夏の暑い日のこと。
朝、まぶしい日差しで目が覚めると、横には彼女が静かに眠っていた。
寝息ひとつにも安心させられて、
「この人が隣にいる」というだけで胸の奥があたたかくなる。
そっと横顔を見つめ、軽くほっぺにキスをすると、彼女がゆっくり目を開けた。
「おはよう。今日、天気いいね」
「ほんとだね。仕事行くの……だね」
ふと僕が言った。
「海、行こっか?」
その一言に、彼女は嬉しそうに「うん」と微笑んだ。
急いで支度をして、2人でバイクにまたがる。
彼女はピンクの浮き輪を体に巻いていて、それがなんだか可愛かった。
午前の風はまだ少し涼しくて、海岸線を走るたび潮の匂いが広がる。
後ろから聞こえる彼女の笑い声が、僕の胸をやさしく震わせた。
海に着くとレジャーシートを敷き、彼女の肩にオイルを塗る。
太陽の熱で膝がじりじりしてきたけれど、
それよりも彼女が楽しそうに笑う顔のほうがずっと大切だった。
やがて2人で海を眺めながら並んで座った。
波のリズムと風の匂い、太陽のまぶしさ。
全部が心の奥に染みこんでいくような時間だった。
ふと横を見ると、彼女は穏やかな顔で海を見つめていた。
その横顔があまりにもきれいで、僕はそっと手を重ねて
小さな声で「好きだよ」と伝えた。
彼女がこちらを見て、少し照れたように微笑む。
その瞬間、自然と体が動いて、
海の音を聞きながら、そっと優しくキスをした。
ただの“夏の日の一場面”なのに、
どうしてこんなに心が満たされるんだろう。
そんな気持ちになった。
売店で買った軽食を食べながら笑い合い、
昼になってまた海辺に寝そべる。
その時、ふと思う。
——このまま時間が止まればいいのに。
好きな人が隣にいて、同じ景色を見て、
同じ風の匂いを感じて、ただ一緒にいられる。
そんな当たり前の時間が、実は一番の幸せなのかもしれない。
帰り道、バイクで風を切りながら、
今日という日がずっと心に残るだろうなと思った。
午後には家に着いたけれど、胸の中ではまだ夏が続いていた。
あの日の夏に感じたあたたかさも、まぶしさも、
彼女と過ごしたあの瞬間も、
これから先ずっと忘れない。
僕の夏の日の思い出。