親友の弟と、恋愛できますか?【連載中】第6話

親友の弟と、恋愛できますか?【連載中】第6話

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第6話 引っ越しのご挨拶


 「琉生《るい》に話ついたよー!車でこっち来てくれるー!朝ごはん食べて支度して待ってよー!」
  電話を終えた朱音《あかね》が、リビングに戻ってくる。
  碧斗《あおと》くんがしてくれるままに任せてる私を見て、朱音《あかね》は何も言わずに、元の場所に腰掛けた。
 「朝ごはんどうしようかー、碧斗《あおと》作ってくれるー?」
 「簡単でいいー?俺、朝食わないからー」
  「いいよー!」
   朱音《あかね》と碧斗《あおと》くんの会話を聞いていたら、碧斗《あおと》くんの手の心地よさにうとうとしてきた。
  カチッと、ドライヤーを止める音がしたときには、私は半分夢の中。
  碧斗《あおと》くんの匂いに包まれた感覚の後、私の意識は完全に途絶える。
   ぱちっと起きたときには、私はソファーで横になっていて、頭の下には枕、上には温かいブランケットがかけられて、目の前のテーブルには、碧斗《あおと》くんが作ってくれた(?)ホットサンドとオレンジジュース(?)が置かれていた。
  ゆっくり目線を向けると、ダイニングテーブルで同じメニューを食べてる朱音《あかね》と、洗い物をしている碧斗《あおと》くんの姿。
 「起きた?ちょうどできたてだよー。こっち来れそう?いっしょに食べる?」
 「あ…、うん、行く」
  用意してくれてお皿たちを持って、先ほどの自分の席に腰掛けた。
 「ごめん、寝てばっかで…」
   朱音《あかね》たちに申し訳なさがこみ上げる。
   情けない姿を見せてばかりだもん。
「そんなことないよ。隣人のせいで、全然寝れなかったでしょ?ここが安心できるならよかった」
「ありがと朱音《あかね》…。碧斗《あおと》くんのつくるごはんもおいしいし、碧斗くんはなんでも上手だね!」
 「あっちも上手だよ。試してみる?」
 「ごはん中!!!!!」
  朱音《あかね》の怒声が飛んでった。
  洗い物を終えた碧斗《あおと》くんも席につく。
  手元には入れたてのいい香りのコーヒーが。
「あの状態で寝られると、俺の俺が可哀想で、…」
  視線を感じるけど、どこまでしたのかまっっったく覚えてないから、無視無視。
  28歳って聞いてたけど、顔の雰囲気だけを見たら24歳に間違えるほど!ピュアな若さを持ってるのに、普通にぶっこんでくる下ネタに、どう対処したらいいのか…。
 「荷物運んだら、部屋も軽く整えようか。足りないものは今日のうちに買い足してもいいし。ちょっと無理しても明日は休みだから、のんびりすしよ」
 「ありがと碧斗《あおと》くん。よろしくお願いいします。」
  碧斗くんの客間を仮住まいにお借りして、私の新生活がスタートだ!
  朱音《あかね》から日焼け止めだけ借りて、碧斗《あおと》くんから借りた服装のまま、わたしは碧斗くんの車に、朱音《あかね》は琉生《るい》くんの車に乗り込んだ。
 (あ…いい匂いする)
  碧斗《あおと》くんの車は清潔感あり、整頓されてて、中の装飾が嫌味のないおしゃれさ。
  運転上手そう…と思った予想通り、ほんとに上手で、見惚れるように眺めてしまった。
  どこまでもスマート。
  持ってる車も高級で、 欠点が一つも見つからない碧斗《あおと》くんに、好かれたい女性はいっぱいいるだろう。
  私で女避けになるのかな、太刀打ちできるのかな。
  すでに生まれ始めた碧斗《あおと》くんを好きな気持ち、どうしたらいいのかな…。
  向かう先は、昨日走り逃げた私の部屋。
  ホントならこんな気持ちで行けない場所なのに、頼もしい友人たちの存在で、私の気持ちは安定していた。
 さすがにマンションの前に立つと、うっ…と思う気持ちは湧いて来たけど、そっと寄り添ってくれる朱音《あかね》の手が安心をくれたから。
 「早く終わらせてとっとと帰ろう!私の体力もへなちょこだし!」
  昨日から、私の身体は重りのように重たく、倦怠感が強い。
  知らぬ間に蓄積した疲労と緊張感が、一気に緩んで疲れがどっと出たと思う。
  嫌なことはすぐ済ます!どうせやらないと行けないことなんだから!
  部屋番号を知らないと思うのに、先を歩いてエレベーターのボタンを押す碧斗《あおと》くんと、私と朱音《あかね》の後ろについてくれる琉生《るい》くん。
  その心遣いも、嬉しかった。
  碧斗《あおと》くんに部屋番号を教えて、エレベーターで上に向かう。
  休日なのに、マンションは静かに感じた。
  ファミリー層ではなく、私みたいな一人身の社会人が多い感じだったから、引っ越しの挨拶もちゃんとせず、住んじゃったんだよね。
  朱音《あかね》が内見に来てくれたときに、女の一人暮らしで挨拶も危険だけど、弟連れて男の影ありますからって牽制したほうがいいのかな?って提案してくれてたな。
  隣の人が男性って、警戒が必要だったのかな。
  浮かんでくる隣人さんは、悪い印象なんてなかった。
  なにか言われることもなかったし、普通の人だった、ほんとに。
 だから、急な行動にびっくりしちゃって…、話をする機会が作れていたら、今と違う状況になっていたのかな。
   先にエレベーターを降りた碧斗《あおと》くんは、今まで見たことないぐらいの速さで歩き出し、部屋の前まですぐついてしまった。
  足長!歩幅でか!私に合わせて歩いてくれてたんだ…!って驚くぐらい、あの速さで動ける碧斗《あおと》くんが意外。
  年齢より幼く見えるし、のんびり優しいし、笑顔が可愛いから、ほんわかした印象を勝手に作ってたけど、その…っ、たまに、男だって認識させる動作とか、雰囲気とかに、驚きすぎちゃう。
  今も、部屋の前に立つ姿が、モデルみたいにオーラがあって、絵になるのに、近寄りがたい怖さが、あるから…。
  少しの間、そのままだった碧斗《あおと》くんの手が動く。
  わたしはそれまで、気づかなかった。
  碧斗《あおと》くんしか、見ていなかったらしい。
  碧斗《あおと》くんの手が動かしたのは、私の玄関のドアノブにかかったままのもの。
  音が鳴るようにわざと、隣の部屋のドアノブに掛け直しした。
「あっ…碧斗《あおと》!やるならもう少し静かに…!!」
   最小限に抑えた声で怒る朱音《あかね》に、ふにゃっとした優しさが消えた、怒った表情の碧斗《あおと》くんが、通る声で発した。
「引っ越しのご挨拶」
  決して大きな声量じゃなかったけど、耳の奥まで届くような冷たさと怒りを感じるものだった。
 隣人さんが在宅だったら、碧斗《あおと》くんの行動とこの声が、しっかり届いたと思う。
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