カタリベタロウの物語 #50まぁ、まぁ、〜 #106舌打ち系男子
#50 まぁ、まぁ、陸橋を登り切ると、自転車を押していたおばあさんがしゃがみ込んでいた。「大丈夫ですか?」「大丈夫だよ」「そうですか……気を付けて下さい」何が「気を付けて下さい」だ。もっと気の利いたことが言えないのか、俺。自分の言葉の出なさ加減が恥ずかしくて、早歩きでその場を後にする。「お兄さん、ちょっと」と、そんな言葉が聞こえたような気がしたが、車の音に掻き消されて聞こえませんでしたよ的なスタンスで何事もなかったかのように凛とした背中を向け続けた。その罪悪感からか、下り坂に差し掛かったところでより一層早足になる。そして、下り切ったところですぐさま横道に逸れ、いち早く安心感を得ようとしつぁ。「よし、ここまでクレバー……」善人から一気に逃亡犯の深層心理へと没入。考え過ぎる悪い癖。もう何も考えずにさっさと行ってしまおう。「お兄さん」近付く自転車の音。「さっきはよくもシカトしてくれたなぁ!」と、一瞬にしてそんな被害妄想の台詞が聞こえてきたが一瞬にして馬鹿馬鹿しくなり一瞬にして意を決して一瞬にして愛想よく一瞬にして滑らかに一瞬にして一瞬にして振り向いた。「あ、はい」「さっきはありがとう。それでね、お兄さん、2千円貸してくれない?」「え?」予想外過ぎる言葉にわろけてきた。「必ず返すから。電話番号、教えて」何故だか貸しても教えてもイケナイ気がした。「あー今買い物してきちゃってないんですよぉ~」「そっかぁ~400円だけでもなぁい?」「あー小銭ならあるかも……あ、ちょうど500円玉あるんで、どうぞ」「ありがとねぇ。後で絶対返すから、電話番号、教えて」「いやいやいや、ホント大丈夫なんで、貰
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