書籍編集者のリアルな一日──主婦の友社時代を振り返って

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コラム

出社時間に「厳密さ」がない理由

出版社の編集者には、厳密な出社時間というものがありません。
それは「朝がゆるい」という意味ではなく、「夜が終わらない」からです。
私が女性ファッション誌の編集部にいたころ、最終締め切りが終わったのは午前4時。そのまま仮眠も取らずに、朝6時には次号のファッションページ撮影の待ち合わせ。編集部に寝袋を置き、泊まり込むのは当たり前でした。
そんな生活を数年続けたあと、書籍編集部に異動しました。雑誌と違い、書籍は「月刊」ではなく「作品単位」で進む分、呼吸のリズムはゆるやかです。それでも、締め切り前は夜10時を過ぎてもデスクに灯りがついていました。

机の上の「大きな封筒」から始まる朝

出社すると、机の上には印刷所から届いた大きな茶封筒。中には「色校(いろこう)」──カバーや帯のデザインを実際に印刷したサンプルが入っています。
著者名の文字が1ミリでもズレていないか。帯コピーの誤字がないか。印刷の色味がモニター上とズレていないか。
編集者は自分の目で、そして著者・校正者の目で何度も確認します。
午前中はこれらの確認と各所への送付であっという間に過ぎていきます。
午後の勝負は「企画会議」
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出版社によって形式は違いますが、企画会議の緊張感はどこも同じです。
会議には編集部長、販売部長、営業担当、時には経営幹部も同席します。
提案者である私は、企画書にびっしりと数字を埋めます。
「同テーマの既刊は何部売れて、何割が返品されたか」
「プロモーション予算はいくらか」
「著者のSNSフォロワー数は?」
編集者は“感性”だけで企画を通せる時代ではありません。
理論武装をして挑まなければ、即却下。
私も最初のころは何度も差し戻されましたが、やがて「売れる本を理屈で説明できる」ようになっていきました。

メールの海と「直感」

午後になると、メールボックスには企画の持ち込み依頼が山のように届きます。
「この人の企画なら読んでみよう」「これは無理だな」
そんな編集者の勘は、数百件のやり取りの中で自然と磨かれていきます。
また、11月ごろになると翌春以降の出版ラインナップを構築する時期。
私は毎年、100本以上の企画案を立て、その中から5〜10本を絞り込んでいました。
「今ある著者とどう組むか」「新しい著者をどう口説くか」──編集者の頭の中は常に「次の本」でいっぱいです。

夜の情報交換こそが“血肉”になる

夜になると、他社の編集者との飲み会。
「どんなテーマが伸びてる?」「最近売れた理由は?」
そんな会話が自然と飛び交います。
出版業界の情報は外に出にくく、編集者同士でしか共有されません。
著者同士がどれだけ集まっても見えない“出版の裏側”──それを知るのが編集者という職業なのです。

数字に追われる毎日、それでもやめられない

表面上は穏やかな一日でも、心の中は常に緊張しています。
自分の担当本がどれくらい売れているか、毎日リアルタイムで数字が見えてしまうからです。
売れれば安堵し、売れなければ胃が痛む。
それでも、「この本を世に出せてよかった」と思える瞬間が、すべてを上回る。
出版の世界は、数字と情熱がせめぎ合う不思議な現場なのです。
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