入札に興味を持ってくださった中小企業の方からよく聞かれる質問に
「結局、大手が強いんでしょ?」
「うちみたいな小さな会社が参加しても勝てないのでは?」
という疑問があります。
「省庁や自治体と取引する」というと、どうしても大企業が取引するようなイメージがありますよね。
結論からいえば、
大手が有利な点はあるけれど、基本的には価格や提案勝負
となります。
政府は現在、中小企業への発注を目標数値まで設定して促進しています。そうした政府の追い風もあり、「中小企業だからこそ、どこで勝つのか?」というポイントを抑えれば十分勝っていくことは可能です。
この状況で「大手じゃないと無理」と決めつけてしまえば大きなビジネスチャンスを失います。
この記事では、大手が実際に有利な点と、中小企業が勝っていくためのポイントを説明します。
まず見るべきは入札方式
まず初めに、そもそも企業規模なんて一切見られることなく落札企業が決まることがあります。
それは、入札方式によります。
入札方式には下記の3種類があります。
・価格競争入札
・総合評価方式
・プロポーザル方式
*入札方式についてはこちらの記事でも詳しく解説しています!
この中で、「価格競争入札」では、基本的に価格のみで落札企業が決まります。この方式では企業規模は一切関係ありません。純粋に価格だけの勝負です。
もちろん特定の商材では大手企業の方が価格交渉力があったり、かなり強気の値下げをして取りにくるケースもあるでしょう。一方で、大手企業は人件費が高かったり、特定分野では中小企業の方が安い価格を出せるケースは十分にあります。
このため、価格競争入札については純粋に条件を満たしたうえで、いかにより低い価格を提示できるのか?という勝負になります。企業規模は全く関係ありません。
大手が有利になりやすい理由
一方、総合評価方式やプロポーザルでは、価格のみではなく提案内容が評価されます。
正直にいえば、この方式の時に大手企業が有利な点がいくつかあります。
(安易に「中小でも絶対勝てます!」とは言いません)
ただこれも絶対的なものではありません。
ポイントはこれら大手が優位なポイントを知ること。それらに対して自社ならではの強みを活かし、それらを凌駕する提案を実現することにあります。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。
大手がどういう点で評価されやすいか見てみましょう。
1. 知名度による安心感
こちらの記事でもお伝えしましたが、入札は基本的に落札者が公正に決定されるように制度設計されています。
これは総合評価方式やプロポーザルでも変わりません。審査基準は事前に公表され、時には客観的な評価をするための外部評価員の方が任命されます。
そうした形で審査は公正な基準で厳正に行われます。おこなわれま・す・が!
評価者も生身の人間である以上、大手企業の知名度・ブランドに対して安心感を覚え、「ゲタ」を履かせることはゼロではありません。
「よく知っている会社だから安心」という、いわゆる「ハロー効果」が働くことはあります。
例えば東京都などいくつかの自治体では、外部評価員が触れる提案書やプレゼンでは一切企業名を出さないようにしているところもあります。(素晴らしい取り組みで頭が下がります)これは、裏を返せば、「大企業のネームバリューが審査に影響しうる」ということでもあると思います。
2. 体制・リソースが厚い
単純なネームバリュー以外の面でも大企業が評価されやすい点があります。それは「事業実施上のリスクの低さ」です。
自治体は、契約後に落札企業が、その事業をきちんと履行できるかをかなり重視します。
税金を使う以上は当たり前ともいえますが、「成果が出るか?」というリターンの大きさよりも、「委託業務を遂行できない」リスクが低いか?という点がまず優先されます。
ハイリスク・ハイリターンな企業と比べれば、圧倒的にローリスク・ローリターンな企業が好まれるんですね。
大手企業はこの場合、単純な知名度による安心感だけではなく、実際的な提案でも中小企業よりも優位な提案をしやすい傾向があります。たとえば
・人員体制:
例えば広範囲な地域で実施する事業やリソースが必要な事業に対して、大企業は拠点の多さや多数の人員を導入できる点をPRできます
・バックアップ体制:
何かあったときのバックアップについても、社員10人の会社よりも、1,000人の会社の方がバックアップが十分そうだと説得力があることは否めません
・トラブル対応力:
大手の方がもしものトラブルなどの際、対応する専門的な人員がいると提示しやすいです
実際は大手企業も部門別に分かれており、当該入札業務に無制限に人材を送り込めるわけではないのですが、どうしてもこうした点は大手が評価されやすくなります。
