【恋愛小説】親友の弟と、恋愛できますか?連載中 8話

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 第8話 手加減なんて、必要ない。


「おーい、大丈夫?やりすぎってこと、ないよね?」
 空気を読んだのであろうタイミングで、緊張と緩みの中間のような声がかかる。
「これぐらい、茉由《まゆ》さんがされたことを考えたら、大したことないですよ。これ以上の嫌なこと、こいつはしてんだから」
 見下ろすようにこいつの顔に目を向けると、恐怖と敵対心が混同したような弱弱しいのに中途半端な意志を見せてくれる。
「はい、それ以上はいいから」
 俺の考えを読んだ琉生《るい》さんが前から腕を伸ばして、俺の体を少し後ろに引き離した。
 冷静さを、少し失くしてたかもしれない。
 正直、こんなやつに…って思いがあった。
 こんな奴が、こんな奴が、茉由《まゆ》さんを怖がらせて、茉由《まゆ》さんの中に混在してると思うと…。
「…殴りてぇ」
「はい、物騒なのでだめです。落ち着いてー」
 琉生《るい》さんが完全に俺の前に入り、こいつとの距離を開かせる。
 琉生《るい》さんだって、俺と距離をとらせても、こいつのことを見下ろしてるし、金髪碧眼の長身男に見下すように立たれる方が、よっぽど怖いと思うんだけど。
 心の中で悪態をついていても、琉生《るい》さんはどかない。
「早く戻ったら。ここにいない方がいいと思うよ。大人しく部屋にこもって静かにしてろよ」
 琉生《るい》さんだって我慢できず、最後の方は口の悪さ出てんじゃん。
 中途半端で終わらされたイライラを、心の中で琉生《るい》さんに向けても、解消されるわけがない。
 よろよろと立ち上がり部屋に入ろうとするあいつに、「忘れ物」と落としたビニール袋を差し出す。
 なんともいえない顔をしたが、受け取らないと終わらないと感じたのか、最後はおずおずと受け取った。
「もう二度と関わんな。これが最後の”ご挨拶”だから」
 俺の睨みを受けた男は、こくんとうなずき、静かに扉の向こうに消えていった。
「色々言いたいことあるんだけど、言っていい?」
「だめ。ひどい言葉しか出てこないと思うから」
「だって、あれだよ?あのレベル、あのレベルで」
「やめなさい。ほんとにやめなさい」
 諭す琉生《るい》さんに納得できず、言いたいことは口の中に溜まっていく。
 あのレベルで茉由《まゆ》さんを追い詰めて認知させるとか、まじで腹立つんですけど…‼
 あいつは本当におとなしくするのか、俺の気性の荒さが落ち着くまでもかねて、2人で部屋の前でしばらく過ごすことにした。
「碧斗《あおと》がこんなガキっぽくなるなんて、珍しいな」
「……」
 自覚しているけど、ガキっぽくなるって言われて、あまり嬉しくはない。
 茉由《まゆ》さんと実質の年の差もあるわけで、かっこいい、頼りになる姿を見せれる大人の自分では、いたい。
「そんな惚れてんだ?あってすぐだろ?」
「だって、茉由《まゆ》さん可愛いじゃん」
「まあ、可愛いと思うけど…って、睨むなよ!お前ほんと子どもになったな!」
「ちっ…」
「舌打ちまでして…。碧斗《あおと》今もモテ期だし、つい最近まで遊んでただろ?それなのに、そんなすぐに惚れるなんて…、珍しいなって思っただけだよ」
「琉生《るい》さんだって、姉ちゃんと会ってから変わったじゃん。一緒だよ」
 姉ちゃんには内緒にしてるけど、琉生《るい》さんと俺の関係は、姉ちゃんと琉生《るい》さんより長い。
 なにせ、女遊びの先輩は琉生《るい》さんだったから。
 わっるいことはぜーーんぶこの人から教わったと言い切っても過言じゃないぐらい、女の悪い部分も、男の悪い部分も学ばされた。
 姉ちゃんが紹介したときは、話合わせろって脅しが瞬時に来て、お互いに「初めましてー」を交わしたけど。実は、姉ちゃんより仲がいいし、琉生《るい》さんの前の方が、弟に戻ってしまう。
「確かに。今は朱音《あかね》がいれば、何よりも幸せだね。……おい、ぞわっとした顔してこっち見るな」
「だって、あの琉生《るい》さんが…、寒気っ‼」
 両腕を両手でこすって、体を温めるしぐさをすると、優しい笑みを浮かべた琉生《るい》さんが、「今のお前も、そんな感じだよ」と残して、玄関の中に入る。
 俺も、出会ったんだ。
 琉生《るい》さんを変える姉ちゃんのような存在に。
 居酒屋のときは、女に困ってないって、もちろん本心だし、姉ちゃんにはいってないけど、遊ぶ女はまだそろっていたから。
 性欲処理ぐらいならほかでもできるって高を括ってたんだけど…。
 どこで恋に堕ちるなんて、読めないもんだよな。
「碧斗《あおと》、次も俺が運んだ方がいい?」
 玄関を開けて、俺の今の様子を確認してくれる。
「…落ち着いたから、大丈夫。俺が運びます。琉生《るい》さんは中にいてあげて。姉ちゃんも意外とびびりだから」
「ん、わかった。次は碧斗《あおと》頼むな」
「はい」
 俺と茉由《まゆ》さんは、まだ始まってもないから。
 隣人のことも、完全に終わらすまでは、まだ時間をかける。
 今日のことは、隣人から茉由《まゆ》さんにできる最後の挨拶にすぎない。
 本当の解決が済んだとき、茉由《まゆ》さんが俺を見てくれるよう、頑張るね。
 茉由《まゆ》さんに、手加減するつもり、一切ない。
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