前回の記事などを読んで、行政入札案件に興味を持った方が、ついやってしまいがちなことがあります。
それは、
「行政案件は面白そうだ!」
「じゃあ、入札に参入しよう!」
「まずは入札資格を取ろう!」
と、すぐに手続きを始めてしまうことです。
でも、少しだけ待ってください。
入札資格を取る前に、まず確認しておきたいことがあります。
・そもそも、あなたの商材に合う案件はあるのか?
・その案件に、自社は応募できるのか?
・応募できたとして、勝てる見込みはあるのか?
・落札できたとして、利益は残るのか?
実は、この確認をしないまま参入準備を進めてしまう会社は少なくありません。
その結果、数ヶ月の時間をかけて手続きをしたり、資格取得や情報収集にコストをかけたりしたものの、いざ調べてみると「自社には合わない市場だった」とわかるケースもあります。
一般的なビジネスでも、新しい市場に入る前には市場リサーチをしますよね。官公庁・自治体の案件でも、それは同じです。
むしろ行政案件の場合、案件情報や過去の落札結果が公開されていることが多いため、民間営業よりも事前に調べやすい面があります。
だからこそ、いきなり手続きを始める前に、一度立ち止まって「本当に参入すべき市場なのか」を見てみることが大切です。
この記事では、小規模事業者・中小企業が入札参入を検討するときに、最初に確認しておきたい4つの注意点を整理します。
1. なぜ「参入判断」が必要なのか
入札参入では、いきなり「入札資格を取ること」を始めてしまうことがあります。
しかし、本当に大事なのは資格取得ではありません。
大事なのは、
自社が勝負できる案件が、実際に存在するのか
を先に見極めることです。
ある造園会社のケース
たとえば、ある造園関係の事業を行っている会社がありました。
その社長さんは、同業他社が入札で売上をつくっているという話を聞き、入札参入を決意しました。
そこで、行政書士に15万円近くの費用を払い、年間80万円以上する入札情報サービスも契約。6ヶ月近くかけて、入札に参加する準備を整えました。
ところが、実際に対象地域の案件を調べてみると、次のような状況でした。
・案件数自体は多い
・しかし、そのほとんどが「指名競争入札」だった。つまり、決まった事業者だけが参加できる案件がほとんどだった
・わずかに参加できる案件も、落札価格を見ると自社では採算が合いにくかった
結果として、その会社は100万円近くのコストと、6ヶ月近くの時間をかけたあとで、「この地域の入札市場は、自社には難しい」と判断することになりました。
入札を今期の売上拡大の目玉にしようとしていたため、事業計画の見直しも必要になりました。
もちろん、これは極端な失敗談として不安を煽りたいわけではありません。
ただ、こうした遠回りは、事前に案件を調べていればかなり防げます。
今ある入札ノウハウの中には、行政マーケットの魅力を伝えたあと、すぐに「入札資格の取得方法」へ進むものも多い印象があります。
私自身も入札のコンサルティングを行っているので、入札に参入する企業が増えるのは嬉しいことです。
ただ、それ以上に、読んでくださっている方には「本当に可能性がある」と確認したうえで参入してほしいと考えています。
その方が、あなたの会社にとっても、行政にとっても良いはずです。
2. 入札市場を見るときの4つの注意点
入札参入を考えるときは、まず次の4つを確認します。
① 案件はあるか
→ 自社の商材に合う案件が一定数あるか
② 応募できるか
→ 参加資格・地域要件・実績要件などを満たせるか
③ 勝てそうか
→ 既存事業者や大手企業が強すぎないか
④ 利益は残るか
→ 落札価格と仕様内容が採算に合うか
この4つのどこかで大きく引っかかる場合、いきなり本格参入するのは慎重に考えた方がよいです。
ここから、それぞれの注意点を見ていきます。
2.1 注意点①:そもそも案件が存在しない
まず確認したいのは、そもそも自社の商材に合う案件があるかどうかです。
自社のサービスに関連するキーワードで調べても、過去数年の案件情報がほとんど出てこない場合があります。
入札市場は「おにぎりからロケットまで」と言われるほど幅広く、年間約16万件、28兆円規模とも言われます。
