忘れられない人を、少しずつ手放すまで(第6話)

記事
コラム
忘れたいのに、忘れたくない自分もいる
早く忘れたい。
何度もそう思った。

もう思い出したくない。
もう泣きたくない。

もうスマホを見るたびに、
胸が苦しくなるのは嫌だ。

あの人の名前を見ても、
心が揺れない自分になりたい。

ふとした瞬間に思い出して、
何も手につかなくなる時間から抜け出したい。

そう思っているのに、
心のどこかには、
忘れたくない自分もいる。

忘れてしまったら、
本当に終わってしまう気がする。

あの人と過ごした時間まで、
消えてしまう気がする。

好きだった自分まで、
なかったことになる気がする。

だから、忘れたいのに、忘れたくない。
その矛盾が苦しかった。

別れた後、
何度も思った。

この記憶さえなければ、
もっと楽なのに。

あの声を忘れられたら。
あの笑顔を忘れられたら。
一緒に歩いた道も、
交わした言葉も、
優しくされた瞬間も、
全部遠くに行ってくれたら。

きっと、こんなに苦しくない。

でも実際に、
思い出が薄れていくことを想像すると、
それはそれで寂しかった。

あの人を忘れることは、
あの恋を全部捨てることのように感じた。

楽しかった日まで、
嘘にしてしまうようで怖かった。

一生懸命好きだった自分を、
置いていくようで怖かった。

だから私は、
忘れたいと言いながら、
思い出を何度も抱きしめていたのかもしれない。

あの時のLINE。
一緒に撮った写真。
もらった言葉。
行った場所。
聴いていた曲。
消そうと思えば消せるものもある。

でも、消せなかった。

写真を消そうとして、
指が止まる。
トーク履歴を消そうとして、
胸が苦しくなる。
もう見返さないほうがいいと分かっているのに、
残しておきたい自分がいる。

消したら楽になるかもしれない。
でも、消したら二度と戻れない。
そんな気がして、
結局またそのままにしてしまう。

忘れたい。
でも、忘れたくない。
この気持ちは、
とても矛盾しているように見える。
でも本当は、
どちらも自然な気持ちなのかもしれない。

苦しさから自由になりたい自分。
大切だった記憶を失いたくない自分。
前に進みたい自分。
まだあの恋を抱えていたい自分。
どちらかが間違っているわけではない。

どちらも、
今のあなたの本当の心です。

忘れたいと思うのは、
それだけ苦しかったから。

忘れたくないと思うのは、
それだけ大切だったから。

忘れたいほど傷ついた。
でも、忘れたくないほど好きだった。

その両方があるから、
心は簡単には前に進めないのです。

私はずっと、
早く忘れられない自分を責めていた。
いつまで引きずっているんだろう。
もう終わったことなのに。
相手はもう前に進んでいるかもしれないのに。
私だけが、
まだ同じ場所にいるみたい。

そう思うたびに、
自分が情けなくなった。

でも、忘れることは、
急いでできるものではない。

大切だった人を、
今日から急に何も感じない存在にはできない。

好きだった時間を、
ボタンひとつで消すことはできない。

心は、頭よりずっとゆっくりです。
もう終わったと分かっていても、
心が納得するまでには時間がかかります。

だから、
まだ忘れられない自分を
責めなくていいのです。

忘れられないのは、
あなたが弱いからではありません。

ちゃんと好きだったから。
ちゃんと傷ついたから。
ちゃんと大切にしていたから。

だから今も、
心がその恋を手放す準備をしている途中なのです。

忘れることだけが、
前に進むことではありません。

思い出した時に、
前より少しだけ自分を責めなくなること。

泣いたあとに、
少しだけ温かいものを飲めること。

写真を消せなくても、
今日は見返さずに眠れたこと。

あの人のことを思い出しても、
一日中それだけで終わらなかったこと。

そんな小さな変化も、
ちゃんと前に進んでいる証です。

忘れようとしすぎると、
逆に忘れられなくなることがあります。

思い出しちゃダメ。
考えちゃダメ。
泣いちゃダメ。

そうやって抑えようとすると、
心は余計に苦しくなってしまう。

だから、思い出してしまった日は、
無理に追い出さなくてもいい。

また思い出したんだね。
まだ大切だったんだね。
まだ寂しいんだね。

そうやって、
少しだけ自分に優しくしてあげてください。

忘れられない恋は、
消すものではなく、
少しずつ置き場所を変えていくものなのかもしれません。

今はまだ、
心の真ん中にあるかもしれない。

何をしていても、
あの人のことが浮かぶかもしれない。

でも少しずつ、
その記憶が心の真ん中から、
少し横のほうへ移っていく日が来る。

思い出しても、
前ほど苦しくならない日が来る。

あの人の名前を聞いても、
涙ではなく、静かな気持ちで受け止められる日が来る。

その日まで、
無理に忘れなくても大丈夫です。

忘れたい気持ちも、
忘れたくない気持ちも、
どちらも抱えたままで大丈夫です。

あなたの心は今、
ちゃんと整理しようとしています。

苦しかった記憶と、
幸せだった記憶。
傷ついた自分と、
好きだった自分。
終わった現実と、
まだ残っている想い。
その全部を、
少しずつ受け止めようとしているのです。

だから、急がなくていい。
忘れられない日があっていい。
忘れたくない夜があっていい。
写真を消せない自分がいてもいい。
思い出して泣いてしまう自分がいてもいい。

そのたびに、
自分を責めるのではなく、
こう言ってあげてください。
それだけ大切だったんだね。
まだ苦しいんだね。
でも、少しずつでいいよ。

手放すことは、
忘れることではありません。
好きだった気持ちを否定することでもありません。
あの恋を、
あなたの人生から消すことでもありません。

ただ、
その恋だけで自分の毎日が止まってしまわないように、
少しずつ心の場所を整えていくこと。
あの人の記憶を抱えながらも、
自分の今日を大切にしていくこと。

それが、
少しずつ手放していくということなのだと思います。

心葉(ここは)では、
忘れられない恋の気持ちを否定せずにお聞きしています。


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