投資不動産の減価償却費の計算方法

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法律・税務・士業全般
 投資用不動産を購入して初めての確定申告を控えている方は、ぜひこの記事をお読みください!

 確定申告においては減価償却費を計算する必要があります。

 この計算をする前提として、取得した建物価格を把握する必要があります。ただ、不動産の購入にあたっては、建物と土地とがそれぞれいくら、と明示されない場合が多く、どうやって把握するかが問題となります。

 実例を踏まえて、一般的な建物価格の把握方法と、減価償却費の計算方法を簡単に説明します。

 実例:区分所有マンション(中古資産)
 構造:鉄筋コンクリート造
 購入価格:2,000万円
 建築年月:2000年4月
 取得年月:2020年6月(建築年からの経過年数20年2か月)
 区分所有建物面積:20.00㎡
 土地固定資産税評価額:500万円
 建物固定資産税評価額:300万円

1 一般的な方法(固定資産税評価額按分法)
 一般的には、取得資産の土地・建物それぞれの固定資産税評価額の比率で案分します。

【土地価格】
 2,000万円 × 500万円 ÷ (300万円+500万円)= 1,250万円
【建物価格】
 2,000万円 × 300万円 ÷ (300万円+500万円)= 750万円

 取得資産の耐用年数は31年(※1)となります。

 31年の定額法の償却率は0.033(国税庁:減価償却資産の償却率等表より)なので(※2)

 750万円 × 0.033 = 247,500円

が1年分の減価償却費になります。

 減価償却費は経費として収入から控除できますので、高ければ高いほど税金は安くなります。

 それではほかに計算方法はあるのでしょうか?

2 その他の方法
(1)建物の標準的な建築価額表から建物価格を算出する方法
 国税庁が出している「建物の標準的な建築価額表」を使って建物価格を算出します。

 計算は複雑なので割愛しますが、その性質上、建物価格が過小に算出される傾向があり、結果として計上できる減価償却費が小さくなりますので、投資用不動産の減価償却費の計算には不向きです。(※自用マンションの売却の際の譲渡所得の計算では、逆に有利な計算方法となります)

(2)契約書に記載される消費税額から算出する方法
 契約書に消費税額が記載されていれば、そこから建物価格を逆算することができます。

【契約書に記載の売買価格の例】
 2,000万円(うち消費税80万円)

 「消費税率が10%だから、消費税額は200万円なんじゃないの?」と思うかも知れません。これは消費税について建物は課税取引、土地が非課税取引となることから、2,000万円の建物内訳価格の10%が消費税となっているためです。

 建物価格 × 10% = 80万円
  → 建物価格 = 80万円 ÷ 10% =800万円

 ただし、投資用不動産を購入する際に消費税額が記載されるケースはあまりありません。不動産仲介業者を通した個人間取引の場合、そもそも消費税が課税されないので、消費税額を契約書に記載する意味がないからです。

(3)不動産鑑定士による査定で決定する方法
 この方法が一番性格で確実な方法となります。
 また、この方法によれば、一般的に認められた「固定資産税評価額按分法」よりも建物価格が高くなる可能性があり、その結果、減価償却費を多く計上でき、節税効果が期待できる可能性があります。

【不動産鑑定士による査定でで決定する方法の例】

 土地価格:1,000万円
 建物価格:1,000万円

 この場合、31年で定額法により償却する場合、

 1,000万円 × 0.033 = 330,000円

が1年分の減価償却費となり、固定資産税評価額按分法の247,500円より82,500円多く計上できることになります。
(※あくまで鑑定評価額が按分法より建物価格が高い場合の例。必ず按分法より建物価格が高くなるわけではないのでご留意ください。)

 仮に給与所得と損益通算するとして、所得税・住民税率が合わせて45%だとすると、1年間に37,125円、10年間で371,250円もの節税効果が出ることになります。

 ただ、この方法が一般的に採用されることはまずありません。
 なぜなら鑑定評価書の取得にかかる費用が安くないからです。

 鑑定評価事務所の数がそれほど多くなく、あまり競争が働かない部分もあり、一般的な鑑定評価書の相場は1件30~50万円と言われています。
 仮に簡易査定するにしても、10万円はかかると言われているので、節税効果を考えてもあまりペイしないというのが実情のようです。

 もし、知り合いに不動産鑑定士がいて格安で簡易査定書を依頼できる状況ならば、この方法の採用は一考の価値があると思います!

(※1)
 税法で定められている耐用年数(法定耐用年数)は鉄筋コンクリート造の住宅用であれば「47年」になります。

 そして中古資産で、法定耐用年数の一部を経過した資産 については、その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数となりますので(※タックスアンサーNo.5404)

 47年 - 20年※ +(20年※ × 20%)= 27年 + 4年 = 31年

となります。

※この中古資産は新築から20年2か月経過していますが
 20年2か月 = 20年+2か月/12か月 = 20.17年
 と計算する必要はありません。
 下記※2で記載するとおり、最終的には償却率で切り上げ処理するため、どちらでやっても計算結果は変わりません。

(※2)
 31年で100%償却になるように設定されています。
   1÷31年=0.0322… → 0.033(小数点第4位切り上げ)
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