はじめに
転換点のお話を記事にする予定でしたが、先に人物設定について作成させていただくことにしました。
転換点についてももちろん作成予定ですので、また改めて上げさせていただきます。
今回も愛読書のこちらから。
フィルムアート社「工学的ストーリー創作入門」より
人物を三つの次元で捉えようということで、主要な登場キャラを作りこむときにどういうことを考えたらいいか、の参考です。
今回もまずは画像で確認しましょう。
人物が平面的、つまり退屈だったりありきたりなものになっていないか。特徴のない脇役レベルになってしまっていないか。
深い感情を呼び起こせる主要キャラを作成できれば、そういったつまらない人物になってしまうことを避けることに繋がるかと思います。
それでは画像の解説をしていきます。
※今回も人物設計のただひとつの絶対方法論として紹介するものではありませんので、これが唯一ではないということはご了承ください。
第一次元
その人物に対して、周りの人が何を見て何を受け取るかの外側の情報です。
髪型や、化粧、顔立ち、乗っている車、態度など。
表面的な特徴で、人物自身が周りに「どう思われたいか」、周りが「自分をどう見ているか」といった情報であるときもあります。
バイクについて、めちゃめちゃ語ってくる不良少年。しかし彼はバイクの免許を持っていない。
読者は「ああ、この人はバイクが好きなんだな」「詳しいのだろう」と思うでしょうか。もしくは「免許を持っていないくせに何を言うんだ」と思うこともあるかもしれません。
第一次元では、この人物が本当にバイクが好きなのか、または付け焼刃の知識をひけらかしているだけなのかは必要ありません。
ただそこに、「バイクについて語る少年」「彼は免許を持っていない」という真実だけがそこにあるのです。
そして、その裏にある意味を見せ始めたときから、第二次元の領域へと入っていきます。
第二次元
ここでは目に見えていただけのものの理由を明かす次元です。
裏設定や裏の意図を表していきます。
しかしまだ「人物が読者にそう思ってもらいたい姿」なので、真の姿とは限りません。
バイクは亡くなった父の形見。父がバイクをとても好きで、よく自分に語ってくれていたので、このバイクについてはとても詳しくなったのだった。
よくある、実は「いい奴だった」パターンでしょうか。
父がよく自分に語ってくれていたから、その人物は人に話せるほどそのバイクについて詳しくなっていた。つまり表面的な特徴として一次元に表出されていたのです。
これにより読者は、彼を第一次元(無免許だけどバイクを持っているヤンキー)と、第二次元(父の形見を大切にしている息子)で認識しました。
二次元で人物の内面が少し見えました。一次元での外面とは違った印象かもしれません。
過去の記憶、経歴、いままでの体験など、これら裏で持つべき内面が第二次元となります。
この内面を見て、読者は初めて彼に感情移入をしてくれるのです。
では、この人物が差し迫った状況に対面したとき、彼は今認識したどちらの面を見せるのでしょうか。
それが、第三次元での領域となります。
第三次元
父の形見のバイクが、大変価値の高いクラシックバイクであることが分かった。彼はそれを聞いて、なんのためらいもなくそのバイクを売りに出した。
これが彼の本性です。
これが例えば、彼の経済状況が特に困窮しているわけでもない場合、マジでただの最低な奴です。
三次元ではその人物の真の姿を見せます。
彼はバイクを売ることを「決断」し、実際に売却するという「行動」をした。
差し迫った状況下で実際に行った行動が、その人物の真の姿です。
もちろん、鑑定をした人物から売ってくれを言われたときに、それを跳ね返す本性に設定してもいいです。
その場合は、やはりとてもいい子だったという三次元になるでしょう。
作る物語に合わせていければ大丈夫です。
バイクは、彼が父想いである、という印象付け(二次元での言い訳)をしたいがための道具でしかなかったのです。
良くも悪くも第三次元が究極の姿。
他は伏線だったり、まやかしだったり、説明なのです。
おわりに
今回は登場人物がつまらない人間にならないための設定の方法として三次元で捉えることをしてみました。
次元を重ねることで、魅力的で複雑で、かつ怖さや親近感がわく人物が形作られていきます。
人物設計が浅いとき、それは第一次元の作りこみや描写だけが強くなってしまっている可能性があります。
例えばバイクの車種がどうとか、彼はレザージャケットでキメている。など、外見の特徴だけ詳しく描写しても本当の個性の深みとは縁遠くなります。
ぜひ参考にしてみてください。
作家の皆様の一助となりますよう。
ここまでお読みいただきありがとうございました。