鄒衍(すうえん):陰陽家。自然現象を、対立しつつ補完し合う陰陽と、全ての物質を構成する五行という概念によって説明し、さらに循環する五行の順序に従って王朝が変わるという陰陽五行説を唱えました。
陰陽五行説:五行思想は木・火・土・金・水の五元素で存在・生成・変化などを説明する理論で、エンペドクレスの火・土・空気・水からなる四元素論より緻密なものです。木生火(もくしょうか)、火生土、土生金、金生水、水生木という相生(そうしょう)理論と、木剋土(もくこくど)、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木の相剋理論とがあります。さらに殷の甲骨文にも干支(十干十二支)が見られますが、五行に陰陽を当てはめれば十干になり、甲(きのえ、陽木)・乙(きのと、陰木)・丙(ひのえ、陽火)・丁(ひのと、陰火)・戊(つちのえ、陽土)・己(つちのと、陰土)・庚(かのえ、陽金)・辛(かのと、陰金)・壬(みずのえ、陽水)・癸(みずのと、陰水)が出てきて、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)と合わせれば六十干支論となり、「丙午(ひのえうま)」という年号表記や60歳を還暦という概念はここから来ます。そして、『易経』に見られる太極→両儀(陰陽)→四象→八卦の理論と合わせて、東洋運命学の根幹(五行断易)を形成しますが、東洋運命学とは、天文暦学、兵法学、風水地理学などを含み、帝王学の一環とされてきたもので、東アジア世界全体に多大な影響を及ぼしてきました。例えば、伝統的な「五術」という分類では次のようになります。
(1)命(めい):生年月日時の四柱の干支(八字とも言います)を基にして命式をつくり、運勢・性格・吉凶・器などの「看命」(運命を読み取ること)を行うもの。「紫薇斗数(しびとすう)」→「淵海子平(えんかいしへい、四柱推命も言います)」→「張果星宗」という三段階がありますが、紫薇斗数は合婚法という相性診断に特徴があり、日本や韓国では四柱推命が盛んで、張果星宗の研究者はほとんどいません。
(2)卜(ぼく):時間・方位・現象などから「機」を読み取るもの。「六壬神課(ろくじんじんげ)」→「奇門遁甲(きもんとんこう)」→「大乙神数(たいおつしんすう)」の三段階があり、兵法学などで使われてきたとされるのが奇門遁甲です。六壬神課や大乙神数の研究者はほとんどいません。
(3)相(そう):表面に現れたものを通して、内面の本質を読み取るもの。「人相・名相・印相」(個人一代)→「家相・墓相」(家庭・家系)→「風水地理」(都市・国家)の三段階があり、手相は人相に含まれ、姓名判断は名相のことです。鬼門(東北方向)に水回りを避けるというのは家相で、京都の東北に比叡山を置き、江戸の東北に上野寛永寺や日光東照宮を置いて鎮めるというのは風水地理(あるいは奇門遁甲)です。韓国などでは墓相(特に立地)は子孫繁栄に関わるとして、非常に重視しています。
(4)山(さん):心身の修養法により人間的完成を目指すもので、道教的思想が色濃く出ています。「食餌・築基(ちくき)」(養生・導引・呼吸法)→「玄典」(『老子』『荘子』『西遊記』など仙人道の書)→「修密」(密教を修めること)の三段階で、築基は土台づくり、導引は体内の精気である内丹を錬成する呼吸法、修密は気を巡らす小周天・大周天などの仙道の技法から、武道まで含みます。
(5)医(い):病気を直し、生命力・自然治癒力を高めるもので、漢方医学・中国医学が該当します。「方剤」(漢方薬)→「鍼灸」→「霊治」の三段階で、鍼灸には指圧も含み、霊治が心理療法や神霊療法に該当します。
風水地理学:「気」の流れで場所の善し悪しを見極める気の地理学。北に高くそびえる山があり、南が広く開けた湖沼があり、東に清き流れがあり、西に大きな道が続く四神相応の地の地を選んだ平安京、「背山臨水」や龍脈の思想から朝鮮王朝の都に選ばれた漢城(ソウル)なども風水地理学による遷都です。