母の赤飯 1

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「どうだろうね?美味しいかな?」
不安げな表情を浮かべた母が箸でつまんだ赤飯を持って
私の近くへやってきた。
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赤飯は母の得意料理のひとつ。
親類やご近所さんにも評判で妹の嫁ぎ先のご両親はいつ
も母の赤飯を楽しみに待っていてくれるほど。

もちろん私も小さなころから母の作る赤飯が大好き。
そんな母が昨年赤飯作りで大失敗をしてしまう。

「もう1回作ってみれば?たまたま上手くいかなかった
だけだよ」と励ます私の言葉を信じて再度挑戦。。。
が結果は同じだった。

何度か作ってみたけれど以前の赤飯は帰ってこなかった。
「なんか。。。ダメ。作れなくなちゃったよ」
肩を落としてそう言った母。
かなり落胆している様子だった。
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昨年(2022年)
母は突如体調を崩しその影響でメンタルバランスも崩し
てしまった。

病院を何か所か変えたくさんの検査を受けたけど結果は
良好。特に問題はないとのことだった。

数カ月後に体調は徐々に回復していったがメンタルが追
いついてこなかった。
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「お母さんの赤飯。また食べたいよ」
妹からの電話に
「うん。じゃあ作ってみるよ」と母が答えた。
でもちょっと躊躇している様子。
また失敗してしまうのではないか?
そんな不安が母にはあったと思う。

体調を崩し台所に立たなくなってしまった母の調子が回復
しつつある中で何か出来ることをして自信を回復させたい。
妹にはそんな想いもあったに違いない。
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期待に応えるべく台所でせっせと赤飯を作る。
何回も作ってきた得意料理。
慣れた手つきだった。
私も台所で赤飯作りに励む母の姿を見て安心した。
しかし。。。
「ダメだった。。。失敗しちゃったよ」母が小さな声でそ
う言いながらうなだれていた。
「そんなことないでしょう。どれ食べてみるよ」と台所へ
足を運んで蒸し器の中を覗いてみるとそこには普段母が作
っていた赤飯とは全くの別物のような赤飯があった。
「ダメだった。。。捨てよう」と母。
「いいよ。食べようよ。大丈夫だってば」と私と私は母を
うながした。
その日二人は無言で赤飯を食べた。
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あれから1年近く経過したある日。
「赤飯、食べたい?もう1度だけ作ってみようかな」
母が言う。
「うん。作ってよ。久々に食べたいよ。お母さんの赤飯」
「じゃあ、作ってみるよ。ダメだったらごめんね」
「謝らなくていいんだって。この前作った赤飯だって食べ
られない味じゃなかったじゃん」と私は母の背中を押した。
つづく
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