テレビCMやWeb CM、インフォマーシャル(商品やサービスを紹介する広告番組)の制作では、多くの会社やクリエイターが関わります。
広告主、制作会社、映像制作会社、ディレクター、カメラマン、出演者、ナレーター、ヘアメイク、スタイリストなど、多数の関係者が一つの作品を完成させます。
だからこそ、「口約束」で進めることは大きなリスクになります。
今回は、CM撮影・インフォマーシャル撮影に関する委託契約書を作成する際の重要なポイントについて解説します。
1 業務内容を具体的に定める
「映像制作を委託する」
これだけでは何をどこまで行うのかが分かりません。
例えば、
企画立案
シナリオ作成
絵コンテ制作
ロケ地の手配
撮影
編集
CG制作
テロップ作成
BGM・効果音挿入
ナレーション収録
納品形式
など、業務範囲は細かく定める必要があります。
また、
撮影日数
修正回数
修正期限
追加費用が発生する場合
も契約書で明確にしておきたいところです。
2 著作権の帰属
最もトラブルになりやすいポイントです。
映像には
映像そのもの
BGM
写真
イラスト
CG
ナレーション
など、多数の著作物が含まれています。
契約書で
著作権譲渡なのか
利用許諾なのか
利用地域
利用期間
二次利用の可否
を定めておかなければ、
「SNSでは使えるがテレビCMでは使えない」
「YouTubeにはアップできない」
という問題が起こります。
また、著作者人格権の取扱いも実務上重要になります。
3 出演者の肖像権・パブリシティ権
出演者がいる場合、
CMのみ使用可能
Web広告にも使用可能
SNS広告も可能
店頭サイネージも可能
など利用範囲を定めます。
さらに
使用期間
更新料
地域
海外配信の可否
まで定めておくことが望ましいでしょう。
近年はSNS広告への転用が非常に多く、この部分を曖昧にすると後から追加費用を巡る紛争になりやすくなります。
4 AIの利用について定める
近年急増しているのが生成AIの利用です。
例えば、
AIで台本を作成した
AIでナレーションを生成した
AIで画像を作成した
AIで映像編集を補助した
というケースです。
契約では、
AI利用を認めるか
どの範囲まで利用できるか
学習目的への利用は禁止するのか
第三者AIサービスへの入力を制限するのか
などを定めることが重要です。
企業によっては機密情報を生成AIへ入力すること自体を禁止している場合もあります。
制作会社側も広告主側も、この点について認識を共有しておく必要があります。
5 秘密保持
CM制作では、
発売前の商品
新サービス
価格戦略
販売計画
など、多数の機密情報に接します。
そのため、
NDA(秘密保持)
情報管理方法
関係者への共有範囲
撮影データの管理
契約終了後のデータ削除
なども定めるべきでしょう。
特にクラウド共有サービスや生成AIへのアップロードに関するルールは、現在では実務上重要な項目です。
6 成果物の検収
完成した映像を
「いつ」
「誰が」
「どの基準で」
検収するかを決めます。
例えば、
納品後7営業日以内
修正依頼は書面又はメール
期間内に回答がなければ検収完了
などを定めることで、納品後のトラブルを防ぐことができます。
7 撮影延期・中止への対応
屋外撮影では、
雨天
台風
地震
出演者の体調不良
感染症
などで撮影できなくなることがあります。
その際、
キャンセル料
日程変更
スタッフ費用
ロケ地キャンセル費
などを誰が負担するのかを決めておくことが重要です。
8 第三者の権利侵害
制作した映像が、
他社広告に酷似している
他人の著作物を使用している
無断で音楽を使用した
商標が映り込んでいる
などの場合、損害賠償問題へ発展する可能性があります。
契約では、
保証条項
権利侵害時の責任分担
是正措置
損害賠償
について整理しておく必要があります。
9 再委託
撮影では、
編集だけ外注
CGだけ専門会社
ナレーションだけ別会社
ということが珍しくありません。
そこで、
再委託の可否
再委託先への秘密保持義務
再委託先の管理責任
なども契約書へ盛り込むことが望まれます。
10 契約解除
広告制作は制作途中で中止になることがあります。
その場合、
完成済部分の費用
制作途中成果物
撮影済データ
著作権の帰属
を整理しておかなければ紛争になりやすくなります。
解除後のデータ利用や保管方法まで定めておくことが重要です。
まとめ
CM撮影・インフォマーシャル撮影の契約は、単なる「映像制作契約」ではありません。
著作権、肖像権、秘密保持、AI利用、検収、再委託、キャンセル対応など、多くの法的要素が複雑に絡み合っています。
特に近年は、生成AIを活用した企画・編集・ナレーション・画像生成などが一般化しつつあり、「AIを利用したかどうか」「AIで生成した成果物をどこまで利用できるのか」といった新たな論点も契約で整理しておく必要があります。
契約書は、トラブルが起きてから読むものではなく、トラブルを未然に防ぐための設計図です。
当事務所では、CM制作契約、映像制作契約、広告制作契約、インフルエンサー契約、肖像権利用契約、著作権契約など、広告・クリエイティブ分野の契約書作成・チェックにも対応しております。
事業内容に応じた実務的な契約書をご希望の方は、お気軽に南本町行政書士事務所までご相談ください。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本