言葉にならなかった部分。 それが、今、ここにある。

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コラム
街灯の光が、すこしだけ色を持っていた。
あたたかいようで、どこか冷たい。

夜の公園は、音が少ない。
遠くで車が通る気配と、
ブランコの鎖が、かすかに揺れる音だけ。

凪は、立ち止まった。

ポケットの中の指先に、まだ体温が残っている。
さっきまで握っていたスマートフォンの感触。
あの声。
あの間。

ゆっくり、顔を上げる。

そこに、いた。

陽菜は、ブランコの近くに立っていた。
照明の下で、輪郭がやわらかく浮かんでいる。

思っていたより、近くて。
思っていたより、遠い。

風が、二人のあいだを通り抜ける。
髪が、ほんの少しだけ揺れた。

目が合う。

それだけで、時間が止まったみたいだった。

ああ、ちゃんと来たんだ。

誰も言っていないのに、
そんな言葉が、空気の中に落ちた。

凪は、ほんの一歩だけ、足を動かした。
でも、それ以上は進まない。

陽菜も、動かない。

ただ、見ている。

少しだけ、泣きそうな顔で。
でも、笑いそうでもあって。

どっちとも言えない、その表情。

凪は、視線を逸らさなかった。

怖くない、とは言えない。
でも、逃げたくない、とも思った。

さっきの電話で、確かに触れたもの。

言葉にならなかった部分。
それが、今、ここにある。

ふたりの間に。
ブランコが、きい、と小さく鳴る。

風のせいか、
陽菜の手が、少しだけ動いた。

それだけで、
凪の心が、かすかに揺れた。

近づくでもなく、離れるでもなく。

ただ、立っている。

それなのに、
何かが、確実に変わっていく気配がした。

夜は、静かに深くなる。

そして、
まだ何も始まっていないのに、

もう、戻れないところまで来ている気がした。
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