「まだ元気だから大丈夫」がいちばん危ない理由

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「親はまだ元気だから、介護や終活のことはもう少し先でいい」
そう考える方はとても多いと思います。

実際、70歳前後の親御さんは、普通に買い物に行き、通院もし、自分のことは自分でできていることが少なくありません。内閣府の高齢社会白書でも、65~74歳では心身の健康が保たれ、活発な社会活動が可能な人が大多数を占めていることが紹介されています。だからこそ、子ども世代は「まだ大丈夫」と感じやすいのです。

でも、私はここに大きな落とし穴があると思っています。
それは、「元気に見える時期」こそ、準備を進めやすい最後のチャンスになりやすいということです。

本当に危ないのは、「困ってから考えればいい」という発想

介護や終活の準備は、問題が起きてから始めればよいと思われがちです。
ですが、実際には、親が倒れてから、認知症が進んでから、入院してからでは、できることが一気に限られてしまいます。

厚生労働省の資料では、介護保険の第1号被保険者のうち、「65~74歳の要介護・要支援認定者の割合は4.3%」ですが、「75歳以上では31.3%」に上がっています。

つまり、70代前半までは比較的元気でも、75歳を超えるあたりから状況が大きく変わりやすいのです。だから、「今は元気」という状態は安心材料であると同時に、準備の先送り理由にはなりません。

元気だからこそ、本人と話ができる

親が元気なうちは、つい「まだ早い」「縁起でもない」と思ってしまうかもしれません。

けれど、元気なうちには、まだ本人の希望を聞けます。

どこで暮らしたいのか、どんな医療や介護を望むのか、お金のことをどう考えているのか。こうしたことは、本人が自分の言葉で話せるうちに少しずつ確認しておくほうが、家族全体にとってはるかに良い準備になります。

反対に、体調を崩してから、あるいは判断力が低下してからでは、「聞いておけばよかった」「本人の考えが分からない」という事態になりやすくなります。

準備が難しくなるのは、親が弱ってからです。
準備がしやすいのは、親がまだ元気な今です。これはとても大きな違いです。

認知症は「まだ先」とは限らない

「うちの親はしっかりしているから大丈夫」と思っていても、認知機能の変化は、家族が気づきにくい形で少しずつ始まることがあります。

厚生労働省が公表した2022年の推計では、65歳以上の高齢者のうち、「認知症の有病率は12.3%、軽度認知障害(MCI)は15.5%」で、合計すると約27.8%です。

MCIは認知症ではないものの、もの忘れなどの軽度の認知機能障害がある状態です。つまり、「認知症ではないから安心」と単純には言えず、見た目には元気でも、判断や記憶の面で変化が出ている可能性は珍しくありません。

だからこそ、親が元気なうちに、通帳や保険、連絡先、かかりつけ医、住まい、介護の希望などを整理しておくことが重要になります。

問題が表面化してからではなく、まだ日常が回っているうちに準備しておくことが、家族を守る現実的な方法です。

子ども世代は、親の変化を後回しにしやすい

ここでさらに難しいのは、子ども世代の側にも余裕がないことです。

前回お伝えしたように、今は親の高齢化だけでなく、子ども世代の働き方そのものも揺れやすい時代です。現役世代の人口割合は減少しており、内閣府の高齢社会白書では、令和6年時点で65歳以上1人に対して現役世代2.0人、令和52年には1.3人になると見込まれています。

支える側の人数が相対的に減る社会では、「家族の誰かが何とかする」が通用しにくくなります。

実際、総務省の就業構造基本調査では、介護をしている人は627万6千人、そのうち有業者は346万3千人とされています。つまり、介護はすでに多くの人にとって「仕事と切り離せない問題」です。

ここではご希望に合わせて「ワーキングケアラー」と呼びますが、まさに働きながら家族介護を担う人が多数いる現実があります。

「まだ元気」は、安心の理由ではなく「準備の適齢期」

私は、親が元気なこと自体は、とても良いことだと思っています。
ただし、その元気さを理由にして準備を先送りするのは危険です。

なぜなら、元気なうちは次のことができるからです。

本人の希望を聞ける
家族で落ち着いて話せる
お金や保険や住まいの情報を整理できる
兄弟姉妹の役割分担を話しやすい
介護保険や地域包括支援センターなどの制度を先に知っておける

逆に、倒れてから、認知症が進んでから、入院してからでは、これらを短期間で進める必要が出てきます。そうなると、家族は慌て、仕事にも影響が出やすくなります。

だから私は、「まだ元気」は安心して何もしない理由ではなく、静かに備え始めるべき合図だと考えています。

今のうちにやっておきたい小さな一歩

ここで、今日からできることを3つだけ挙げます。

1.親の「元気さ」を過信しすぎない
元気であることと、何の準備もいらないことは別です。
70代前半で元気な人が多いからこそ、その時期に話し合いを始める価値があります。

2.重い話ではなく、生活の確認から始める
いきなり相続や施設の話ではなく、「通院は大丈夫?」「薬はきちんと飲めている?」「何かあった時の連絡先を整理しておこうか?」くらいの話題から始めると進めやすくなります。

3.「何か起きてから相談」ではなく、「何も起きていない今相談」を意識する

本当に助かるのは、トラブルが起きた後より前です。
先に整理しておくことで、後の混乱や介護離職のリスクを減らしやすくなります。介護と仕事の両立が必要になる人はすでに多く、早い段階の準備には大きな意味があります。

まとめ

「まだ元気だから大丈夫」
この言葉は、一見前向きですが、実は準備を先送りするもっとも危ない言葉のひとつです。

70代前半は、まだ元気な人が多い。
でもその先では、要介護認定率も大きく上がる。

認知機能の変化も、見た目では分かりにくいことがある。
そして子ども世代もまた、仕事や収入の面で余裕があるとは限らない。

だからこそ、「何かあってから」ではなく「何も起きていない今」動く。
それが、これからの介護準備と終活の新常識だと私は思います。

「親のことは気になるけれど、何から整理すればいいか分からない」
「親はまだ元気だけれど、少しずつ準備を始めたい」

そんな方は、早い段階で一度整理しておくことをおすすめします。

第3話では、「AI時代、45歳から働き方の前提が変わる」 というテーマで、親の介護準備と自分の仕事の問題を、なぜセットで考える必要があるのかを掘り下げます。

未来の安心のために、AI時代の介護準備・終活の新時代を一緒に作っていきましょう!!
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