【契約書ブログシリーズ 第16回】 契約書に入れておくべき損害賠償条項・違約金条項の考え方

記事
法律・税務・士業全般

はじめに

契約トラブルで最も多いのが、結局ここに行き着く問題です。

「損害が出たから払ってほしい」
「約束を破ったんだから違約金を請求したい」
「でも契約書に何も書いてない…」

損害賠償や違約金は、法律上ある程度は請求できる場合があります。
しかし実務では、契約書に条項がないと“揉めやすい”のも事実です。

この記事では、契約書に入れておくべき
損害賠償条項 と 違約金条項 の違い・使い分け・書き方の注意点を、行政書士の視点で分かりやすく解説します。

1.損害賠償条項と違約金条項は「目的」が違う

● 損害賠償条項
実際に発生した損害を、相手に賠償してもらうための条項

● 違約金条項
約束違反があったときに、あらかじめ決めた金額(または算定方法)を支払わせる条項

両者は似ていますが、運用のされ方が全く違うため、契約書では役割を分けて設計するのが基本です。

2.損害賠償条項を入れるべき理由

損害賠償は法律の原則として請求できる場合がありますが、契約書では次を明確にしておくと紛争が減ります。

・どんな損害が対象か(範囲)
・上限はあるか(責任制限)
・間接損害はどうするか(逸失利益・特別損害)
・弁護士費用は含むか
・免責事由(天災等)はどうするか

2-1.典型的な損害賠償条項(基本形)

例文:
甲または乙は、本契約に違反し相手方に損害を与えたときは、相手方に生じた通常損害を賠償する責任を負う。

ポイント:
・まずは「違反+損害」で賠償責任が発生することを明文化
・「通常損害」まで、として範囲を整理するのが一般的

2-2.“特別損害”や“逸失利益”をどう扱うか

現場で揉めるのがここです。

「売上が落ちた分も払え」
「信用が落ちた損害もある」

これらは「特別損害」「逸失利益」に分類されることが多く、認められるかどうかが争点になります。

例文(除外する例):
いかなる場合も、逸失利益、間接損害、特別損害については賠償責任を負わない。

ポイント:
・BtoBではよく入る(予測不能な損害まで背負わないため)
・ただし相手方が弱い立場(消費者等)の場合は注意

2-3.賠償の上限(責任制限条項)

契約金額に比べて賠償が無制限だと、受託側はリスクが大きすぎます。

例文:
賠償額の上限は、本契約に基づき乙が受領した直近6か月分の報酬総額を上限とする。

ポイント:
・IT・業務委託契約で多い
・上限の設定は「合理性」が重要(一方的すぎると争点に)

2-4.弁護士費用条項

現実に費用がかかるため、定めておくと抑止力になります。

例文:
甲または乙が本契約に違反し紛争となった場合、違反当事者は相手方が支出した合理的な弁護士費用を負担する。

ポイント:
・すべての事件で全額認められるとは限らないが、交渉上の効き目は大きい

3.違約金条項の考え方(「証明の手間」を減らす)

損害賠償は「損害額の立証」が必要になりがちです。
そこで、証明の手間を減らすために使われるのが違約金です。

3-1. 違約金条項の基本形

例文:
乙が本契約に違反した場合、乙は甲に対し違約金として金〇〇円を支払う。

ポイント:
「違反したら即〇円」という明確さがメリット

ただし金額が過大だと無効・減額のリスク

3-2. 違約金と“予定損害金”の関係(超重要)

実務では、違約金を
違約金(制裁的) として書くのか
予定損害金(損害の予定) として書くのか
を明確にするのがポイントです。

多くの契約では「違約金=予定損害金」として扱う形が安全です。

例文:
前項の違約金は、損害賠償額の予定とする。

ポイント:
これにより「損害額を別途証明しなくても請求しやすい」設計になる

3-3. 違約金を入れるのに向いている条項

違約金は、違反が明確で金額換算しやすい場面に向きます。

秘密保持義務違反(情報漏洩)
競業避止義務違反(顧客持ち出し)
納期遅延(遅延日数×金額)
無断転貸・無断使用(賃貸借)

例(遅延ペナルティ):
乙が納期に遅延した場合、乙は遅延日数1日につき金〇〇円を違約金として支払う。

4. “二重取り”を防ぐ設計:違約金+損害賠償は併用できる?


ここも揉めやすいポイントです。

パターンA:違約金のみ(それ以上請求しない)
例文:
違約金の支払いにより、甲乙はそれ以上の損害賠償請求を行わない。
→ 受託側に優しい設計(上限を作れる)

パターンB:違約金に加えて損害賠償も可能(不足分請求)
例文:
違約金の支払いは損害賠償請求を妨げない。
→ 依頼側に強い設計(抑止力は強いが、過大になりやすい)

実務のおすすめ:
情報漏洩など重大な違反は「B」
それ以外は「A」または「上限付きB」

5. 無効・トラブルになりやすい条項例(要注意)

NG例①:広すぎる

「一切の損害を賠償する」
→ どこまで含むか不明で紛争になりやすい

NG例②:違約金が過大

「違反したら一律1,000万円」
→ 契約金額・内容に比して過大だと争点化

NG例③:責任制限が一方的

「乙は一切責任を負わない」
→ 契約の公平性を欠き、無効・修正されるリスク
6. 行政書士からのアドバイス

損害賠償・違約金条項は、次の順番で設計すると失敗が減ります。

1.何が違反か(義務条項を具体化)
2.どんな損害が想定されるか(通常損害/特別損害)
3.上限を設けるか(責任制限)
4.違約金で立証負担を減らすか(予定損害金)
5.併用の可否を決める(二重請求の整理)

契約書の目的は「戦うため」ではなく、揉めないためです。
そのためにも、損害賠償・違約金は“強く書く”よりも“明確に書く”ことが大切です。

まとめ


・損害賠償条項は「範囲・上限・例外」を明確にするのが重要
・違約金条項は「立証負担を減らす」ために有効
・「予定損害金」と明記すると運用しやすい
・併用(違約金+損害賠償)をどうするかは契約設計の核心
・過大・曖昧・一方的な条項は逆に紛争を招く

次回予告

次回は、実務で“最も揉めやすい”条項のひとつ、
「契約解除条項の作り方|解除事由・催告・解除通知・清算条項」
を解説します。

最後までご覧いただきありがとうございます。

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