「AIでKindle出版」ブームの違和感
最近、「生成AIを使って、誰でも簡単にKindle本が出せます」という広告をよく見かけます。
確かに、AIがタイトル案を考え、構成を作り、本文まで生成してくれる時代。
文章を書くハードルは、かつてないほど低くなりました。
けれども、私はどうしても、そこに引っかかるものを感じてしまいます。
なぜなら、「本を作る」という行為は、本来もっと“人の想い”と“信頼関係”の中で育まれていくものだからです。
紙の出版では「担当編集者」が必ずいる
商業出版の世界では、著者に必ず「担当編集者」がつきます。
著者の思いや経験を掘り下げ、読者にどう伝えるかを一緒に考え、何度もやり取りを重ねながら本を作っていきます。
よっぽどの大物作家でもない限り、「自分一人で原稿を書いて完結」ということはまずありません。
それは、著者自身が自分のことを客観的に見るのは難しいからです。
たとえば、
・この章のテーマは、読者に伝わっているか?
・このエピソードは、著者の想いをより深く伝えられるか?
・読者が読み終えたあと、何を感じ、どう動くか?
そうした“読者目線の調整役”こそが、担当編集者の一番の役割です。
では、もし生成AIが担当編集者だったら?
もしも、生成AIがあなたの本の担当編集者になったらどうなるでしょうか。
AIはあなたにこう言うかもしれません。
「この項目にまつわるエピソードを教えてください」
「この出来事の背景を、もう少し詳しく話してください」
まるでインタビューのようなやり取りが続き、原稿はどんどん形になっていく。
とても便利です。
けれども、私はこう思います。
AIが、300冊以上の本を編集してきた中で得た「著者と読者をつなぐ肌感覚」や、
1万回以上の書店訪問で掴んだ「ベストセラーになる本の共通点」を、
丸ごと学び取ることは、今のところ不可能だと。
AIが生み出すのは、あくまで“平均的な文章”です。
つまり、どこかで見たことのあるような、通り一遍の本になってしまうのです。
「テキスト」はいちばん軽く見られている
映像や音楽と比べると、テキストベースの本はどうしても軽く扱われがちです。
しかも最近では、「ネットで稼ぐためのツール」として本を捉える人も増えています。
もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。
しかし、本が本来担うべき役割、「読者との信頼関係を築く」という視点が抜け落ちてしまうのは、やはり寂しいことです。
本は「信用」でできている
本というのは、著者と編集者が“読者の方を向いて”作るものです。
そこに生まれるのは、ただの原稿ではなく、「この著者は信用できる」という絆。
そしてその信用が少しずつ広がっていき、やがて著者のビジネスや活動の発展にもつながります。
つまり、本は単なる情報発信の手段ではなく、「信頼の蓄積装置」なのです。
AI時代だからこそ、人との信頼が光る
生成AIによって便利になった分、リアルな人と人との信頼の積み重ねが、これからますます価値を持ちます。
著者の思いをくみ取り、読者に届く形に磨き上げる。
その過程にこそ、本づくりの本質があると、私は思っています。
私たちの電子書籍プロデュースでも、
「著者と読者をつなぐ信頼関係をどう築くか」を、最も大切にしています。
AIがどんなに進化しても、人間同士の“信用”だけは代替できない。
本をつくるという営みは、これからも人の手によって進化し続けていくと確信しています。