正直な所、『のだめカンタービレ』を読んだ1周目の感想など覚えているはずがない。
おそらく「面白い」だとか、「ドラマとちょっと違う?」とか、その程度だっただろう。
しかし「また読みたい」と思ったのは、私が音楽に携わってきた者で、慣れやすかったからかもしれない。もっと単純な話かもしれない。
だが、それが鬱と闘病していた時期の私にとっての”セラピー”、つまり心理的療法になっていたのである。
心理的療法には様々な種類があるが、セラピスト側の基本理念として以下のものがある。
・信頼関係を形成する
・共感する
・受容する
(2015 川瀬正裕・松本真理子・松本英夫『心とかかわる臨床心理 基礎・実際・方法』)
以上の3点を私は『のだめカンタービレ』という漫画を通して、漫画の中のキャラクターたちに自己を投影して、自然と行っていたのではないかと考えている。
さらに、上の著書から引用すると、
”心理療法(psychotherapy 精神療法)と呼ばれるものには実に様々な種類があり, その数は心理療法家の数だけあると言われているほどである。分類方法もさまざまで, たとえば, 作用機序から分類すると, 表現的心理療法, 支持的心理療法, 洞察的心理療法, 訓練的心理療法などに分けられる。また用いられる手段により言語的か非言語的かという分類もある。期間では短期か長期心理療法か,あるいは対象の数により, 個人心理療法か集団療法かという分類もできる。”
漫画を何周も読んで自らの理解を深めることを心理療法としたとき、私は私自身の闘病生活が始まったのである。
この私が今までに述べた一連の流れの療法をひとまず、”漫画療法”としてみようではないか。
もちろん先駆者はいるが、このブログは格式張ったものではなく、私自身がクライエントとして整理するものとして書いているので、ご容赦願いたい。
自分自身で理解を深めると述べたが、もちろん自分の中だけで整理がつくはずもない。
私は現在も、とある病院でカウンセリングを受けている。
その先生に『のだめカンタービレ』の感想をなんとか言語化して、整理をしていた。
一人では決してできないことである。
鬱病を患っている人が最もしてはいけないのが、何事も一人で解決しようとすることだ。
上に書いた”信頼・共感・受容”を他人にされてこそ、自己肯定感を高め己を”信頼・共感・受容”できるのである。
だから、私は決して一人で『のだめカンタービレ』を漫画療法として成り立たせられたわけではない。これはとても大事なポイントである。
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突然専門的な話になってしまったが、以上のことは2周目以降からの話の土台となることである。
何故私がこのコラムを書こうと思ったのか。
まずは『のだめカンタービレ』の著者である二ノ宮知子先生に感謝し、先ほど述べたような漫画心理学と言われる部門の専門家の方々の意見も踏まえ、自身の考えを他者に伝えたいと、ずっと願っていたからである。
そして、あわよくば『のだめカンタービレ』以外にも、”漫画療法”に適した作品に出会いたいと思う。
このコラムを通して、何かの出会いを待っている。
次章は、「何故『のだめカンタービレ』が”漫画療法”に適しているか」について述べていきたい。
次章もどうぞよしなに。
以上
graphokulogist