キャリアコンサルタント資格を取ったあと、多くの方が一度はこう感じます。
「人事経験がない自分にできるのだろうか?」
「求人を見ると、人事・採用経験歓迎と書いてあることが多い」
「やはり人事畑の人の方が有利なのではないか?」
この不安は、とても自然です。
特に、会社員として営業、現場、管理職、専門職などを歩んできた方ほど、「人事経験がない=キャリコンデビューが難しいのではないか?」と感じやすいものです。
ただ、結論から言うと、人事経験がないとキャリコンは無理、ということはありません。
(一方で、人事経験がある人が入りやすい場があるのも事実です。)
大切なのは、この2つを分けて考えることです。
まず押さえたい現実 企業領域では人事経験が活きやすい
JILPTの調査では、勤務先ありの正規雇用のキャリアコンサルタントの職種は、「人事・総務・事務・管理」49.8%が最も多く、「(主に)キャリアコンサルタントの仕事」11.0%を大きく上回っていました。つまり、企業内では、キャリアコンサルタント資格を持っていても、専業のキャリコンとして働くより、人事・総務系の職務の中で資格を活かしている人が多いのです。
(複業案件の件数が多い、選考に通りやすい、複業案件を獲得しやすいという面は確かにあると感じております。)
※報告書では、2017年から2022年の比較で、「キャリアコンサルティングの仕事に従事する割合が減り、人事・総務・事務・管理の職務の割合が増加した」と整理されています。
ここから分かるのは、企業内ルートでは人事経験があると確かに有利に働きやすいということです。
だから、「人事経験がないと不安になる」こと自体は、決して見当違いではありません。
でも、それは「人事経験がないと無理」とは違います
ここで大事なのは、
「人事経験があると有利な場面がある」
と
「人事経験がないとキャリコンはできない」
は、まったく別の話だということです。
同じJILPT調査でも、非正規雇用のキャリアコンサルタントでは、職種の最多は「(主に)キャリアコンサルタントの仕事」60.8%で、「人事・総務・事務・管理」15.1%でした。つまり、働き方や入口によっては、人事職そのものではなく、相談業務や支援業務そのものに近い形で活動している人も多いのです。
要するに、企業内の人事ルートに強い人事経験者もいれば、公的機関、就労支援、研修、外部面談、複業・独立型で力を発揮する人もいます。
入口が一つではないのが、キャリアコンサルタントの世界です。
人事経験がない人が陥りやすい誤解
人事経験がない方が苦しくなるのは、経験がないことそのものより、その経験をどう見ているかに原因があることが多いです。
1. 人事経験だけが「支援経験」だと思ってしまう
たとえば、営業でお客様の話を丁寧に聴いてきた経験。
管理職として部下の面談や育成をしてきた経験。
現場で人間関係や配置、役割の悩みを見てきた経験。
転職、再就職、介護との両立など、自分自身の葛藤の経験。
こうしたものも、支援の土台になります。
それなのに、「人事経験ではないから価値がない」と思い込んでしまう人は少なくありません。
2. 求人票の条件を、そのまま自分の価値と結びつけてしまう
たしかに求人票には、「人事経験歓迎」「採用経験歓迎」と書かれていることがあります。
でも、それはその求人に合う条件であって、あなた自身の価値の総量ではありません。
企業内人事ルートでは弱くても、別の場では強みになる経験はたくさんあります。
3. 「キャリコンとしての経験」を狭く考えすぎてしまう
キャリアコンサルタントとして活きるのは、制度知識や採用知識だけではありません。傾聴、整理、伴走、相手の現実に即した支援、行動につながる対話。
こうした力は、人事以外の仕事や人生経験の中でも十分に鍛えられます。
実際に、人事経験がなくてもデビューしている人はいます
人事経験はなくても、ボランティア活動、勉強会・交流会への参加、JCDA地区会活動、人脈づくりなどを積み重ね、デビューの糸口をつかむことは可能であり、若年者支援、中小企業向け採用コンサルティング、外部キャリア面談、就職支援セミナーなどへ活動を広げていくというルートもあります。
つまり、人事経験がないから終わりではなく、人事経験がないなら、別の経験の活かし方と別の入口設計が必要ということなのです。
むしろ人事経験がない人に向いている入口もある
ここはぜひ読者に伝えたいポイントです。
人事経験がないからこそ、企業内人事ルートだけにこだわらず、自分の人生経験や関心領域を入口にした複業・独立型のデビューを考えやすい面もあります。
たとえば、趣味や夢中になってきたことを土台にして、そこにキャリア支援の視点を掛け合わせる方法があります。
釣り、音楽、写真、登山、DIY、ペット、歴史、読書会など、自分が長く続けてきた世界を切り口にする。
その分野で「好きなことを仕事にしたい」「定年後の生きがいと複業を両立したい」「趣味を活かして次のキャリアを考えたい」といった相談につなげる
最初は「趣味の経験者の先輩」として関わり、そこからキャリア整理の支援へ広げる
こうした形なら、人事経験がなくても、自分のリアルな経験そのものが価値になります。
また、占いとキャリアコンサルティングを掛け合わせるような入り方もあります。
たとえば、相談者は最初から「キャリアコンサルティングを受けたい」と思っていないことも多いので、入口は占い、性格診断、自己理解コンテンツでも構いません。
そこから、
自分は本当はどう働きたいのか?