ただし、どんな商材でも同じように案件があるわけではありません。
商材によって、行政側のニーズが大きいものもあれば、まだあまり発注がないものもあります。
もし現時点でマッチする案件がほとんど見つからない場合、すぐに売上につなげるのは難しいかもしれません。
その場合は、次のどちらかを考える必要があります。
・いったん入札参入の優先度を下げる
・行政側にニーズをつくっていく前提で、中長期的に取り組む
ただし、案件が少ないからといって、必ずしも「完全に無理」というわけではありません。
検索するキーワードやリサーチ方法を変えるだけで、案件が見つかることもあります。
このあたりの具体的な調べ方は、今後の記事で紹介します。
2.2 注意点②:案件はあるが、応募条件を満たせない
次に多いのが、案件は見つかるものの、自社が応募条件を満たせないケースです。
入札案件には、必ず何らかの「参加要件」があります。
一般的には、その自治体や官公庁の入札参加資格が必要になります
ただし、それだけではありません。
案件によっては、次のような条件がついていることがあります。
よくある参加要件の例
① 本店・支店の所在地
その自治体内に事業所があることが条件になるケースです。
② Pマーク・ISMSなど
セキュリティ認証を持っている企業だけが応募できるケースです。
③ 官公庁での過去実績
「過去5年以内に類似業務の実績があること」などが条件になるケースです。
特に小規模事業者が引っかかりやすいのは、Pマーク・ISMSなどの認証要件や、官公庁での過去実績要件です。
「これから官公庁の実績をつくりたいのに、官公庁実績がないと応募できない」という、いわば入札における“鶏卵問題”が起きることもあります。
また、地域要件も見落としやすいポイントです。
たとえば、地元企業への発注を重視する案件では、「市内に本店または支店があること」が条件になっている場合があります。
このように、入札資格を持っていたとしても、案件ごとの参加要件で実質的に応募できないことがあります。
だからこそ、資格取得の前に、実際の案件の参加要件を見ておくことが大切です。
2.3 注意点③:応募はできるが、落札可能性が低い
案件もある。参加条件も満たせそう。
それでも、過去の落札者を見て「これは勝つのがかなり難しそうだ」と感じるケースがあります。たとえば、次のような場合です。
1. 地域で圧倒的に強い事業者がいる
たとえば福祉関連の事業で、「公益財団法人**県障がい者雇用促進協議会」のような団体が落札しているケースを考えてみます。
その団体は、その地域における行政との関係、地域ネットワーク、事業遂行の知見を長年蓄積している可能性があります。
このような事業者を相手に、地域外の会社がいきなり挑んで勝つのは、かなり難しいと考えた方がよいです。
2. 同じ事業者が何年も受託している
長年、同じ事業者が同じような案件を受託し続けている場合も、注意が必要です。
入札では、既存事業者が有利になりやすい面があります。
理由は、過去の業務内容、行政側の課題、現場の細かい事情をすでに把握しているからです。
こうした案件に挑む場合は、いわゆる「リプレイス」、つまり既存受託企業をひっくり返すチャレンジになります。
もちろん不可能ではありません。
ただし、既存事業者よりも明確に優れた提案ができること、事前に十分な情報収集ができていることが必要になります。
1年程度しか受託していない事業者であればリプレイスの余地もありますが、何年も継続して受託している場合は、ハードルはかなり高くなります。
3. 大手企業ががっちり入っている
大手企業、特に入札慣れしている企業が受託している案件も、警戒が必要です。
入札では、過去実績、体制、提案ノウハウが評価されることがあります。
大手企業は、提示できる実績や体制が豊富なため、中小企業より有利になりやすい場面があります。
もちろん、大手企業が相手でも勝てる案件はあります。
ただし、大手が本気で取りに来ている領域で、正面からぶつかるのは難易度が高いです。
4. 応札企業が多すぎる
