現在日本では少子化による人口減少が社会問題となっています。日本は先進国の中でも先駆けて高齢化が進んでいる国であり、この高齢化及び少子化に伴う人口減少にどのような対策を立て乗り越えていくかを各国が注目している状況です。今回少子化対策として若者の間でも注目されつつある、オープンマリッジ(開かれた結婚)とポリアモリー(複数の恋愛関係)という2つの概念について考察してみようと思います。
オープンマリッジとは、夫婦関係においてお互いに他のパートナーを持つことを認める結婚形態のことです。基本的には法的には一夫一婦制の枠内にとどまりながら、恋愛や性的関係をオープンにするものです。ポリアモリーとは、複数のパートナーと同意のもとに恋愛関係を築くスタイルです。一夫一婦制の法的枠組みを超えて、複数人が関係を持つことを前提としています。これらの概念は特に欧米の自由恋愛文化の中で注目されており、日本ではまだ一般的ではありませんが、若者を中心に一定の関心が持たれています。
しかし日本においてこれらが一般化するにはこのような関係性を持つことを許容する文化が少しずつでも浸透していくのと共に法律の整備が不可欠です。どのような法律が一夫一婦制に関与しているかまとめてみました。
1. 民法における婚姻制度
日本の民法は一夫一婦制を原則としており、複数の配偶者を持つことを認めていません。
(1) 一夫一婦制の原則
•民法第732条(重婚の禁止):「既に婚姻している者は、重ねて婚姻をすることができない。」→ 既婚者が別の人と法的に婚姻関係を結ぶことは禁止。
•民法第733条(女性の再婚禁止期間):「女は、前婚の解消または取消しの日から100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」→ 重婚防止のための規定であり、オープンマリッジの制度化には改正が必要。
(2) 婚姻の実質的要件
•民法第731条(婚姻適齢)→ 18歳以上でなければ婚姻できない(2022年改正)。
•民法第750条(夫婦同氏制):「夫婦は、婚姻の際に定めるところにより、夫または妻の氏を称する。」→ 一夫一婦制が前提の制度であり、オープンマリッジには適用困難。
2. 不貞行為に関する法律
オープンマリッジでは、夫婦が他のパートナーと関係を持つことを許容するが、日本の法律では「不貞行為」として扱われる。
(1) 民法第770条(離婚事由)
「配偶者が不貞な行為をしたとき」は裁判で離婚請求が可能。オープンマリッジの合意があっても「不貞行為」と判断される可能性が高い。 一方の配偶者が「不倫」と主張すれば、離婚が成立する可能性がある。
(2) 不貞行為に基づく慰謝料請求
配偶者以外との性的関係は慰謝料請求の対象となる。 合意の上でオープンマリッジを実践しても、第三者が訴訟を起こす可能性あり。
3. 戸籍制度の問題
日本の戸籍制度は一夫一婦制を前提としており、オープンマリッジの導入には改正が必要。
(1) 戸籍上の配偶者欄
一人につき一つの配偶者欄しか存在しないため、複数の配偶者を法的に登録できない。
(2) 子どもの戸籍
ポリアモリー(複数の恋愛関係)において、親権や戸籍上の扱いが未整備。 子どもが複数の父母を持つ場合、法律上の親子関係をどう定めるかが課題。
4. 相続法における制約
オープンマリッジでは、複数のパートナーが存在するため、遺産相続のルールに問題が生じる。
(1) 民法第890条(相続権)
相続権を持つのは法的配偶者のみ。 複数の配偶者がいた場合、相続権が認められるのは1人だけ。
(2) 遺言による相続の制限
遺言を作成すれば特定のパートナーに財産を渡すことは可能だが、法定相続人(配偶者や子ども)の「遺留分」を侵害すると無効となる可能性がある。
5. 社会制度(社会保険・税制)の問題
オープンマリッジでは、社会保障や税制の扱いが未整備。
(1) 健康保険・扶養控除
健康保険の扶養は1人しか登録できないため、複数のパートナーを持つ場合に問題が生じる。 税制上の配偶者控除も1人までとなっている。
(2) 労働法における配偶者手当
配偶者手当は1人にしか適用されず、複数の配偶者がいる場合の対応が不明確。
6. 刑法における問題
刑法上、オープンマリッジを直接禁止する規定はないが、間接的な影響を受ける可能性がある。
(1) 姦通罪の撤廃
戦後の法改正により姦通罪は廃止されたが、民事上の「不貞行為」の概念は残っているため、離婚請求や慰謝料請求のリスクがある。
(2) 偽装結婚の問題
オープンマリッジを悪用し、偽装結婚(ビザ取得目的など)を行う可能性があるため、入管法の適用が課題となる。 特に、外国人が日本でオープンマリッジ関係を維持しながらビザを取得するケースが増えた場合、制度の悪用が問題視される可能性がある。
以上の様にオープンマリッジやポリアモリーは現在の日本の法律や社会制度と大きく異なるため、導入には大規模な法改正と社会的合意が必要となると思われました。私自身は個人的に、日本人もフランスのようにもう少しこういった考え方に寛容になってもいいのではないかと思ったりもしますが、法律を調べてみてハードルがとてもとても高そうに感じましたし、法律以前に日本社会の観念がここ数百年一夫一婦制を重んじてきたため、そう簡単には変わらないであろうとも思います。江戸時代から日本の倫理観は男尊女卑の傾向が強く、吉原遊郭などが発展し、男性が「遊ぶこと」は許容される一方で、女性の不貞には厳しい制裁が加えられるなど、不倫に関する価値観は極めて不均衡なものでしたし、現代の男女平等の世の中で男性が複数人の女性と交際したり結婚したりするのは、まだまだ女性サイドからするとお許しが出せないのかもしれませんね。逆に女性が複数人の男性と交際したりしても個人的にはいい様な気がしますが。
少子化対策としてオープンマリッジやポリアモリーもスマートな考え方の一つなのかもしれないと思い考察してみましたが、日本社会においての導入の道のりは険しそうです。皆様はどの様にお考えでしょうか。