今の仕事に違和感を持つ理由は何か?
次の一歩をどう整理するか?
という形で、自己理解からキャリア支援へ橋をかけるやり方も考えられます。
この場合に大切なのは、占いを結論にするのではなく、相談者の意思決定や行動整理に結びつけることです。
さらに、ロープレ相手として複業デビューする形もあります。
国家資格キャリアコンサルタント試験の受験者、面談練習をしたい対人支援職、面接練習をしたい求職者などに対して、
ロープレ相手
フィードバック役
面談練習の伴走役
として関わるのも、立派な入口です。
これは最初から「私はキャリア支援の完成形です」と名乗らなくても始めやすく、聴く力・整理する力・相手に合わせる力を実践で磨けるメリットもあります。
むしろ人事経験がない人に向いている領域もある
人事経験がないことは、不利になる場面もあります。
でも逆に、人事経験がないからこそ、当事者に近い言葉で支援しやすい領域もあります。
たとえば、
ミドルシニアの再就職支援
役職定年前後のキャリア不安
仕事と介護の両立
複業・セカンドキャリアの準備
現場職・営業職出身者への支援
趣味や好きなことを活かした複業準備
対人支援職のロープレ練習やデビュー支援
こうしたテーマでは、いわゆる人事制度の運用者としての視点だけでなく、働く当事者としてのリアリティが強みになります。
※私は、ミドルシニア人材はきめ細かなキャリア支援を受けにくく、さらに複業に対するアドバイスやコンサルティングができるキャリアコンサルタントが不足していることが、課題だと感じています。
ここで必要なのは、「人事経験があるかないか」より、誰の、どんな悩みに、自分の経験が役立つかを整理することです。
では、人事経験がない人は何を武器にすればよいのか
私は、次の4つがとても大事だと思います。
1. 前職経験や人生経験を「支援価値」に翻訳する
営業、管理職、技術職、現場職、教育、福祉、介護、接客。
さらに、趣味、夢中になってきたこと、長年続けてきた活動も含めて、その中にある「聴く」「整理する」「育てる」「伴走する」「現実を知っている」
という要素を言葉にできると強みになります。
2. どの領域から入るかを見極める
企業内人事ルートだけを見ていると苦しくなる方もいます。
公的機関、委託事業、セミナー、外部面談、複業型、ロープレ相手、自己理解支援型など、自分の経験が活きやすい入口を探すことが大切です。
3. 小さな実績を先に作る
人事経験がないなら、なおさら「何もない人」ではなく、「少しでもやっている人」になることが重要です。
ボランティア、勉強会、モニター面談、周辺活動、人脈形成。
まさに、1つ1つの積み重ねが大切です。
4. 人事経験の代わりに、対象理解を深める
制度運用の経験が弱いなら、その分、対象者の悩みや市場理解を深める。
たとえば、
ミドルシニア支援なら、再就職市場、役職定年、複業、介護との両立などを学ぶ。
趣味や占いを入口にするなら、その先でどんな悩み整理につなげるのかを考える。
ロープレ相手として始めるなら、どんな相手のどんな練習ニーズに応えるのかを明確にする。
こうしていけば、人事経験そのものがなくても、支援の説得力は高められます。
まとめ|難しいのは「人事経験がないこと」より、「活かし方が見えていないこと」
人事経験がないとキャリコンは難しいのか?
私の答えは、一部の入口では不利になりやすいが、それだけで無理とは言えないです。
実際、企業内の正規雇用ルートでは、人事・総務・事務・管理の比率が高く、人事経験が活きやすい構造があります。
一方で、非正規雇用や外部支援型では、主にキャリアコンサルタントの仕事として活動している人も多く、入口は一つではありません。
そして何より、人事経験がなくても、営業経験、管理職経験、現場経験、転職経験、介護との両立経験、趣味や夢中になったこと、占いなどの自己理解支援、ロープレ相手としての伴走など、入口は十分につくれます。
だからこそ必要なのは、「人事経験がないから無理」と結論づけることではなく、
自分の経験のどこが支援価値になるのか?
就職以外も含めて、どの入口が自分に合うのか?
どんな小さな実績から始めるべきか?
を整理することです。
「自分の職歴のどこが武器になるのか分からない」
「趣味や人生経験をどう複業につなげればいいか迷っている」
「占いやロープレ相手のような入口を、どうキャリア支援につなげればよいか整理したい」
そんな方は、まずは現状整理から始めてみてください。
不利に見えることも、整理次第で十分に強みに変えられます。
一緒に頑張っていきましょう。
ご相談はお気軽に!!