人生は戦いなのか、それとも探求なのか
彼はよく言っていました。「競合と戦う」「税務署と戦う」「裏切り者と戦う」気がつけば、彼の口から出るのはいつも“戦い”の話ばかりでした。人生とはそういうものだ、と信じていたのだと思います。裏切りと裁判あるとき、会社を辞めるスタッフがいました。そのやめ方があまりに裏切りのように感じられて、彼は本気で裁判まで起こしました。あのときの気持ちはまっすぐでした。「正義を貫きたい」「不義を許してはならない」でも今になって思うと、その出来事は彼をさらに“戦う人生”へと追い込んでしまったのかもしれません。幼い頃の言葉彼の心の奥には、父の声が残っていました。「人生は戦いだ」子どもの頃から繰り返し聞かされたその言葉は、深く刻まれていました。生きることは戦うこと。勝たなければ意味がない。そう思い込んだまま大人になっていったのです。ある問いそんな彼に、私はふと聞きました。「あなたは、一体何と戦っているんですか?」その瞬間、彼は黙りました。「……何と戦っているんだろう」敵は本当に外にいるのか?問いかけをきっかけに、彼の中に少しずつ揺らぎが生まれました。敵だと思っていたものは、本当に外にいたのか。もしかしたら、自分の中の恐れや不安。「こうあるべきだ」という思い込み。その影を敵と呼んでいただけなのかもしれません。そのことに気づいたとき、彼の人生は「戦い」から「探求」へと、静かに方向を変え始めたのです。戦うとは何か戦うことは、誰かを打ち負かすことではありません。自分の恐れを乗り越えること不安や怠け心に向き合うこと守りたいものを守り抜くこと本当の戦いは、外の敵ではなく、自分の中の弱さや迷いと向き合うことなのだと思
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