連載「霊能者かんなぎの人生」vol.4 霊能家系に生まれても、異端である

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連載「霊能者かんなぎの人生」vol.4 霊能家系に生まれても、異端である


なんとなく、人生を書き綴ろうと思った事に対した理由はない。
ただ、同じような思いをしている人がいるならば、そういう人に届けば良い、そう思った。


そうして、「誘拐作戦」が失敗した後の日々もさして変化はなく、教会に通ったり、変わらず誰に言う事もなく見えないモノたちと会話したり遊んだりする日々の中で、ある日、「お父さんに会いにいくわよ」と母に連れ出されれた事があった。

「お父さんに会いにいくわよ」と言うが、父とは同居していた。

ただ、よく出張に出ていたので、多分出張先に会いに行く、という意味だろうと解釈し、なんとなくついていった。

阪急電鉄に乗り、そこからバスに乗ったと思う。
どんどん変わる風景は、どんどん重く、暗くなって行き、
なんとなく重くてジメジメとした空気を感じながら、バスを降りて母と弟と歩いた。

バスを降りてから、ずっと人が誰も居なかった事を記憶している。
風景は山と川と、古い家がたまにぽつぽつとあるぐらいで、寂しい場所だなと感じた。

そうして、薄暗い川沿いの道を歩いていくと、二階建てのアパートのような所があり、その二階の窓から、父が笑顔で手を振っていた。

「こんなボロボロの古い所に泊まっているんだ」

そう思いながらも、まあ、こんなに山の中だし、そんなもんなのかな、と思い、父の待つ部屋へ上がった。

やっぱり部屋の中もなんだか薄暗いし、ジメジメとしているし、居心地の悪さばかりが募り、早くここから帰りたいなとずっと考えていた。

そうしたら母が嬉しそうに言ったんだ。
「ここに引っ越そうと思うんだけどどう思う?」と。

母は義母や近隣の義母の友人や父の兄弟と、あまりうまくいっていなかった。
だからもしかしたら大人の話し合いがあって、別居を選んだのかもしれない。
それにしたって、こんな人里離れた山奥のこんなボロボロのアパートに住むだって?
冗談じゃない。
うちも決して新しい家ではなかったが、こんなに薄暗くてジメジメした家ではない。

それなのに私以外の家族は皆、「悪くないね」とニコニコしていた。
なんだってんだ。

私は全力で拒否した。
子供の全力の拒否なんて、泣き喚くしかなかったんだが、
泣き喚いてまで抗議する私の様子に、父が折れた。

「お前がそこまで言うなら止めておこう」

父は、私に対してはあまり物言わぬ人だった。
そうして、実のところ、私の世界を否定したこともない人だった。

それに、こういう事は父に決定権があったから、
母が何と言おうと、この物件は却下、という事ですんなり決定した。

とにかくここに引っ越す事を回避出来た事に安堵しきっていた私は、
当時はこの言葉の意味なんて気にもしておらず、考えてもいななかったのだが、大人になってから、父からその言葉が出てきた理由を知ることとなった。

「いつも突然変わった事を言い出すけれども、それには従った方が良いと思っていた」

変わり者の娘だと思っていたけれども、信じてはいてくれていたようだった。

そうして、その後父が続けて言ったのは、「あの物件は新築だった」という事だった。

むしろ、ちょっと街中からは外れるものの、言うほど田舎でもなく、そうして日当たりも良好で、
何よりもピカピカの新築物件だったものだから、父としては喜んでくれるものと思っていたらしい。

なので、私がなんでそこまで拒絶して泣き喚くのか、そうして、こんなボロボロでジメジメした所は嫌だ、というのか、意味が分からなかったらしい。

自分がおかしいのかと思ったが、私以外は皆、ここは新築で明るくて、ここはいいねと乗り気だったそうだ。

ただ、泣き喚く私を宥めて、父の車に全員で乗り込んで、諦めて帰路についた時に、「ちょっと、あれ見て」と母が言ったらしい。

ベランダとは逆方向で、玄関からも見えず、ちょっとした死角になっていたのだが、そのアパートの真後ろに沢山のお墓があって、そこは雑草が生い茂り、鬱蒼とした場所で、とてもじゃないが大事にされている雰囲気は感じられず、大事にされているお墓ならまだしも、あれはちょっとな・・・と感じたらしい。

だもんで、父としてもこの物件は改めて無し、という事で心が決まったようだった。

私が記憶していない事でも、幾つかこういった話がある。だから従った方が良いと思った。と父は言っていた。

あそこに住んでいたらどうなっていたのかは分からない。
私以外は特に問題なく暮らせたのかもしれないし、お墓だってその後手入れがされたのかもしれない。

けれども、やっぱりあの風景を思い出すと、あそこには住みたくはなかったな、と思うのだった。


そんな私の人生を語る事に意味があるのかはわからない。
ただ、自分がもし、異端だと思っている人がいれば、
また、これから先の話を通して、苦しい人生を歩んでいる人に「ひとりじゃない」と思って貰えれば、と思い、
不定期ながら人生を語らせていただこうと思う。
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