【読むメンタルケア vol.29】仲良くなったはずの人が、急にそっけない

【読むメンタルケア vol.29】仲良くなったはずの人が、急にそっけない

記事
コラム
※今日お話しするAさんは、よくある相談内容をもとにした架空の人物です。

こんな経験を、過ごしたことはありますか。

スマホを開いて、トーク画面を眺める。前はすぐに返ってきた返事が、最近は「うん」や「そうなんだ」だけ。既読がついたまま、何時間もたっている。

今日は、Aさんという女性のお話をします。Aさんは、同じような夜を、人生のなかで二度、迎えました。

■1. 17歳のAさん 「え、そんな話してたっけ」


高校2年生の秋のことです。

Aさんには、1年生の終わりに仲良くなった友だちがいました。好きなものが同じで、放課後は一緒に帰り、夜はトークで何時間も話す。ひとりでいることが多かったAさんにとって、初めて「何でも話せる」と思えた相手でした。

ある日、Aさんは家のことで悩んでいると、思い切って打ち明けました。

数日後。友だちは、その話をほとんど覚えていませんでした。

「え、そんな話してたっけ」

笑ってそう言われた帰り道、Aさんは自分の足音ばかり聞いていたそうです。

私ばかり、仲良しだと思っていたのかな。
大事にされていないのかな。

その夜は、画面を見ては閉じて、また開くことの繰り返しでした。

■2. 28歳のAさん 「あのころと、同じことをしている」


それから10年以上がたち、社会人になったAさんには、同じ部署に気の合う同僚ができました。昼休みも帰りも一緒で、愚痴をこぼし合える間柄です。

ところが、相手が別のプロジェクトに入ったころから、ランチに誘っても「ごめん、今日は無理」が続くようになりました。大事な相談をしたのに、「そうなんだ」で終わってしまうこともありました。

Aさんは、また同じことを考えている自分に気づきました。

私は大事にされていないのかな。
私が重いのかな。

そして、こうも思ったそうです。

「あのころと、同じことをしている」

胸の奥がきゅっとなる感覚が、17歳のときと、まったく同じだったのです。

■3. いちばんつらかったのは、「なかったことにされた」感覚


カウンセリングの場で、Aさんがこの話をしてくれたとき、私はこう聞きました。

「そのとき、いちばんつらかったのは、どんなことでしたか」

Aさんは少し考えて、答えました。

「そっけなくされたことより、私の話がなかったことみたいになったのが、いちばんきつかったです」

この言葉に、大事なことが詰まっていると感じました。

人は誰でも、自分の話や気持ちを、ちゃんと受け止めてほしいと願っています。「大切にされたい」「わかってもらいたい」という願いは、特別なものではなく、ごく自然なものです。その願いが届かなかったと感じると、人は出来事そのものより、「私は軽く扱われたのかもしれない」という痛みを抱えます。

つまり、Aさんが同じ場面で傷ついたのは、友だち選びが下手だったからでも、考えすぎる性格だったからでもありません。大切にしたい人がいて、その人にも大切にされたいと願っていた。ただ、それだけのことなのだと思います。

■4. 「事実」と「心が出した答え」を分けてみる


ただ、Aさんと一緒に整理してみて、気づいたことがあります。

17歳のとき、Aさんが確かに知っていたことは、二つだけでした。
返信が短くなったこと。
話を覚えていなかったこと。

「どうでもよくなったんだ」「大事にされていない」は、事実ではなく、傷ついた心が急いで出した「答え」でした。

つらいとき、人の心はどうしても、いちばん悪い答えを先に出してしまいます。それは心を守ろうとする自然なはたらきで、弱さでも、ひねくれでもありません。

後になってAさんは知りました。あのころの友だちは、家族のことで大変な時期だった。28歳のときの同僚は、新しい仕事を覚えるのに必死で、昼休みにも頭が休まらなかった。

そのときは、わからなかったことばかりです。

もちろん、本当に距離を置かれていることもあるでしょう。すべての関係が続くわけでも、すべてがすれ違いなわけでもありません。ただ、「わからない」うちに、いちばんつらい答えに決めてしまわなくてもよかったのかもしれない。Aさんは、そう話していました。

■5. 28歳のAさんが、初めてしたこと


28歳のとき、Aさんは、17歳のときとは少し違うことをしました。

黙って離れるのでも、試すようにそっけなくするのでもなく、こう送ったのです。

「最近忙しそうだけど、大丈夫?」

そして、もう少しだけ続けました。

「この前の相談、私にとっては大事な話だったから、また聞いてもらえたらうれしいな」

相手を責める言葉ではなく、「私はこう感じた」「こうしてもらえるとうれしい」を伝える言葉です。こう伝えると、相手は責められた気持ちにならず、受け取りやすくなります。

返事がどうだったかは、ここでは書かないでおきます。大切なのは結果よりも、Aさんが一人で決めつけて苦しむ場所から、一歩出られたことだからです。

もう一つ、Aさんが続けていることがあります。気持ちを預ける場所を、少しずつ増やしたことです。好きな音楽を聴く時間、休日の散歩、別の友だちとの会話。どれも小さなことです。でも、一人の人がすべてではなくなると、その人の返信が短くなった日にも、心の揺れが前ほど大きくなくなったそうです。

■6. いま、同じ体験をしているあなたへ


もしあなたがいま、誰かのそっけなさに胸がざわついているなら、それはあなたがその人を大切に思っているからです。

まずは、その気持ちを責めないでください。

そして、わかることとわからないことを、少しだけ分けてみてください。いまわかっているのは何か。心が出した「答え」は何か。わからないことは、わからないままで構いません。

頭の中で同じ考えがぐるぐるして、疲れてしまった夜は、ひとりで抱えこまないでください。家族でも、信頼できる友人でも、学校や職場の相談窓口でも構いません。

私のところでも、お話を聴くことができます。話したいことだけを短く整理することも、まとまらない気持ちをゆっくり話すことも、あなたのペースで大丈夫です。ご希望の時間帯があれば、メッセージでお知らせください。上手に説明しようとしなくて構いません。

今夜は温かい飲み物でも飲んで、少し早めに休んでくださいね。

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