日曜の夜、また眠れなかった
日曜の夜、スマートフォンをスクロールし続けている。転職サイト、キャリアの記事、「休職からの復帰体験談」、「退職して後悔したこと」。気がついたら2時間が過ぎている。画面を閉じて、また開く。
何かを決めなきゃ、という気持ちはある。でも、何も決まらない。頭の中がうるさいのに、何も進まない。そういう夜が、もう何週間も続いている。
ナオミさん(30代前半、事務職)はそんな状態が半年続いていた。休職して3ヶ月。体はだいぶ楽になってきた。でも、頭の中だけがずっとグルグルしていた。朝起きると、「今日こそ何か決めよう」と思う。でも、夜になると、また何も決まっていない。夜中に目が覚めて、胃のあたりが重い感じがした。
「まじめにやれていない自分がダメなんだろう」と思っていた。でも実は、そうじゃなかった。
不安で動けない状態は、メンタルの弱さとはまったく関係のない話だった。
頑張れば頑張るほど、出口が遠くなる理由
これは、汚れた布でガラスを拭いているようなものだ。拭けば拭くほど、汚れが広がる。
ナオミさんがやっていたこと——情報収集、体験談を読む、転職サイトで求人を眺める——これらは全部、「汚れた布でガラスを拭く」に当たる。悪意があるわけじゃない。むしろ、真剣だからこそやっている。でも、やればやるほど、混乱が深まる。
なぜこうなるのか。実は、かなりシンプルな構造がある。ただ、それは自分一人では気づきにくい。自分の目で自分の目を検査するようなものだからだ。
僕の話をしよう。
製造業の会社に入って10年以上経ったころ、ある時期が本当にきつかった。朝5時半に出勤して夜9時に帰る。そういう日々が何年も続いた。体重は1年で10キロ落ちた。夜は、お粥しか食べられなかった。胃腸がずっとおかしかった。病院に行ったら「ストレスですね」と言われた。まあ、知ってた。
でも、辞められなかった。
リーマンショックの時代に就職した自分には、「仕事を失う=ホームレスになるか、自殺するか」という感覚が、どこか深いところに刻まれていた。今考えると極端だ。でも、そういう感覚は簡単には消えない。だから、体がギリギリでも、出勤し続けた。
そのころ、「なんとかしなきゃ」と思ってコミュニケーション教室に通った。自分を変えようと思って、セミナーに行った。本も読んだ。しかし、半年後にはまた同じところに戻っていた。努力が、間違った方向に向かっていたからだ。
間違ったフォームで素振りを1000回やっても、間違ったフォームがうまくなるだけ。
じゃあ、どうすればいいのか。これについて、ここからが大事な話になる。
「動けなかった人」が変わった瞬間
ケンジさん(30代後半、メーカー勤務)は、1年半近く転職を「考え続けて」いた。転職サイトに登録して、エージェントと何度か話した。でも、応募はできなかった。毎週日曜の夜になると、胸のあたりがざわついた。「このままでいいのか」という声がうるさくて、でも何も決められなかった。
変わったのは、ある気づきがあってからだった。
「自分が何に不安を感じているのか、整理できていなかったんです」とケンジさんは言った。不安が全部ひとつの塊になっていた。「転職」「お金」「今の会社」「将来」「年齢」、全部が混ざって、大きな霧みたいになっていた。
自分が「無意識にやっているパターン」を、誰かと話しながら言葉にした。それだけだった。対処法を学んだわけでも、メンタルを鍛えたわけでもない。ただ、自分のパターンが見えた。それだけで、行動が変わり始めた。
3ヶ月後、ケンジさんは転職活動を始めた。週に1〜2件、応募を出した。以前は「どの求人を見ても気が重かった」と言っていたのに、「これなら試せそう」と思える求人が増えた、と話してくれた。
ユカさん(20代後半、休職中)も似たようなケースだった。休職して4ヶ月、「復職か退職か」をずっと考えていた。ずっと眠れなくて、朝の目覚めが怖かった。
半年後、彼女は退職を選んだ。年収は一時的に下がった。それでも「決められた」ことで、毎朝目覚めたときの胃の重さが消えた、と言った。「決断に自信が持てた」というよりは、「自分で決めた」という感覚が持てた、ということらしかった。
この2人に共通しているのは、「答えを見つけた」のではなく、「自分のパターンに気づいた」ことだ。
この人たちは、たまたま出会えただけだ。一人でこれを見つけるのは、かなり難しい。いや、ほぼ無理だと思う。
「情報収集で不安を減らそう」が、逆効果になっている理由
ここが一番大事な話だ。
多くの人が今やっていること——情報収集、体験談を読む、SNSで似たような悩みを持つ人のアカウントをフォローする——これらは、不安を「解決」しようとする行動だ。でも実は、これが不安を育てていることが多い。
「もっと調べれば答えが見つかる」→調べれば調べるほど矛盾する情報が増える→混乱する→また調べる。このループにいる限り、不安はゼロにはならない。むしろ、情報を取れば取るほど「不安の材料」が増える。
「自分を変えようとする」→変わらない自分に絶望する→自己評価が下がる→もっと不安になる。こういう構造もある。
「なんとかしなきゃ」と焦って行動する→失敗する→「やっぱりダメだ」と確信が強まる→さらに動けなくなる。
これは一人で抜けるのが難しい。問題のパターンの中にいる人は、そのパターン自体が見えない。見えないから、対処法も的外れになる。
僕自身、3年以上こういうループを繰り返した。コミュニケーション教室に3年通い、年間40〜50万円かけた。自分を変えようと本を何十冊も読んだ。その間も、体はボロボロだった。
出口があることは、ずっと気づけなかった。一人でいる限り、パターンの外には出られなかったから。
正直に言うと、僕は医師じゃない。薬を出せないし、診断もできない。「相談したら100%うまくいく」なんてことは言えない。途中でやめた人もいる。相性が合わなかったこともある。
ただ、こういうことは言える。
50分の相談の中で、「自分が不安に感じていること」を言葉にして、整理する作業をする。「緊急度が高いもの」「そうじゃないもの」に分けていく。そうすると、50分後には、ぼんやりした霧みたいだったものが、少し輪郭を持ち始める。「今すぐやるべきことはこれだけだ」が見えてくる人が多い。全部解決するわけじゃない。でも、何から手をつければいいか、が見えると、少し息ができるようになる。
1回話しただけで劇的に変わる人は、ほぼいない。でも、「自分のパターンが少し見えた」という感覚は、多くの人が最初の相談で持ち帰っている。
合わない人には、向かない。でも、この記事を読んでここまできた人は、たぶん何か引っかかるものがあったと思う。
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おわりに
不安がゼロにならないのは、弱さのせいじゃない。そういう構造の中にいるから、だ。
僕の場合、「動けない」まま3年以上過ごした。体重は落ち続けた。夜はお粥しか食べられなかった。何かを変えようとするたびに、もとに戻った。
あの時間、全部が無駄だったとは言わない。でも、正直に言うと、もっと早く出口に気づきたかった。3年のうち少なくとも2年は、一人で抱えなくてよかった時間だと今は思う。
どうするかはあなた次第だ。ただ、一つだけ。一人で抱えている時間は、思っているより長い。
🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
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