連載「霊能者かんなぎの人生」vol.5 霊能家系に生まれても、異端である

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連載「霊能者かんなぎの人生」vol.5 霊能家系に生まれても、異端である


なんとなく、人生を書き綴ろうと思った事に対した理由はない。
ただ、同じような思いをしている人がいるならば、そういう人に届けば良い、そう思った。

【注意喚起】
※今回は幼児性愛者・変質者等による虐待または未遂を含む内容です。ご自身の心の危険を感じる方はこの先に進まないでください※




私は、子供の頃はよく、いわゆる幼児性愛者のターゲットになっていた。
あれってなんなんだろうね。
「親に言えなさそう」
「家庭環境に問題がありそう」
「孤独そう」
何かそんなものを嗅ぎ分けるセンサーでもあるんだろうか。

人気のないところに連れて行かれ写真を撮られたり、お菓子で釣ろうとされたり、突然雑木林のようなところにひっぱりこまれるなんてザラだった。


ある人は友達になってくれる良いお兄さんとして近寄ってきた。
実際、歌のお兄さんにいそうな健康的な風貌だったのもあり、子どもたちにも人気があった。
いつもジャージを着ていて、それがまた歌のお兄さんに見えたのかもしれない。

それに実際のところ、子どもたちと良く遊んでくれて、
とても楽しい遊びを教えてくれたり、
子どもたちの喧嘩の仲裁にも入り、
いつも爽やかな笑顔で、子どもたちもお兄さんがいるとばあっと笑顔になったものだった。

一人でいても、そのお兄さんが来れば、退屈せず過ごす事ができ、
もれなく私も、そのお兄さんが大好きだった。


しかし、大人から見ればそうではなかったんだと、今なら分かる。
ある日、子どもたちの中の一人のお母さんがやってきて、「あなた、この子達と遊ぶのはやめてもらえませんか」と、強い口調で言っていた。

それをたまたま聞いてしまった私は、まだ理解が及ばず、
「遊んでくれるお兄さんに酷い事を言うなあ」と思っていた。
しかしその日を境に、女の子たちの中で、あからさまにお兄さんを避ける子が出てきた。

いわゆるママ友ネットワークで話がまわり、注意されたんだろうね。
母は、そのママ友ネットワークの中には居なかったから、私は注意をされる事はなかったし、だから尚更、「酷いなあ」という気持ちしか持たないままだった。

もしかしたら、そのお兄さんはそういった事で有名な人だったのかもしれない。多分、お兄さんも時間がないと焦ったんだろう。
私を、「景色のきれいなビルの屋上があるから一緒に行ってみない?」と
いつもの笑顔で誘ってきた。

ビルの屋上の景色、というだけで、とても心がときめいた私は、お兄さんについて行く事にしたんだ。
「そこの屋上はね、人が入ってはいけないところだから、秘密だよ」
子どもなんて秘密はワクワクの要素でしかない。
私は尚更、ワクワクをつのらせた。

そのビルでエレベーターを待っていたら、
開いた扉の中から私を知っているらしき大人が出てきた。
「あら、どうしたの?」
秘密だと言われている私は、答える事ができなかった。
このビルの屋上に行くと言ってはダメだから。

そうするとそのお兄さんが、
「父です、初めまして。娘と知り合いを訪ねに来ました」とさらっと答えた。
「あら、お父様だったのですね、こちらこそ初めまして」
大人同士の挨拶を交わして、エレベーターに乗る事が出来た。

「危なかったね」笑顔のお兄さんはそう言った。
私も笑顔で頷いた。

屋上にはフェンスがしてあり、それを登って乗り越えないと入れないようになっていた。
「立入禁止」の大きな看板が、秘密のエリアに入れるワクワクをまた募らせた。
そのフェンスをお兄さんは私を抱えあげて、上手に乗り越えさせてくれて、
お兄さんは軽々とそのフェンスを越えてきた。
「さあ、ここが秘密の場所だよ」

遠くまで見渡せる風景はデパートの屋上にもあったので、特別に珍しいものではなかったが、それでも、見たことのない新たな景色を見れるという事は、私にとってはとても嬉しい事だった。
ちょっと強めの風もまた、とても心地よいものだった。
何より、誰も知らない秘密の場所というものが、まるで自分だけが特別扱いされたかのような、子ども故の優越感のようなものを満たしていた。

お兄さんは、笑顔で私を抱っこして、そうして言った。
「秘密の場所での事は、全部、秘密」
なんとなく本能が、いつもと違う笑顔のお兄さんに恐怖を感じたが手遅れだった。いつも頭を撫でてくれていたその手が、いつもと違う質感に感じられた。
「かわいいね」「おりこうだね」という言葉も、いつもと違う質感に感じられた。それからのお兄さんの顔は黒塗りにしか記憶されておらず、
ただただ、この時間が早く終わればいい、そう思いながら固まっているしかなかった。

そうして、どれぐらいの時間が経ったかは分からない。
さっきエレベーターで会った大人が、「やめなさい!」と叫んでいた。
今思えば、その人も女の人だ。
疑わしいと思ったとして、どれだけの勇気を振り絞って屋上に来てくれたのだろう。

私は、もう誰だか分からないその大人に、今これを書きながらとても感謝をしている。

そうして、お兄さんは誰かに連れて行かれ、その時に私を見て、「残念、邪魔がはいっちゃったね」と笑顔で言った。

それきり、そのお兄さんに会うことはなかったし、その頃の私はまだ良くわかっていなかったから、少々の安堵を抱えながら、お兄さんはどこか遠くに引っ越したんだろう、ぐらいに思っていた。
そうして、その大人に連れられて家に送り届けられた後、そうだな、親だったら、私だったら、全力で我が子を心配し、間違いなく相手と戦うと思うんだが、母は、「のこのことついていくなんて、ふしだらな」と怒鳴り散らした。
ふしだらなんて言葉の意味も分からない子どもに対して、だ。

あなたがそんな風だから、付け入られるんだ、と。
そんな風って、どんな風だったんだろう。
服装は至って普通だったし、何がいけなかったんだろう。
でも、とにかく私は「悪い子」だから、こうなったんだろう。
だから、これ以外の事も母に知られてはいけない。
そう思い、その先に色々な事があっても、何よりも母に知られない事を優先した。


そんな私の人生を語る事に意味があるのかはわからない。
ただ、自分がもし、異端だと思っている人がいれば、
また、これから先の話を通して、苦しい人生を歩んでいる人に「ひとりじゃない」と思って貰えれば、と思い、
不定期ながら人生を語らせていただこうと思う。
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