王者のような企業はいなくても、応札企業が多すぎる案件もあります。
1つの案件に十数社が提案しているようなケースです。
入札は、基本的には1社だけが受注します。
すでに多くのライバルが集まっている案件では、価格や提案内容の競争が激しくなり、勝ち続けるのは簡単ではありません。
目安として、応札企業数が2〜3社、多くても4社以内ぐらいの案件が多い市場であれば、小規模事業者にもチャンスが出やすいと考えられます。
2.4 注意点④:落札できても利益が出ない
最後に確認したいのが、「落札できたとして、利益が残るのか」です。
案件数はある。応募条件も満たせそう。競合もそこまで強くなさそう。
それでも、落札価格と仕様書を見比べてみると、
この内容でこの金額だと、とても採算が合わない
という場合があります。
しかも、それが1案件だけではなく、同じ分野で恒常化していることもあります。
特に注意したいのは、次のような分野です。
・業務内容が比較的標準化されている
・価格入札が中心になっている
・参入事業者が多い
こうした市場では、価格の叩き合いになりやすく、受注できても利益が残りにくいことがあります。
入札は「取れたら終わり」ではありません。
落札後には、仕様書に沿って業務をきちんと遂行する必要があります。
人件費、移動時間、外注費、管理工数、報告書作成などを含めて考えると、見た目の金額より利益が少ないこともあります。
だからこそ、過去の落札価格だけでなく、その案件の仕様書もセットで確認することが大切です。
3. この記事で伝えたいこと
ここまで、入札参入前に確認したい4つの注意点を紹介しました。
改めて整理すると、次の4つです。
① 案件はあるか
→ 自社の商材に合う案件が一定数あるか
② 応募できるか
→ 参加資格・地域要件・実績要件などを満たせるか
③ 勝てそうか
→ 既存事業者や大手企業が強すぎないか
④ 利益は残るか
→ 落札価格と仕様内容が採算に合うか
この記事の目的は、「入札は難しいからやめましょう」と伝えることではありません。
むしろ逆です。
入札は、小規模事業者や中小企業にとっても、大きな可能性のある市場です。
ただし、やみくもに参入するのではなく、先に現実を見ておく必要があります。
案件情報や落札結果が公開されているからこそ、事前にかなりのところまで判断できます。
つまり、入札参入で大切なのは、
資格取得の前に、市場を見ること
です。
4. 実際どうやってリサーチすべき?
では、自社の商材がこうした注意点に当てはまるかどうか、どうやって調べればよいのでしょうか。
この具体的なリサーチ方法を、次の記事で詳しく紹介します。
まずは費用をかけずにできる範囲で、どのように案件を探し、どこを見ればよいのかを整理していきます。
リサーチの依頼もお受けしています
「自分で調べる時間が取れない」
「たくさんの案件情報を読んで比較するのが大変」
「自社が参入すべきか、第三者の視点で見てほしい」
という方には、私の方でココナラにて「入札案件のリサーチ」も行っています。
案件情報の整理だけでなく、入札コンサルタントの視点から、参入すべきかどうかの率直な所感もお伝えしています。
まずは自分で調べてみるのがおすすめですが、時間を節約したい方や、判断に迷う方はご検討ください。
5. 最後に。重要なのは「現実を知ったうえで、打開策を探すこと」
ここまで読んで、
やっぱり入札って難しそうだな
と思った方もいるかもしれません。
でも、そこで諦める必要はありません。
一見難しそうに見える商材でも、少し見方を変えるだけで、十分戦える方法が見つかることがあります。
たとえば、真正面から大手とぶつかるのではなく、
・地域性を活かす
・ニッチな専門性を打ち出す
といった工夫で、小規模事業者だからこそ入れる市場が見えてくることもあります。
大切なのは、楽観的に突っ込むことでも、早々に諦めることでもありません。
現実を知ったうえで、打開策を粘り強く探ることです。
次回は、今回紹介した4つの注意点を実際にどう調べるのか、具体的なリサーチ手順を紹介します。
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