知らないから、踏み出せる
ココナラを始めたのは、私の「着物」の知識が誰かの役に立つのではと思ったからだった。テレビで見かけたあのCMでは、そう言っていた。あなたの知識や経験が、誰かの役に。私は迷わず、着物に関するサービスを出品した。でも、現実は違った。私のことなんか、誰も見てない。子供を育てていく以上、自分らしく働くということに、前から憧れていて。傍から見たら、私はもうそれを実現している。でも。私は違うところを目指している。着物の世界に入った頃、50も歳の離れた女性と出会い、私は強く憧れていた。その目は、姿勢は、いつも鋭く、他者を寄せ付けない。『着物を着る資格』があるのであれば、彼女はそれに相応しい。目を合わすことさえできなかった彼女が、いつしか私に託してくれた着物を。私はいつか、彼女のように着てみたい。子育てをしながら仕事をする。着物が好きというだけで飛び込んだ世界。言葉も知らない、漢字も読めない。着付なんて、もってのほか。来る日も来る日も、夢中になって勉強した。着物とは何か。帯とは何か。着付の仕方。大切な人と向き合う心。特別な1日を預けて頂く責任。古から未来を繋ぐ、伝統を。ブランクが出来るたび、この仕事を諦める事も考えた。でも、着物が好き。子供を最優先にする中で、仕事を最優先にできない日々の中で、私と同じような気持ちを抱いている顔も知らない誰かのことを、ふいに思う時がある。着物は私に勇気をくれた。着物を着れる。たったそれだけ。その事実が、私に自信をくれる。オンラインで仕事は続けているものの、実際に着物を着る機会がなくなることに不安を抱きはじめていた。もしこのまま、着付までなくしてしまったら、自分には
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