3. 実績を出しやすい
次に評価されやすい点で挙げられることに「実績」があります。前述の「リスクの低さ」の観点でも、提案内容に加えて重視されるのは「実績」です。
規模や案件内容が似ている他自治体で、類似案件をきちんとこなしているという実績がある企業は、そうでない企業よりやっぱり信頼しやすいですよね。
この点でも大手企業が有利な点があります。
それは
一法人としてみた時に、大手は過去の類似実績を多く持っていることがある
からです。
入札では評価対は「一法人」です。実績もその法人が受託した案件を記載します。
この場合、例えば大手企業ですと異なる部署や、他地域の拠点でたまたま同じような案件を手がけていたということはあるでしょう。大きい法人の社内を探し回れば、類似案件の実績を引っ張り出せる可能性は高くなります。
たとえ提案者の部署と全く違う部門、地域の実績でも大手企業の場合は同じ法人の実績として提出できてしまいます。
そして、そうした実績があると評価上は有利になります。
4. 過去の積み重ねを流用できる
入札の場合、「情報量の差」はそのまま落札率の高さに直結します。情報についていえば、こちらの記事でもご紹介した通りその案件に直接関わる情報が最も強力ですが、実はそれら以外にも、間接的な情報も強さにつながります。
たとえば下記のような情報が社内にあると、ゼロのところと比べれば評価はグッと取りやすくなります。
・過去の提案書雛形:
以前の提案書の事例が社内に豊富にある。実際に提出した際に評価された内容をベースに、トライしたい案件の提案書を作れる
・質疑応答についての蓄積:
過去にどのような提案書を出した際に、どのような質問がなされたのか?というデータを元に、適切な想定質疑応答を準備できる
このように過去の蓄積や経験をうまく活かして提案できるのも大手の強みといえるでしょう。
5. 自治体営業の体制がある
こちらについては今までのような「大手の方が評価のされやすい」といった点よりも、より実際的な営業面での強さという観点です。
大企業には企業規模が大きいことからさまざまな部門があります。その中でも企業によっては自治体営業を専属で行う部門を有している企業があります。
以前の下記の記事で自治体営業的な取り組みを行うことで、提案のカギとなる情報を集めたり、時には仕様書を自社に優位な内容にしていくといった取り組みが可能だとお伝えしました。
大企業の場合、こうした自治体営業専門のチームがあることで、上記のような営業を行うことで、それらがない中小企業よりも非常に優位な状況で提案できるようにしていることがあります。
ただし、大手を恐れすぎるのも間違い
ただし、上記を読んで「大手にはまず勝てない」と考えるのも正しくはありません。
例えば下記のような点があります。
大手でも知見・実績のない分野はある
新しい分野やニッチな分野だと、大手企業だとしても彼らの社内に知見や情報がないことは十分ありえます。
参入できる分野は限られる・営業部隊が必ずあるとは言えない
大手企業の場合、指揮系統がしっかりしている分、新しい分野への参入については社内承認をとる必要があります。その場合、なぜ参入するのか?といった説明コストが高くなってしまい、参入できないケースもままあります。
中小企業において、トップダウンや担当者の一存で「やってみよう」でやれる話が大手だとできないこともままあります。
加えて、入札専門の営業人員についても、当該企業の本業ではない分野だと、必ずしも営業人員がいるわけではない場合も多くあります。
情報収集の面で中小企業の方が機動力で有利になる点もある
2にに加え、大手企業の場合、社内の他の部署やその地域の拠点に話を通す必要があったりして、その調整コストのため気軽に情報収集のアクションを取れないケースもままあります。
例えば東京にあるDX研修の部署が四国の入札案件の狙っている場合、四国支社にまず話を通さなきゃいけない・・・といったことが多々あり得ます。
これも中小企業だと「やってみよう」でスピーディーに実施できることが、大手だとできないというケースです。結果的に機動的に動き回れる中小企業の方が有利になることは十分ありえます。
大手だから高コストになり不利になることがある
特にサービス業的な業務を請け負う役務系の案件においては「人件費」がコストの中心になります。
これに際して大手企業は一般的に中小企業より給与水準が高いため、損益分岐点が高くなってしまい小規模案件には手が出しづらい傾向にあります。
大手が有利にならないように配慮される自治体もある
先述の通り、東京都など一部の自治体や機関では提案書やプレゼンで企業名を一切出さないようにするという形で、企業のネームバリューが審査に影響しないようにされている自治体もあります。
