相手の発言に対して、つい「でも」と言ってしまう。
そういう人も世の中にはいます。電話相談ではこれが口癖になっている人が意外といるな、というのが私の経験です。
前置きしておきますが、口癖も含めてその人の個性です。良いも悪いもなく、「そういう人」というだけ。だから「『でも』って言うのは良くないよ」というお話ではないことはご理解くださいね。
たとえば以下のような会話があったとします。
A「いやーやっぱさ、大谷ってピッチャーとしても世界最高だよね」
B「でも山本由伸もすごくない?」
A「ああ…うん…」
この二人のやり取りがなんとなく噛み合っていないの、わかるでしょうか。単に「Bが『でも』という言葉を使って否定から入ったからダメ」というわけではなくてね。
そもそもAの発言の背景には「なんとなく大谷の投手としてのすごさについて語りたい」という意図があります。本当に世界最高かどうかを議論したいわけではなく、Bと一緒に「そうだよねー」という実のない話をしたいだけ。
なんとなくそういうときってありますよね。そして今回の話題が大谷についてだったということ。本当に世界最高のピッチャーであるかについて、そこまで真剣に話したいわけではありません。
しかしBは相手の発言に反対する形で返事しています。Bの言い方は「世界最高のピッチャーが誰か」という議論を深めたいという趣旨。ここで「なんとなく実のない話をしたいだけ」というAとスタンスが噛み合っていないことになります。
「なんとなく共感できる話をしたい、会話を通して心地よい時間を共有したい」と思って気が緩んでいるAと、議論モードのB。単純に「でも」という言葉の良し悪しというよりも、互いの会話の目的が異なっていることがコミュニケーションのズレに繋がっています。
これは男女の会話でも見られること。
たとえば仕事の愚痴や悩みをただ聞いてほしいだけの女性と、「でもそれって君にも原因があるんじゃない?」とか言っちゃう男性とか。
逆に男性が得意気に自慢話をしたいだけのときに、女性が「でもさ」と割って入ってしまうこともあるかもしれません。
結局、男女ともに「なんとなく話したい・聞いてほしいだけ」という瞬間はあるものです。
最初にお伝えしたように「でも」という口癖もその人の個性です。
だからそれも含めて尊重されるべきだと思っています。そのうえで「毎回、相手との会話がギスギスしたものになってしまう」「相手から『俺たち・私たちは気が合わないね』と言われてしまう」という問題があって改善したいのであれば、会話に手を加えるのもアリです。
なにも「今後は『でも』という言葉を封印して相手の言うことをすべて肯定してあげましょう」という極端なことではありません。「でも」は使ってOKです。
ただし相手の言葉に反射的に「でも」と言ってしまうと、これまでと同じになってしまいます。だから間に一度、共感の言葉を入れましょう。
A「いやーやっぱさ、大谷ってピッチャーとしても世界最高だよね」
B「んーまあね。でも今年は山本由伸もすごかったよね」
A「まーたしかにね」
冒頭の例と違って、今回はBの返事の初めに「まあね」を付け足しています。これだけですが「『まあね』という言葉を使って共感の態度を示した」うえでの意見なので、ギスギスっぽさは丸くなっています。
Aはもともと「仲の良い人と共感できる会話をしたい」というのが目的なので、たった一言でも「まあね」という共感が入っていれば、一定の満足感は得られています。
もしカップルで口論になってしまったときでも、「でも俺は・私は」とすぐに言い返すのではなく、「あなたはこう考えてるわけだよね、それはわかる。でもね」とワンクッション入れたほうが、あとで「私たち平行線だから別れよう」と言われる確率は低くなります。
慣れないうちは「『でも』の前に『まあね』をつける」と覚えておけばいいのではないでしょうか。
つまりどちらの主張が正しいかという話ではなく、「相手と意見が違うときでも相手のことを尊重する気持ちがあるか」という話です。尊重したうえで「でも私はこう考えますよ」という言い方なら大きなトラブルにはなりません。
だって電話相談は色んな考えのお客様がお越しになるところで、私と同じ考えの人なんてめったにいませんからね。それでも(一応は)うまくやれているのは、意見が違っても真っ向から否定しないよう、自分なりに心がけているからです。
だからそういう意味では電話相談でも使えるテクニックといえるかも。
・「でも」も含めてその人の個性
・相手との関係を続けたいときは共感の言葉を入れればOK
・相手に共感したからって自分が否定されるわけじゃないよ
・とりあえず迷ったら「まあね」を使えばいいよ
・あんなに投げまくった山本由伸の腕がもげてないのが不思議
そんなお話でした。