"給料は我慢の対価"だと思っていた

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この記事はフィクションですが、カウンセラーは実在し個人カウンセリングを提供しています

クライエント: ユミコ(女性)
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休職3ヶ月目の違和感

ダイキ「今日はどんなことを話したいですか?」
ユミコは少し考えてから、ゆっくりと口を開いた。
ユミコ「最近、変なことを考えるんです。休職して3ヶ月経つんですけど...なんていうか、仕事のことを考えなくていい生活って、こんなに楽なんだって」
彼女の声には、安堵と同時に、どこか罪悪感が混ざっているように聞こえた。
ダイキ「楽、なんですね」
ユミコ「はい。朝、目が覚めても胃が痛くないし、日曜の夜に憂鬱にならないし。でも...」
彼女は言葉を濁した。
ダイキ「でも?」
ユミコ「でも、それっておかしいですよね。働くのって当たり前のことなのに、働かなくて楽だって思うなんて。私、社会人として終わってるんじゃないかって」
沈黙が流れた。ユミコは膝の上で手を握りしめている。
ダイキ「ユミコさんにとって、働くってどういうことでしたか?」
「我慢すること」が仕事だった
ユミコ「どういうこと...ですか」
彼女は少し戸惑ったような表情を見せた。おそらく、そんなことを聞かれたのは初めてだったのだろう。
ユミコ「えっと...お金をもらうこと、ですかね。生活するためにしなきゃいけないこと」
ダイキ「お金をもらうために、何をしていましたか?」
ユミコ「営業です。法人向けの。新規開拓がメインで...」
彼女は言葉を探すように天井を見上げた。
ユミコ「正直、毎日きつかったです。断られるのが怖くて、でも営業目標があって。上司には詰められるし、お客さんには冷たくされるし。でも、それが仕事だから我慢してました」
ダイキ「我慢、ですか」
ユミコ「はい。仕事って、我慢してするものじゃないですか?」
彼女はそう言い切った。まるで、それが絶対的な真実であるかのように。
ダイキ「ユミコさんは、そう思っているんですね」
ユミコ「...違うんですか?」
少し驚いたような表情で、彼女はこちらを見た。
ダイキ「どうでしょう。ユミコさんの周りに、仕事を楽しんでいる人はいましたか?」

気づかなかった「別の働き方」

ユミコは少し考え込んだ。
ユミコ「いたかもしれないです。同期の中には、楽しそうに仕事してる人もいたような...」
ダイキ「その人たちは、どんな風に違いましたか?」
ユミコ「うーん...なんだろう。あ、でも、あの子は企画部だったから。営業じゃないから楽しめるんだって思ってました」
ダイキ「営業は楽しめない?」
ユミコ「だって、営業って...」
彼女はそこで言葉に詰まった。しばらく沈黙が続いた後、小さな声で続けた。
ユミコ「...私が、営業を楽しめなかっただけ、かもしれないです」
その言葉を口にした瞬間、ユミコの表情が少し変わった。
ダイキ「今、何か気づきましたか?」
ユミコ「なんか...私、最初から『営業=つらいもの』『仕事=我慢するもの』って決めつけてたのかもしれない。だから、楽しもうとも思わなかったし、どうしたら楽しくなるかも考えなかった」
彼女の目に、うっすらと涙が浮かんでいた。
ユミコ「5年間...ずっと我慢してたんだ、私」

お金は「我慢の対価」じゃなかった

ダイキ「その5年間、ユミコさんはどんな気持ちで給料をもらっていましたか?」
ユミコ「どんな気持ち...」
彼女は手で涙を拭いながら、考え込んだ。
ユミコ「なんていうか...『これだけ我慢したんだから、これくらいもらって当然』みたいな感じでした。でも、いつも足りない気がしてて」
ダイキ「足りない?」
ユミコ「はい。どれだけもらっても、『こんなにつらい思いしてるのに、この金額?』って。だから、もっと給料高いところに転職しようとも思ったし...でも、転職先も結局同じなんじゃないかって思って動けなかった」
ダイキ「給料は、我慢の対価だと思っていたんですね」
ユミコ「...そうです。ずっとそう思ってました」
ダイキ「お客さんは、ユミコさんの我慢にお金を払っていたんでしょうか?」
その質問に、ユミコは固まった。
ユミコ「え...」
ダイキ「お客さんは、何に対して契約してくれたんでしょう?」
ユミコ「それは...私たちの商品が、お客さんの課題を解決できるから...」
彼女は自分の言葉に、はっとした表情を見せた。
ユミコ「あ...お客さんは、私の我慢じゃなくて、商品の価値にお金を払ってたんだ」
ダイキ「そうですね」
ユミコ「じゃあ、給料って...」
ダイキ「何の対価だと思いますか?」
ユミコ「会社や、お客さんに...価値を提供したことの、対価?」
彼女の声は震えていた。