上記を中小企業目線でまとめてみると
・新しい分野やこれから始まる案件を中心に
・中小企業の機動性を活かして情報収集を行い
・特に初期は利益を少し犠牲にしても実績をとりにいく
・企業名を伏せる自治体は積極的に狙いに行く
ということになるかと思います。
避けるべき案件を避け、中小の強みを活かして勝ちにいく
前項では大手企業だからこそハンデになり得る点を記載しました。
結局のところ、
大手には大手の、中小には中小の優位な点と戦い方がある
ということであるといえます。
たとえば、大手が優位になりそうな下記ような案件は避けた方が良いです。
避けた方がよい案件
・特定の大手ががっちり取り組んでいる分野
・特定の大手企業の本業にあたる事業
・その大手企業が会社全体で協力に取り組んでいる事業
・規模や人員が必要とされる
・多数の人員体制が必要
・24時間365日の対応が必要
・全国規模の実績や大規模プロジェクト経験が求められる
・特定の大手企業が何年も事業を継続して請けている
狙いたい案件
上記のような案件を避けつつ、下記のような案件を狙っていけると良いかと思います。
1. ニッチな専門性が求められる案件
たとえば自社が「ここだけは負けない」という深い知見や経験を持っている分野は臆さず十分に狙って良いと思います。
総合評価やプロポーザルでは結局、最終的にはその企業の提案内容・ノウハウ・実績が評価されます。自治体側も決して盲目的にネームバリューだけで決めているわけではありません。
あなたの会社が持つ専門性は必ず評価されます。
「狭く深く、この分野だけは負けない」という領域を作っていきましょう。
2. 地域理解が重視される案件
あなたの会社がその自治体に所在していたり、何らか関係性が深い場合、これは評価されやすい傾向にあります。
特に首都圏以外の地方でこの傾向が強いです。これは、自治体側も東京に本社のある大企業よりも、その地域に縁の深い中小企業を応援したいと考えやすい、ということもあります。
加えて、提案を作っていく上でもその土地の情報を十分集めて良いプロポーザルを作りやすいという面もあるでしょう。
その地域のことを誰よりもよく知って、その地域に合わせた提案を作り上げ、東京の企業よりも地に足をついた業務の実施が可能だとPRできれば、どちらが選ばれるかは一目瞭然です。
3. 新しい分野の案件
先述の通り、大手企業は一般的に対応スピードがそこまで早くない傾向があります。一方で、自治体では日々新しいニーズが生まれてきます。
むしろプロポーザルや総合評価の案件は、自治体側も解決策(=仕様)が明確でないからこそ採用される方式だといえます。
こうした新しく生まれてきた分野の案件に対して、機動力とコスト競争力を活かして大手に先行して実績を獲得し、その実績をPRすることで遅れてきた大手にも対抗していく、というのは十分に可能です。
このように、避けるべき案件を避け、専門性・ローカル性・機動力という強みを活かしていくことで、中小企業でも十分に勝っていくことは可能です。
新規参入の際は「大手の存在」より「勝てる土俵か」をリサーチで見極める
大手の優位な点、中小企業が勝てるポイントをお伝えしてきました。以上をまとめると「勝てる場所を見極める」ということになります。
パッと見て大手がいるからと初見で諦めず、自社が勝てる分野かどうかを冷静に見極めることが必要です。
たとえば見るべきポイントは、
・入札方式は価格競争か、総合評価・プロポーザルか?
・中小企業が避けるべき案件内容ではないか?
・評価基準に専門性・地域理解が含まれているか?
こうした点を見れば、小さな会社にも勝てる余地があるかが見えてきます。そしてそれを全国的に、数年間分にわたって幅広く見ていくと良いでしょう。
こうしたリサーチを行っていけば、あなたの会社でも勝てる「勝ち筋」がきっと見えてきます。
これらも含め、具体的なリサーチ方法は下記の記事にまとめています。ご興味あればぜひご覧ください。
また、「自分で調べる時間がない」「どこを見れば勝てる余地があるのかわからない」「自社の商材で入札に可能性があるのか知りたい」という方には、ココナラで入札案件のリサーチも行っています。
プロの目線で状況を分析してお伝えします。ぜひご検討ください!
まとめ:「大手じゃないと無理」ではなく、戦う場所を選ぶ
今回は「結局、大手が強いんでしょ?」とよくいただく質問にお答えいたしました。
現実として大手が優位であるというポイントはありつつも、中小企業も専門性・ローカル性・機動力という強みを活かしていくことで、十分に勝っていくことは可能です。
事実として、入札案件の半分近くは中小企業が受託しています。
自社が勝てる余地が必ずあるはずだ、という目でぜひ一度市場を見てみてください。