出版素人電子書籍プロデューサーの実際/専門家の立場から

出版素人電子書籍プロデューサーの実際/専門家の立場から

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ビジネス・マーケティング

なぜ、その一言で私は凍りついたのか

「せっかく電子書籍を出したんだから、紙の本にして書店に並べたい」
きっと、そう思うのは自然な感情です。
本を出すなら、やっぱり“書店に並ぶ”ところまでいきたい。
家族や知人に「近所の本屋に置いてあるよ」と言いたい。
その気持ちを、私は否定しません。
けれど――
その一言を、ある電子書籍プロデューサーから相談されたとき、私は一瞬、言葉を失いました。

「Kindleをペーパーバックにして書店流通したい」

先日、ある電子書籍プロデューサーから相談を受けました。
「Kindleで出した本をペーパーバックにして、書店流通させたいんです」
結論から言います。
できるわけがありません。
Kindleダイレクトパブリッシングで出した本は、基本的に“自己出版”です。
出版社を通さず、流通ルートも持たない。
誤解してほしくないのは自己出版と自費出版は別物です。
KindleはKindleの中で勝負する。
その場合は、出版社のバックボーンは逆に不要と私は考えています。
本を書店流通させるのに、まず第一関門はISBN(アイエスビーエヌ)コードの取得。
かつては数百万円とも言われたこのコードも、今は数万円で取得できます。
しかし――
ISBNを取れば書店に並ぶ、という発想が、そもそも致命的に甘い。
書店は「置いてあげる場所」ではない
書店の棚は無限ではありません。
限られたスペースの中で、「売れる本」を厳選して並べています。
そこに、
・実績のない
・出版社の後ろ盾もない
・販売戦略もない
ペーパーバックを置いてくれるでしょうか?
百歩譲って、個別店舗の店長と強い関係があれば、数冊置いてくれる可能性はあります。
しかし、全国流通?
トーハン、日版という取次を通さないと絶対に書店に流通しません。
どこの何の本だかわからないペーパーバックの相談に乗るほど彼らは暇ではありません。
塩対応で門前払い。
現実的にはまず不可能です。
仮にワゴン展開をするなら、
2週間で数十万円単位の費用がかかります。
「Kindleを紙にすれば書店に並ぶ」
この“素人発想”が、どれだけ危ういか。
出版業界に30年以上身を置いてきた私からすると、あまりにも無防備なのです。

99%が“出版素人プロデューサー”という現実

私はこれまで300冊以上を編集し、
ヒット本も多数世に送り出してきました。
その立場から言います。
今、市場にいる電子書籍プロデューサーの99%は、出版の素人です。
いい悪いの話ではありません。
しかし、
・原稿のクオリティ
・タイトル設計
・表紙デザイン
・流通理解
・突発トラブル対応
このどれかが欠けた瞬間、成果物は“商品”ではなくなります。
正直に言えば、
商業出版レベルに達していない原稿がほとんどです。
生成AIの進化は確かに目覚ましい。
使い方次第でレベルは上がります。
しかし――
編集力、業界知識、ヒット構造の理解。
これは、経験の蓄積でしか身につきません。

電子書籍プロデューサーの選び方

電子書籍を出すこと自体は、今や誰でもできます。
問題は、その後です。
・売れる設計になっているか
・市場に耐えうる品質か
・紙展開の可能性を正しく判断できるか
ここを見誤ると、
時間もお金も、信用も失います。
私は普段、ここまで強くは言いません。
しかし、出版業界全体のレベルが下がることには、黙っていられないのです。
あなたは、誰に任せますか?
本を出す。
それは単なる制作作業ではありません。
あなたの専門性を世に問う行為です。
その重みを理解している人に任せるのか。
それとも、「なんとなくできそう」な人に任せるのか。
あなたは、本当にそのプロデューサーで大丈夫ですか?
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