6000人の入居者と1000人の大家さんと接してきた私

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賃貸不動産管理会社に勤めている私の業務の一つの「退去立会い(敷金精算業務)」は、入居者負担分・オーナー(大家さん)負担分を分けるとてもシビアな業務です。

この退去立ち合い業務は、私の会社みたいに、自社の社員が行っている場合と、外部のリフォーム会社等にアウトソーシングしているやり方があります。

この業務で一番大事にしている事は、「入居者でもなく、オーナーでもなく、会社でもなく、とにかく自分を守る」事です。

他の会社はどうか知りませんが、私の会社では、入居者負担分を1円でも多くとったら評価が上がる なんて事は1ミリもありません。もちろん逆も然り。むしろハウスクリーニングのみの精算で終えたいとさえ常々願ってます。

ここで、ちょっと余談ですが。お部屋をチェックする側の視点のお話し。

退去立会いのお部屋に入って、いつもお世話になってます って笑顔で入居者さんに挨拶しながら、入居者さんに気付かれないように、まずは、一瞬で、するどい眼光で、見える範囲でお部屋をぐるっと一度見渡します。

その時に、視界の中に、例えば、壁に穴が開いてたり、破損個所等を見つけてしまった瞬間は、 あちゃー ってものすごくがっかりな気持ちなる瞬間です。(費用負担のお話をするのは、こちらも気が引けるから)

これらは、私がお部屋に入室して、入居者さんがいらっしゃる所まで近づいて、よっこいしょっ と私が持ってきた荷物を床に置く までの自然な一連の動きの間の出来事です。その後に、じゃぁ、これからお部屋を見させて頂きますね。と言うのですが、実は玄関に入った瞬間から見える範囲は既に、するどい眼光モードになっています。という余談でした。

さて、本題に戻って。
どんなに公平公正にジャッジしたところで、文句を言う人は入居者でもオーナーでもいます。

間に挟まれて、ノイローゼ気味になって辞めていった人も数多く見て来ました。私も最初の頃は、胃を痛めて、食事もできないくらい病んだ時もありました。

私がこんな神経をすり減らす仕事を15年以上も長く続けられてきた理由は、自分自身を守ってきたからだと客観的に分析してます。

自分を守ると聞くと、消極的な言葉に感じるかもしれませんが、自分自身を「平常」に保つ事が出来るのは、結局自分しかいないのです。会社も守ってくれません。

「自分を守る」って結局何をしてきたかというと、
自分がジャッジした内容に、客観的根拠を持つ事です。それだけです。双方に何を言われても、論破できる程の根拠を常に持つようにしてます。

過去の判例や、ガイドライン等を何度も熟読して、先輩、上司等にも相談したり、数多くの入居者やオーナーと議論を何百回と繰り返してきて、理論武装という名の鎧を身に着ける事が出来るようになりました。

一つ、補足をさせて頂きますが、決して私の考えを100%押し通す事ではありません。そんな傍若無人な人間ではありません。客観的事実客観的思考を元に、あくまでも、入居者(又はオーナー)さんと話し合いをして、言い分、状況等をヒアリングして、負担内容の変更や譲歩をして、様々な状況に応じて、話し合いを経て、精算結果をお伝えしております。

なので、この業務に関しては、私はどちらにも忖度せずにやってます。自分自身を「平常」に保つ為に。

退去立ち合いの所要時間は、10分~1時間前後。平均的に30分くらい。私の会社の場合は、その場で1時間前後かかる場合は、間取りが広い場合か、精算内容に折り合いがつかない場合。

私のゴールは、この敷金精算業務の次のステップの、お部屋のリフォームにあります。そこでどんなお部屋にしようか考える事が楽しくてこの仕事を続けています。間取りを変更しよう、アクセントクロスを使おう、対面式キッチンにしよう、床材を洒落たやつを使おう etc・・・最終ゴールは、入居したいと思わせるお部屋にする事です。
 でも、築浅物件とかで、お部屋の設備もすでに整っていて、お部屋も比較的綺麗だと、リフォームって言ってもほとんどやることがないから……それでいうと、モチベーションが一切なくなるから、なおさら、敷金精算業務も、何事もなく終えたいって思うんです。
そんな様なお部屋で、するどい眼光モードで、破損個所なんかを見つけちゃった日は、両ひざを床につけて顔を覆いたくなります。


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