教養としての日本儒教⑨:農民思想

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安藤昌益:江戸中期の医者・思想家、『自然真営道』。日々営まれる農業こそ自然の根源的な生成活動としての天道にかなう営みであり、万人が直接農業に携わる自給自足の生活に復帰すべきであり、農民に寄生している武士や町人は無用であるとしました。かくして、農民に寄生する「不耕貪食(ふこうとんじき)の徒」武士が支配者として上に立つ当時の社会、封建的な身分制度を「法世(ほうせい)」として批判し、理想社会としての「万人直耕」の「自然世」へ復帰すべきであると説きました。江戸期にはほとんど知られず,明治期に狩野亨吉(かのうこうきち)が発見・紹介し,第2次大戦後E.H.ノーマンの『忘れられた思想家――安藤昌益のこと』により世界的に有名になりました。

法世:人が作った制度により、人が人を差別し、搾取する社会(封建制社会)。

万人直耕(ばんにんちょっこう):全ての人が田畑を耕し、自給自足の生活を営む自然世における人間の姿を表したもの。

自然世(しぜんせい):全ての人々が平等に田畑を耕し、衣食住を自給する社会。昌益は、万物は互いに対立しつつ補い合い(互性)、その相互の働き合い(活真)が自然の真の営みであるとしました。

二宮尊徳:江戸末期の農政家。天道は事物の自ずからなる働き、自然の営みですが、そこから人間が恵みを得ようとする作為、人間の営みである人道が加わることによって事物の働きは完全になるとし、農業は天道と人道が相まって成立する営みであるとしました。そして、勤労や分に応じた倹約(分度)によって得た富を社会に還元(推譲)することによって、天地や親、他者などの恩恵に報いる報徳思想を唱えました。

報徳思想:人は天の恵みや祖先の徳のおかげで存在できるのであるから、その恩に徳をもって報いるべきであるとする考え。恩に報いるための実践方法が分度(ぶんど)と推譲(すいじょう)です。この報徳思想を背景に尊徳は各地の農村を復興させ(報徳運動)、幕府にも登用されますが、明治以降に近代資本主義を推進していくに当たり、「勤勉の精神」のモデルとして採用され、戦前の修養の教科書でもしばしば取り上げられました。

分度:自分の経済力に応じた合理的な生活設計を立てること。

推譲:倹約によって生じた余剰の富を社会に還元すること。
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