サルスベリの花の咲くころ
『付き合っている男性には花の名前を教えるといい。その花を見るたびにあなたのことを思い出すから。』若いころこのような文章を読んだ覚えがあります。私のイメージですが、花の名前を教えるのは年上の女性です。年下の恋人は花の名前だけでなく、おしゃれなレストラン、ファッション、ベッドの作法まで年上の恋人に教わるのでしょう。女性は自分に夢中な恋人を愛しく感じながらも、この恋はそのうちに終わると冷めたところもあるのでしょう。だから恋人の心に入れ墨を彫るように美しい記憶を刻んでいくのです。恋人に教える花の名前は、バラやヒマワリではないでしょう。サルスベリ、さざんか、クチナシといった名前は聞いたことがあるけれど、どんな花かは定かではないというのがふさわしいように感じます。サルスベリの花と言って、すぐにどのような花か思い出せる人は多くないかもしれません。盛夏に咲く花です。庭木に多く植えられ、色はピンク、深紅、白などがあります。漢字では百日紅と書くように、花期は長いです。花屋で見ることはあまりないように思います。さざんかは初冬に咲きます。これも庭木に多く植えられ、街中で見ることが多い花です。クチナシは初夏に咲く白い花です。甘い香りがして、きょろきょろと見回すとクチナシの生垣だった、ということがあります。忙しくしていると見逃していますが、ふとその花を見かけたときに別れた恋人のことを思い出す…。小さな時限爆弾を仕込むように、花の名前を恋人に教えるのです。できることならば、その愛しい恋人と同じ時を歩んで「今年も庭のサルスベリが咲いたね」と言える未来を夢見てほしいと思います。そしてその願いが叶いますように。最
0