「入札って、どうせ出来レースなんでしょ?」
「最初から受注する会社が決まっているんじゃないの?」
入札について話していると、こう聞かれることがあります。
特に、これから入札に参入しようとしている小さな会社にとっては、
どうせ既存業者が強いなら、うちが参加しても意味がないのでは?
と感じやすいところだと思います。
ただ、結論から言うと、入札は基本的に「出来レース」ではありません。
完全な出来レース、つまり特定の事業者に落札させるように行政側と事業者が裏で調整するような行為は、談合として禁止されています。
一方で、現実には、有利な事業者が存在するケースはあります。
今回の記事では、入札に対するよくある疑問の一つとして、
「入札は出来レースなのか?」
という点について整理してみます。
「出来レース」はむしろ禁止されている
まず押さえておきたいのは、行政入札は、公正な手続きで発注先を決定するように設計されているということです。
行政は税金を使って事業を発注する立場です。そのため、民間企業同士の取引以上に、手続きの透明性や公平性が求められます。
例えば行政入札では、基本的に案件情報が広く公開されます。入札の中身についても応募資格、業務内容、落札者の決定方法といった内容が、文章でしっかりと明文化されされます。
落札者の決定基準も明確です。
・価格競争入札:一番安い入札価格を入れた落札者に決まります。
・総合評価方式・プロポーザル:公表されている審査項目や評価基準に基づき、最も高得点を獲得した事業者に決まります。
また特定の会社に落札させるために、行政側と事業者側が裏で調整や誘導をするような行為は法律や規則で許されません。
いわゆる官製談合のような形になれば、法的にも大きな問題になります。
例外として「随意契約」という方式で、一社指名で契約先が決まるものもあります。
ただしこれに関しても発注金額の制限があったり、きちんとした理由が必要とされており、かなり制限がかかった状態でないと利用できません。
このようなことから、
行政では、民間取引以上に「出来レース」が生まれないように制度設計がされている。
と言えるでしょう。
ただ特定の事業者が有利になることはある
ここまでは原則としてのお話で、ここからは、少し現実的な話です。
入札は基本的に出来レースはありませんし、禁じられています。
ただし、特定の事業者が有利になるケースはあります。
全員が完全に同じスタートラインなのかというと、そこは少し違うのです。
むしろ、「ルールに則ったうえで、自社に有利な入札状況を作り出すことが自治体営業である」ともいえます。
わかりやすく特定の企業が有利になる例として「既存の案件受託企業」があります。
そうした会社は、仕様書に書かれている情報だけでなく、実際の運用で得た情報を持っています。
たとえば下記のような情報です。
担当課が本当に困って解決したいと思っていること。重視している成果物
成果を出すために有効な取り組み方法
実際の業務量や対応に必要な工数
こうした情報は、仕様書だけを読んでもなかなか分かりません。
しかし、提案書や入札価格を作り込むうえでは大きな差になります。
こういった「情報の非対称性」があることから、既存事業者はより具体的で的確な提案を出しやすくなります。
これが外から見ると、
やっぱり既存業者が取るようにできているのでは?
