2020年行政書士試験 講評

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法律・税務・士業全般
本試験お疲れ様でした。例年どおり、本年度の行政書士試験の講評を行っていきます。よろしければご覧ください。
また、この講評をたたき台に来年以降の試験を受験される方は、是非参考にしてください。
早速参りましょう。
○試験全体の講評
やや易
本年度は全体的に択一式(法令、一般知識)の難易度は易しかったという印象です。
この場合の易しいという基準ですが、2つあります。1つは過去問の派生的な問題が特に行政法、商法会社法、基礎法学で見られたことです。もう1つは、常識的に解答しうる問題がまあまああったということです。特に一般知識です。
ただ、派生的知識にしろ、常識的に判断しうるにしろ、普段の学習の中で、ただ上っ面だけ過去問を「結論」だけ覚えているような勉強法では、それこそ過去問を何十周やっても全く意味がないと思います。
その制度の存在意義、なぜそういう法律があるのかといったところが理解できて、その上で少し過去問から変えられた場合に、対処できる能力を問うているという点は、ここ3年くらい変わっていません。従って来年度以降も、それぞれの論点、条文、制度の意義を真に理解した上で、自分の頭で考えることができて、はじめて本試験は余裕を持って受けることができる、そう考えています。
その意味では、もう独学で市販教材のみで合格するのはかなり難しくなったという印象です。無理ではないと思いますが、要領を得ないで時間が通常よりかかってしまうという可能性があります。何らかの資格学校などを使い、人から教えてもらうのが手っ取り早いかと思います。資格学校についてはご自身の状況に合うもので、わかりやすいものであれば何でもいいと思います。当事務所も体験授業を設けていますので是非、ご受講ください。それでは以下、科目別解説、講評に移ります。
○科目別講評
1,基礎法学
これは2問とも取れた方は相当数いたのではないでしょうか?
よく出るパターンとしてのあまりなじみのない話ではなく、昨今割とよく聞くタイプの問題でしたので、できれば2問、最低でも問題1は正解しておきたいところです。
2,憲法
判例を素材にした問題が多いと行った印象ですが、近年の傾向としてはそのとおりですので特段驚きはありませんでした。
問題3については国語的なセンスでも解答可能ではないでしょうか。
問題4も表現の自由の内容規制、内容中立規制、検閲についてですが私のオンライン塾で学習した方にとっては余裕の問題でした。
問題5,6は統治ですが、2問とも国会からでした。2問とも過去問知識で対応可能でしたので、憲法は4問、最低でも3問確保は出来たかと思います。
といってもこれも例えば、内容規制がどういうもので、内容中立規制がどういうものというイメージをわかして、北方ジャーナルを含めた事前規制の判例などの正確な知識がないと、解けなかったのではないでしょうか。今後は憲法も捨てずにこういった問題に対応できるよう「理解をともなった勉強」をすることを勧めます。
3,行政法
問題8は総論からの出題です。これも国語的センス及び、定義の意味をしっかり理解している人にとっては、特に問題なく解答できたのではないでしょうか。
問題9~13は過去問の知識をベースに解答できます。
問題14~21もやや細かい条文知識がありましたが、きちんと▲(正解が出せない場合に保留にする)を使い、他の選択肢から解答できた方は問題なかったと思います。
問題22~24の地方自治法は難しかったと思います。
問題25の情報公開は条文知識から判断できますので、これも私のオンライン塾で指摘している、情報公開に関連する法令の条文で判断できたと思います。
行政法は合計16問は取って欲しいところでした。
4,民法
例えば問題27ですが、選択肢1については838条に規定があります。ただ親権という制度がどういうものなのか、管理権とは何かという点はやはり理解しておく必要はあります。条文に書いているといえばそうなのですが、これを知らなかった場合でも上記の親権の制度趣旨などが理解できていると解答できると思います。
問題28については、占有改定と即時取得という典型問題から派生して留置権、先取特権とからめて聞いてくるという形式でした。ただすべての選択肢に自信を持って解答することは難しかったと思います。
問題29は根抵当権、しかも根抵当権の元本、極度額という単純知識だけでは解答できず、さらに深い知識が要求されていた問題でした
抵当権との比較でも理解しておくことが必要でした。
司法書士を除く国家試験では根抵当権はあまり出題されませんので今年出題された以上、来年度の対策は簡単にしておきましょう。
問題30~33は時間がかかるやや複雑な問題でした。これも典型的な問題ではなく既存の知識を応用させて解答することが求められている問題でした。
難しいので、取れないこともあるかと思います。
問題34,35は典型知識ですので解答できると思います。
民法は少し難しかったので4問か5問正解していれば良いと思います。
5,商法会社法
問題36は運送ですが、これは知らない人もいることかと思います。ただ問題37以降は設立、自己株式、株主総会、公開会社と過去問でも問われていた範囲ですし、私の塾でも設立、株式、機関、事業譲渡だけやってくださいという指導をしていますが、それがそのまま生きたといった形です。
6,多肢選択式
こちらは全体的に点数が稼げたかと思います。問題41は有名判例の三井美唄からの出題でした。これも通常はしっかりやっているところですので、特に苦もなく解答できたと思います。
問題42は行政指導ですがド典型の問題でしょう。過去問、特に法令択一の知識が必要にはなりますが、これも得点出来たかと思います。
問題43も非常に馴染みのあるテーマです。法律上の争訟などはしつこいくらいに取扱うテーマですから問題なかったかと思います。
○一般知識
全体的に個人情報保護が3題で国語3題この両方で5問程度が得点出来る問題でした。出ている言葉もニュースで聞き馴染みのある言葉でした。
次に、政治経済、社会も比較的ニューズなどに取り上げられている問題ではあるので普段のアンテナの張り方がものをいった問題でした。
○記述式
さて問題の記述式ですがまずこれについては3題とも難しいと思います。その分択一が易しかったわけですが、択一で得点できなかった方は厳しいでしょう。
まず問題44ですが、被告適格は組合となります。国または公共団体所属でないために11条2項により組合そのものが被告となると考えます。ただ所属しているしてないの知識を有していない方も多いと思いますので、難しいところです。
認可を受けて、設立されという文言からこれがわかったということであれば解答できたのではないでしょうか。
出訴期間が過ぎているので、取消訴訟が使えない中での訴えとなり、(時期に遅れた抗告訴訟としての無効等確認という覚え方をしていると思います)無効等確認の訴えとなります。対象は換地処分です。
問題45
錯誤と思いきや、騙されたと問題にあることから、素直に読んで第三者詐欺で書くべきと思います。
内容的には錯誤でもよいので錯誤でもある程度は得点が入るかとは思います。
問題46
背信的悪意者の定義が問われているためこれをテキストで確認していない方には苦しかったと思います。ただ書き方は悩むところです。背信的悪意者とは第三者のポジションに付いているが、信義則でその保護の主張ができない人という意味を押さえていればなんとか解けたのではないでしょうか。
○以上です。
思考力を問う問題もあるにはありましたが、今まで通りやはり過去問を中心として「理解を伴った勉強」はもはや必須となっていると感じます。
字面だけ読む、なんとなく解答できるでは本試験では全く役に立ちません。

来年度受験される方はこれらを踏まえた対策をしなければなりません。
どうしてもお一人では難しいという方、ご安心ください。当事務所にお気軽にご相談ください。
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