5年間、見えていなかったもの

ユミコ「でも...じゃあ、私、何してたんだろう」
彼女は両手で顔を覆った。
ユミコ「5年間、ずっと我慢することに必死で。お客さんのことも、本当の意味では考えてなかったのかもしれない。どうやったら価値を提供できるかじゃなくて、どうやったら契約取れるかしか考えてなかった」
ダイキ「それに気づいた今、どんな気持ちですか?」
ユミコ「悲しいです。もったいないことしたなって。でも同時に...」
彼女は顔を上げた。目は赤く腫れていたが、どこか晴れやかな表情だった。
ユミコ「ちょっと、ホッとしてるんです。働くのが怖かったのって、『また我慢しなきゃいけない』って思ってたからで。でも、働くことって、我慢することじゃないんですよね」
ダイキ「そうですね。働くことは、どんなことだと思いますか?」
ユミコ「うーん...まだうまく言えないけど...誰かに価値を届けること、かな。それで、ありがとうって言ってもらえて、その対価としてお金をもらう」
彼女は少し考えてから、付け加えた。
ユミコ「それって、我慢しなくてもできることですよね。っていうか、我慢してたら、いい価値は提供できないのかも」

聞こえてきた「内なる声」

ダイキ「ユミコさん、これから、どうしたいですか?」
ユミコ「正直、まだ分からないです。営業に戻るのか、別の仕事を探すのか」
ダイキ「分からない、んですね」
ユミコ「はい。でも、一つだけ分かったことがあって」
彼女はしっかりとこちらを見て言った。
ユミコ「もう、我慢するためだけに働きたくないです。次に働くときは、ちゃんと考えたい。私は誰に、どんな価値を届けたいのか。それで、その価値を届けるために、私には何ができるのか」
ダイキ「いいですね」
ユミコ「実は最近、気になってることがあるんです。休職中に、近所のパン屋さんに通うようになって。そこの店員さんがすごく良い人で、パンの説明とか、すごく楽しそうにしてくれるんです」
彼女の表情が、少し柔らかくなった。
ユミコ「あの人、お客さんのことよく見てるんですよ。『今日は疲れてそうだから、このパンがおすすめです』とか言ってくれて。で、そのパンが本当においしくて...」
ダイキ「それを見て、どう思いましたか?」
ユミコ「ああ、これが価値を届けるってことなのかなって。別に難しいことじゃなくて、相手のことを考えて、相手が喜ぶことをする。それだけなのかもって」
ダイキ「ユミコさんは、誰を喜ばせたいですか?」
ユミコ「...まだ、分からないです。でも、今は焦らなくてもいいかなって思えるようになりました」

これから歩む道

セッションの終わりに、ユミコはこう言った。
ユミコ「ダイキさん、今日話して、すごく楽になりました。ずっと『早く働かなきゃ』『このままじゃダメだ』って焦ってたんですけど、その前に考えることがあったんですね」
ダイキ「どんなことですか?」
ユミコ「私にとって、働くってどういうことなのか。何のために働くのか。そういう、基本的なこと」
彼女は笑顔を見せた。休職して初めて見せる、本当の笑顔だった。
ユミコ「これから少しずつ、自分と向き合ってみます。給料は我慢の対価じゃないって分かったから、次はちゃんと、自分が届けたい価値を見つけたいです」
それから2ヶ月後、ユミコから連絡があった。彼女は前の会社を退職し、今はキャリアカウンセラーの資格取得を目指して勉強を始めたという。
「自分と同じように、働く意味が分からなくなってる人の力になりたい」
そう話す彼女の声は、以前とは全く違う、力強いものになっていた。

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