井原西鶴:浮世草子の作者、「元禄の三大文学者」の一人、『好色一代男』『日本永代蔵(にほんえいたいぐら)』『世間胸残用(せけんむねざんよう)』。「浮世」において金銭欲や色欲にまかせて享楽的に他者と関わる生き方を、当時における町人の有り様として肯定的に描き出しました。
松尾芭蕉:「元禄の三大文学者」の一人。俳諧を連歌から独立させて詩歌の一形式として確立した松永貞徳門下(貞門俳諧)の北村季吟に学び、俳諧に静寂・閑寂な「さび」の美を込めて、俳諧を芸術の域にまで高めた蕉風俳諧を創始します。江戸から伊勢を経て関西地方を旅した際の『笈(おい)の小文(こぶみ)』、江戸から東北・北陸を巡って美濃大垣に至る『おくのほそ道』などの俳諧紀行文が有名です。
「古池や蛙(かはづ)飛びこむ水の音」(『蛙合』)
「夏草や兵どもが夢の跡」(『おくのほそ道』岩手県平泉町)
「閑(しずか)さや岩にしみ入る蝉の声」(『おくのほそ道』山形県・立石寺)
「五月雨をあつめて早し最上川」(『おくのほそ道』山形県大石田町)
「荒海(あらうみ)や佐渡によこたふ天河(あまのがわ)」(『おくのほそ道』新潟県出雲崎町)
「初しぐれ猿も小蓑(こみの)をほしげ也(なり)」(『猿蓑』)
「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」(辞世の句)
近松門左衛門:人形浄瑠璃の脚本家、「元禄の三大文学者」の一人、『曽根崎心中』『国性(姓)合戦(こくせんやかっせん)』。儒教的な人倫において重んじられる「義理」と恋人に対する「人情」との間で苦しんだ男女が、最後には身を破滅させる物語を共感的に描きました。
鈴木正三(しょうさん):江戸初期の禅僧。『万人徳用』。武士・農民・職人・商人のいずれも、自らの生業を通じて仏になることができるという「世法即仏法」を説き、商人は商売の営みを天道から与えられた役目として受け止め、「正直」を旨として商いに大いに励むべきであるとしました。石田梅岩よりも早く職業倫理を説きました。
職業仏行説:各々の職業に励む正直の道が仏道修行になるという考え。
石田梅岩(ばいがん):江戸中期、石門心学、『都鄙問答(とひもんどう)』。独学で神道・仏教・儒教を学び、自らの商人としての体験をふまえ、人の道について考察しました。「正直」と「倹約」に基づいた、商いによる利益の追求を天道にかなう正当な行為であるとし、正直と倹約という徳は全ての人が守るべき道であると説きました。ここから梅岩はCSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンディビリティ、企業の社会的責任)の精神の先駆者とされ、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」からなる近江商人の「三方よし」と共に、現代企業に引き継がれているとされます。また、梅岩は謝礼なし、身分や男女を問わず聴講自由とし、「得意先が水害に遭って代金の回収ができなくなった場合はどうすべきか」「得意先を切り替えるか迷った時はどうすればよいか」などといった具体的な題材を取り上げて講義を進めており、『都鄙問答』も門人らとの討論会を元にした問答形式となっています。これば今日の市民講座による大衆教育やMBA(経営学修士)プログラムにおけるケース・スタディー(事例研究)を思わせます。
「御法を守り、我が身を敬(つつし)むべし」:コンプライアンス(法令・企業倫理)の遵守(じゅんしゅ)。
「先(仕入れ先・得意先)も立ち、我も立つ」:共生の理念。
「たとい主人たりとも非を理に曲ぐる事あらば少しも用舎(容赦)いたさず」:コーポレート・ガバナンス(企業統治)。
「一銭軽しというべきにあらず」:コスト意識。
「世界のために三つ要る物を二つにてすむようにするを倹約という」:合理化、創意工夫。
「金銀は天下の御宝なり。銘々は世を互いにし、救い助くる役人なり」:フィランソロピー(民間が公益のために行うボランティア)。
知足安分:自分の身分に満足し、正直と倹約を心がけて生きること。石田梅岩が町人道徳として強調しました。
石門心学:石田梅岩は神道・仏教・儒教などを融合した石門心学を創始し、町人道徳を説きました。心学では商人の儲けは武士の俸禄と同じであるとして商人の営利活動を肯定し、正直と倹約を町人道徳の徳目として挙げました。石門心学は各地に心学講舎を設立した弟子の手島堵庵(てじまとあん)によって、町人だけでなく、農民や武士にも広められました。
富永仲基(とみながなかもと):大坂の町人学問所である懐徳堂に学んだ町人学者、『出定後語(しゅつじょうごご)』。大乗仏典を文献学的に検討し、仏典の全てが釈迦自身の教説であるとは限らず、後代に付加されたものもあるという加上説を唱え、大乗非仏説論を主張しました。
山片蟠桃(やまがたばんとう):『夢の代(しろ)』。懐徳堂に学び、地動説に基づく独自の宇宙論を展開し、市場原理に基づく貨幣経済を考察するなど、合理的精神を発揮しました。合理主義的観点から仏教や迷信、霊魂の存在までも否定する無鬼論を主張しました。
『夢の代』:山片蟠桃の主著。天文、地理、歴史、経済など多くの分野について論じました。