条項でお金・成果物・資料を整理する

この4点が揃うだけで、契約の終わらせ方が一気に“実務レベル”になります。

次回予告

次回は、実務で問い合わせが多いテーマとして
「秘密保持条項の作り込み|秘密情報の定義・例外・目的外利用禁止・返還消去」を“条文設計”の観点からさらに深掘りします。

最後までご覧いただきありがとうございます。


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