と見えることがあります。
ただし、これは必ずしも裏で決まっているという話ではなく、経験と情報量の差です。
既存事業者は、すでにその業務を知っている。だから提案の精度が高くなり、結果として有利になる。そういう構造です。
新規事業者が不利になりやすいのは事実ですが、それは「出来レースだから」ではなく、「情報量に差があるから」と見る方が近いと思います。
公示前から関わっている事業者が有利になるケースも
もう一つ、特定の事業者が有利になるケースがあります。
それは、案件が公示される前の段階で、すでに行政と接点を持っている場合です。
軽めの取り組みとしては、自治体にアプローチをして情報収集をしている、という場合です。
たとえば、ある事業者が自治体に対して、他自治体の事例を紹介したり、自社の技術や取り組みを紹介するといった「接点づくりのための活動」を行い、情報を引き出している状況です。
接点を作り、情報交換という打ち合わせを行う中で、自治体が本当に解決したい課題や次年度に求める取り組みについて聞き出していきます。このような活動を行っていると、先述の既存受託企業のように入札書類には現れにくい情報が増え、有効な提案につながっていきます。
またもう少しがっちりとした取り組みとしては、入札の案件化のプロセスそのものに関わる場合があります。
入札案件というのは、公示に向けて担当部署の職員が仕様を固め、庁内で予算どりをして、公募をしていくという案件化のプロセスがあります。
この際、異動も多い職員は必ずしもその業務の専門家ではありません。素人が見よう見まねで仕様を作ればトンチンカンなの内容になってしまう危険性もあります。そうした際に、特定の事業者に意見や情報をもらいながら、仕様作りに協力してもらう場合があります。
例えばそうした仕様策定プロセスに関与した際、その事業者が有利な応募資格や仕様内容を盛り込んでいくというパターンがあります。
例えば仕様に「(競合にはない) Aという特徴をもっている製品であること」と要件として定めることができれば、Aの特徴を持っていない企業の入札をブロックできるので、表面上はオープン・公正な入札になっていても、実際は特定の企業が優位になっているという状況がありえます。
このような形で、事前の取り組みで
・他社よりも情報を持っている
・自社に優位な入札内容になっている
という形で、自社に優位な状況を作り出すことができるのです。
ただしそれでもそれらによって「落札が約束されている」ということではありません。
公示された後は、応札者が公募され審査されます。そこには当然、他社も参加できます。
より良い提案を出した他社が選ばれる可能性も十分にあります。
つまり、案件化前から関わることは、確かに有利な状況を作ることにはなりますが、「出来レース」という形になるわけではなく、それらもあくまでルールの中で、課題理解や提案精度を高め、勝つ確率を上げているだけということです。
(小さな会社が具体的にどういう活動を行えば自社に有利な状況を作っていけるのか?今後の記事でもノウハウを紹介してきます!)
これから参入する人は、まず「勝てる余地」を見る
とはいえ、これから入札参入を検討する段階で、いきなり自治体営業を始める必要はありません。
また、すべての分野で上記のような自治体営業的な取り組みが行われているわけではありません。
というか、そうした自治体営業が行われているのはシステム開発の世界など、むしろ少数です。
このため、参入検討中の企業がまずやるべきことは、自社が勝負できる余地がある市場なのかを調べることです。
一見すると「出来レースっぽい」と感じる案件でも、過去の落札結果や仕様書を見ていくと、実際には新規事業者にも勝負できる余地が十分見つかります。
一方で、何年も同じ事業者が落札していて、仕様もほとんど変わらず、参加要件も狭い案件であれば、最初から無理に追いかけない方がよい場合もあります。
これらも含め、具体的なリサーチ方法は下記の記事にまとめています。ご興味あればぜひご覧ください。
また、
「自分で調べる時間がない」
「どこを見れば勝てる余地があるのかわからない」
「自社の商材で入札に可能性があるのか知りたい」
という方には、ココナラで入札案件のリサーチも行っています。
プロの目線で状況を分析してお伝えします。ぜひご検討ください!
まとめ:「出来レース」と決めつける前に、着実に段階を踏んでいこう
さて、今回見てきたように入札は基本的に「出来レース」ではありません。一方で、現実には、有利な事業者が存在するケースはあります
このため重要なのは
・入札は基本的にはオープンな競争の場であるという認識を持ち
・自社が勝てる案件を冷静に見極め
・経験を積む中で自社に優位な状況を作る取り組みをしていく
という3つだと考えています。
とはいえ、私自身、入札案件では負けた際には「これ、出来レースなんじゃないのぉ?」と思ってしまうことも多々あります (笑
実際、「これ他社が勝つのは無理だよね」と思う状況の案件もあります。
でもやっぱりあくまで入札は公正なものです。
また年間16万件以上もの案件がでています。そこにはきっとあなたの会社の力を必要としている案件があるはずです。
疑心暗鬼になってしまう前に、まずはそこを信じてコツコツとできる取り組みを行っていきたいものです。