「親の介護のことは気になるけれど、今はまず仕事を頑張らないと」
「自分はまだ現役だし、介護の問題はもう少し先でも何とかなる」
そう思っている方は多いと思います。
けれど今の45歳前後は、親の高齢化だけでなく、自分の働き方の前提そのものが変わる時代に差しかかっています。
昔のように、会社の中で経験を積みさえすれば何とかなる、年齢とともに役割も収入もある程度は守られる、という前提は弱くなっています。
そこにAIの進展が重なり、「何の仕事をしているか」以上に、どんな価値を出せるか、どんなスキルを更新できるかが問われやすくなっています。
つまり45歳は、まだ遅くない年齢ではありますが、
「今まで通りで大丈夫」とも言いにくい年齢です。
だからこそ、親の介護準備と自分の仕事の準備は、別々に考えない方がいいのです。
AIで「仕事が全部なくなる」のではなく、「仕事の中身が変わる」
まず大切なのは、AI時代を必要以上に怖がりすぎないことです。
AIが入ると、すぐに大量失業が起きる、という単純な話ではありません。
OECDの2025年レポートでは、日本のAI利用者は、AIが仕事の成果や働きやすさ、賃金の改善に役立つと前向きに評価する傾向があり、雇用喪失より雇用創出を期待する人の方が多いとされています。一方で、AIの恩恵は誰にでも同じように届くわけではなく、高齢層や非正規雇用の人は、AIを使う機会も、恩恵を受ける機会も少ないと指摘されています。
つまり、危ないのは「AIが来ること」そのものではなく、
仕事の中身が変わるのに、自分の準備が変わらないことです。
今後は、単純な作業の置き換えだけでなく、資料作成、情報整理、文章のたたき台作成、調査、分析の補助、顧客対応の一部など、多くの仕事で「人が全部やる」のではなく、「AIと分担する」形が広がっていきます。
その中で求められるのは、AIに全部任せることではなく、AIを使いながら判断し、組み立て、相手に伝える力です。
45歳から厳しくなるのは、「学び直しの必要性」が増えるから
45歳前後は、仕事では責任が重くなりやすい時期です。
一方で、学び直しの時間は取りにくくなります。
部下対応、管理職業務、家庭の役割、親の心配。
毎日が忙しく、「新しいことを勉強する余裕がない」と感じやすい年代でもあります。
ところが、IPAの2025年資料では、日本企業は「DXを推進する人材が「大幅に不足している」と答えた割合が85.1%と高く、AI関連人材についても米独より不足感が強いとされています。しかも、日本企業では人材育成について「とくに支援をしていない」とする割合が36.6%で、米国やドイツよりかなり高い水準でした。
さらに同資料では、30代・40代のフルタイム無期雇用者について、OJTを受けた割合も、自己学習に取り組んだ割合も、日本は調査対象国の中で低いとされています。つまり日本では、企業も個人も、変化に備える学びの面で十分とは言いにくい現実があります。
ここがとても重要です。
45歳以降にしんどくなるのは、年齢そのものの問題というより、
変化が大きいのに、学び直しの時間も支援も足りないことなのです。
「会社が守ってくれる前提」が弱くなる
AI時代になると、評価されるポイントも少しずつ変わっていきます。
これまでは、
長く勤めていること、
社内事情に詳しいこと、
前例を知っていること、
調整役として動けること、
といった価値が大きかった場面も多かったでしょう。
もちろん、そうした経験は今後も大切です。
ただ、それだけでは足りにくくなります。
なぜなら、AIやDXが進むほど、仕事は「処理量」より「判断力」「構想力」「対人力」の比重が高くなりやすいからです。
IPAも、AI時代の人材育成では、AI・データ関連のスキルだけでなく、分析的思考やリーダーシップなどのヒューマンスキルの重要性が高いと整理しています。さらに、スキルを基準に役割や評価を見ていく方向への変化が必要だとしています。
つまり、45歳からは、「会社の中で長くやってきたから大丈夫」ではなく、
これからも価値を出せる形に自分を更新できるかが問われる時代になっていくのです。
だから親の介護準備を後回しにすると危ない
ここで親の介護の問題が重なります。
総務省の令和4年就業構造基本調査では、介護をしている人は627万6千人、そのうち有業者は346万3千人です。つまり、働きながら家族介護を担っている人は、すでに非常に多くいます。
さらに経産省関連資料では、介護離職者は毎年約10万人、2030年には仕事をしながら家族介護を担う人がさらに増える見込みとされています。
もし45歳前後で、
仕事の中身が変わる、
学び直しが必要になる、
役割や収入の先行きも見通しにくい、
という時期に、親の入院や認知機能の低下が重なったらどうなるでしょうか?
多くの方は、仕事と介護の両方に追われ、
「今は自分のキャリアのことまで考えられない」
という状態になります。
でも本当は、その状態こそ危険です。
なぜなら、変化の大きい時代ほど、考える余裕がなくなった人から選択肢を失いやすいからです。
親の介護準備をしていない。
自分のスキル更新もできていない。
会社制度も十分に確認していない。
その結果、仕事を続けることも、辞めずに踏ん張ることも難しくなる。
これが、AI時代における45歳前後の本当のリスクだと思います。
45歳から必要なのは、「仕事の防衛」と「介護の防衛」を一緒に考えること
これからは、親の介護準備と自分のキャリア準備を分けてはいけません。
親の介護準備だけしていても、自分の働き方が崩れれば生活は守れません。
逆に、仕事のことだけ考えていても、親の問題が突然起きれば、時間も気力も奪われます。
だから必要なのは、
「親に何かあっても、自分の仕事が一気に崩れない状態」をつくることです。
そのために大切なのは、たとえば次のようなことです。
親については、
連絡先、通院状況、薬、保険、住まい、お金の情報を少しずつ整理しておく。
自分については、
今の仕事でAIに置き換わりやすい部分、逆に自分の強みになる部分を見つめ直す。
会社の介護両立制度を確認する。
必要なら学び直しや複業準備も視野に入れる。
この2つを一緒に進めることが、
45歳からの人生防衛戦略になります。
まず今日からできること
最初から大きく変えなくて大丈夫です。
第3話としては、次の3つをおすすめします。
1.自分の仕事を「AIに奪われるか」ではなく「何が変わるか」で見直す
作業、判断、対人対応、企画、調整。
自分の仕事を分解してみると、見え方が変わります。
2.会社が育ててくれる前提を少し手放す
社内研修が少ない会社もあります。
だからこそ、自分で学ぶテーマを持つことが大切です。
3.親の介護準備を「仕事を守る準備」として考える
終活や介護準備は、親のためだけではありません。
自分のキャリアと収入を守るための準備でもあります。
まとめ
AI時代に変わるのは、職種の名前よりも、働き方の前提です。
45歳からは、会社任せでは足りない、でも一人で全部抱えるのも無理、
という現実が見え始めます。
その上で親の高齢化が重なるからこそ、これから必要なのは、仕事の準備と介護の準備を同時に進めることです。
「親のことを考えると、自分の仕事まで不安になる」
「AI時代に、介護まで重なったらどうしたらいいか分からない」
そんな方は、一人で抱え込まず、早めに整理しておくことが大切です。
私は、親の介護準備と終活を整理したい方にも、すでに介護が始まり、仕事との両立に悩んでいるワーキングケアラーの方にも、それぞれの状況に合わせた相談をお受けしています。
第4話では、
「介護はある日突然始まる。だから準備の価値がある」
というテーマで、なぜ“平時の準備”が一番効くのかを、さらに具体的に掘り下げていきます。