地震の倒壊は貸主に責任があるのか

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 賃貸マンションの貸主の土地工作物責任についてです

地震によりアパートやマンションが倒壊した場合、家主は、被害者でありながら加害者になるかもしれないという事例です。

    阪神・淡路大震災により中古賃貸マンションの1階が押しつぶされ、借主が死亡した事案において、建物(築31年)に設計施工上の欠陥があって通常有すべき安全性を有しておらず、設置の瑕疵があるとして、築16年後に建物を取得した貸主の土地工作物責任を認めたが、媒介業者については、「軽量鉄骨コンクリートブロック造」を「鉄筋コンクリート造」と説明した誤りがあっても、相当因果関係がないとして、その責任を否定した事例 を紹介します。
(神戸地判 平成11年9月20日 )

 Aら4名は、媒介業者Y2の媒介で、貸主Y1から、神戸市東灘区のマンションの1階部分を賃借していたところ、平成7年1月の阪神・淡路大震災で同建物の1階部分が完全に押しつぶされ、死亡した。
 本件建物は、昭和39年に補強コンクリートブロック造として建築されたものを、Y1が昭和55年に取得して、賃貸に供していたものであったが、設計上構造計算に疑問があり、施工上も配筋、緊結に問題がある物件であった。また、登記簿上、本件建物の構造は、「軽量鉄骨コンクリートブロック造一部鉄筋コンクリート造3階建」となっていたが、Y2は、Aらとの賃貸借契約の際、「鉄筋コンクリート造3階建」と説明していた。
 Aらの親Xらは、本件建物に瑕疵があったとして、
(1)Y1に対し、安全な建物を賃貸すべき義務の債務不履行及び民法717条の土地工作物責任に基づき、また、
(2)Y2に対し、建物の構造について虚偽の事実を伝えたことによる債務不履行及び不法行為に基づき、総額3億334万円の支払いを求めた。

 Y1は、本件建物は昭和39年当時の建築基準法に適合しており、倒壊は震度7を超える地震という不可抗力によるもので、Y1に責任はないと主張し、また、Y2は建物の構造上の安全性についての調査義務はなく、表示を間違えたこととXらの損害の間に因果関係はないと主張した。

これに対して、裁判所は、次のような判断を下しました。

(1)本件建物は、設計上壁厚や壁量が不十分であり、また、施工上も鉄筋の量が十分でなく、壁と柱が十分緊結されていない等通常有すべき安全性を有していなかったから、本件建物には設置の瑕疵がある。
(2)本件地震は、現行の設計震度をも上回るものであったが、通常有すべき安全性を備えておれば、倒壊状況は大いに異なると考えられるから、Aらの死傷は、不可抗力によるものとはいえず、設置の瑕疵と地震とが競合して原因となっている。
(3)Y1の責任については、本件建物には設置の瑕疵があるから、土地工作物責任を負うが、本件倒壊は本件地震と競合したもので、地震への損害発生への寄与度は5割と認められるから、Y1は、本件建物倒壊により生じた損害の5割相当額及び弁護士費用について、損害賠償義務を負う。なお、債務不履行責任については、これが肯定されても土地工作物責任の額を超えないので、その責任の有無を判断しない。
(4)Y2の責任については、媒介業者は、特段の事情のない限り、建物の構造の安全性について調査義務を負わず、また、建物の構造の表示の誤りとAらの死亡との間に相当因果関係があるとは認められない。
(5)よって、Y1は、総額1億2,883万8,179円を支払え。

 本件は、築16年後に取得して、賃貸の用に供していたところ、築31年後に阪神・淡路大震災が起こって借主が死亡し、建築時の欠陥が判明して、貸主に土地工作物責任があるとされたものである。
 地震の寄与度が5割あるとされたが、貸主にとって厳しい判決である。
 貸主には、土地工作物責任により重い責任が課せられているのです。






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