忘れられない人を、少しずつ手放すまで(第2話)
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コラム
楽しかった思い出ばかり、何度も浮かんでくる
別れた理由は、ちゃんとあったはずだった。
傷ついた言葉もあった。
寂しかった日もあった。
すれ違った時間もあった。
もう無理かもしれないと、
何度も思った夜もあった。
それなのに、
別れたあとに思い出すのは、
なぜか楽しかった日のことばかりだった。
初めてゆっくり話した日。
何でもないことで笑い合った日。
帰り道、少しだけ遠回りした日。
寒い日に、
「大丈夫?」と気にしてくれた声。
何気なく言ってくれた、
「そういうところ好きだよ」
という言葉。
終わったはずなのに、
そういう記憶だけが、
心の中で何度も再生される。
苦しかったこともあったのに。
傷ついたこともあったのに。
なぜか思い出の中のあの人は、
いつも優しい顔をしている。
だから、忘れられない。
もう戻れないと分かっているのに、
楽しかった日の記憶が、
心を引き止めてしまう。
あの頃はよかったな。
あの日に戻れたらいいのに。
もう一度だけ、
あの時みたいに笑えたらいいのに。
そう思ってしまう。
でも、思い出はいつも少しだけ優しい。
つらかった場面より、
幸せだった場面を強く残してしまう。
待ってばかりで苦しかった日より、
会えた日の嬉しさを思い出す。
泣いた夜より、
笑い合った時間を思い出す。
冷たくされた瞬間より、
優しく抱きしめてくれた記憶を思い出す。
だから心が迷う。
本当に終わってよかったのかな。
私がもっと我慢できたら、
続いていたのかな。
あの人にも、いいところはたくさんあったのに。
そうやって、
もう一度過去を選び直したくなる。
でも、楽しかった思い出があることと、
今の自分が苦しかったことは、
どちらも本当。
優しかったあの人もいた。
でも、寂しくさせたあの人もいた。
幸せだった時間もあった。
でも、泣いた時間もあった。
どちらかだけが本当なのではなく、
どちらも本当だったのだと思う。
恋が終わったあと、
人はどうしても、
一番きれいだった場面を思い出してしまう。
もう会えないからこそ、
もう戻れないからこそ、
その時間が余計に大切に見えてしまう。
あの笑顔。
あの声。
あの言葉。
あのぬくもり。
忘れようとするほど、
心の奥から浮かんでくる。
それは、あなたが弱いからではありません。
ちゃんと好きだったからです。
その人との時間を、
本当に大切にしていたからです。
簡単に消せないくらい、
心に残る恋だったからです。
ただ、ひとつだけ忘れないでほしいことがあります。
楽しかった思い出があるからといって、
苦しかった自分の気持ちまで、
なかったことにしなくていい。
幸せだった日があるからといって、
傷ついた夜まで、
我慢しなければいけなかったわけではない。
優しかった記憶があるからといって、
今のあなたの苦しさが、
間違いになるわけではありません。
「あの人にもいいところがあった」
そう思っていい。
「楽しかった時間も本当にあった」
そう思っていい。
でも同時に、
「私は苦しかった」
と思ってもいい。
「寂しかった」
と思ってもいい。
「もう戻れない現実がつらい」
と思ってもいい。
思い出を大切にすることと、
自分の痛みを大切にすることは、
どちらもあっていいのです。
無理に嫌いにならなくても大丈夫です。
無理に悪い人だったと決めつけなくても大丈夫です。
好きだった人を、
急に嫌いになる必要はありません。
ただ、思い出の中の優しいあの人だけを見て、
今の自分を置き去りにしないでください。
あなたが泣いたこと。
我慢したこと。
苦しかったこと。
その全部も、
ちゃんとあなたの恋の一部です。
楽しかった思い出が浮かんでくる日は、
心がまだその恋を大切に抱えている日なのかもしれません。
だから、思い出してしまう自分を責めなくて大丈夫です。
また思い出してしまった。
また涙が出てしまった。
また戻りたいと思ってしまった。
そんな日があってもいい。
でもその時、
少しだけ自分に言ってあげてください。
楽しかったよね。
本当に好きだったよね。
でも、苦しかった日もあったよね。
そうやって、
思い出をきれいなままにしすぎず、
自分の心の全部を見てあげる。
それが、少しずつ手放していくための
小さな一歩になるのだと思います。
忘れられない恋は、
楽しかった記憶があるから苦しい。
でも、その記憶があることは、
あなたがちゃんと誰かを大切にできた証でもあります。
好きだったことを、
否定しなくていい。
楽しかった日を、
消さなくていい。
ただ、その思い出だけに戻ろうとして、
今のあなたを傷つけ続けなくてもいい。
思い出は、
あなたを苦しめるためだけにあるのではなく、
いつか少しずつ、
「あんなに大切に思えた恋があったんだ」と
静かに受け止められる日が来るために、
心の中に残っているのかもしれません。
今はまだ、
そんなふうに思えなくても大丈夫です。
今日もまた思い出してしまった。
それでもいい。
泣いてしまった。
それでもいい。
楽しかった日が浮かんで、
胸が苦しくなった。
それでもいい。
少しずつで大丈夫です。
心葉(ここは)では、
忘れられない恋の気持ちを否定せずにお聞きしています。