ツイノベ 336-340

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知らない番号から電話がかかってきた。無視をしているとやがて「他の女に浮気しようとしてるでしょ。あなたが私の体を触ったり、撫でたり、指でこすったりする度に、私の体は熱くなるのよ」とメールが届く。どうして自分の連絡先を知っているのかこわくなり、早く機種変更しようと店に急いだ/№336 携帯電波

「私が死んだらどうする?」と妻が聞いてくる。悲しそうな妻の服を脱がす。「私が死んだらどうする?」背中の扉を開ける。「私が死んだらどうする?」配線の不具合を直した。「ありがとうね」機械になってまで生きたくないという妻の願いを、蔑ろにした僕をどうか、どうか、許さないでほしい/№337 アイオライト

「今日の天気は晴れのち人でしょう」と、病院の待合室に座っているとニュースが流れる。診察室からは「浮力検査の結果ですが、以前よりも体が軽くなっているので重力剤を出しておきます」と聞こえてきた。浮力を制御できない人達は空へ飛ばされていく。やがて、空から大量に人が落ちていった/№338 浮力検査

「タンがすごく安かったの」と母親がにこやかにタンを焼く。僕はこのコリコリとした感触があまり好きではない。聞けば今日はエンマ様に嘘をついて、舌を抜かれる人間が多かったそうだ。母親から味を聞かれて「おいしい」と答えようとすると、なぜか「おーひー」と舌ったらずになってしまった/№339 舌を噛む

その夜、国の至る場所で花火が上がる。夜空には光と音が広がるばかりで姿は見えなかった。誰もが色のない花火を探して空を眺める。頼りのない透明な合図だ。下ばかり向いて歩いてきた日々が、意味が。今、多くの人が上を向いて、標として浮かぶ月をただ、ただ言葉を飲み込んでは見つめていた/№340 収束する光

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