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救世主の正体

私たちはよく、「自由になりたい」と口にします。自分らしく生きたい。誰にも縛られず、自分の意志で人生を選び取りたい、と。そう語るものは今の時代、決して少なくありません。けれど、本当にそうでしょうか。実際のところ、私たちは人生が少しでも苦しくなったり、先が見えなくなったりした瞬間に、その大切なはずの自由をあっさりと手放してしまったりします。そして、外の世界へ「答え」を探しにいく。誰かが「これが正しい」と太鼓判を押したもの。成功したお決まりのルートや保証してくれる、失敗のない未来。私たちは、自由を求めているようでいて、実はただ「安心」にすがりつきたいだけなのかもしれません。だからこそ、私たちは時に「救世主」を作り出します。ある時は、強力なリーダーシップを持つ政治家。心を救ってくれそうな宗教家。あるいは、カリスマ経営者や、画面の向こうのインフルエンサー。歴史に名を残す英雄たち。その人物たちが本当に特別な能力を持っていたかどうかは、実はあまり重要ではありません。周りの人々が「この人なら、私を救ってくれる」と信じ、寄りかかったその瞬間にその人は救世主という役割を与えられるだけなのです。もちろん、何かに希望を持つこと自体は悪いことではありません。問題なのは、その希望と一緒に「自分の人生の責任」まで他人に預けてしまうことです。人生の舵を握るべき自分の手を離したとき、確かに自由と引き換えに束の間の安心を手に入れます。でもその代償は、私たちが思っているよりもずっと大きい。歴史を少し紐解くだけで、この悲しい構図が何度も何度も繰り返されてきたことが分かります。そして、現代もまったく例外ではありません。
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