第1話 「最悪な出会いが、全部の始まりだった」
春の空気は、少しだけ甘い匂いがする。校門をくぐった瞬間、新しい生活が始まるんだという実感よりも、面倒くささの方が先に来ていた。クラス替え。人間関係リセット。正直、興味はなかった。教室に入ると、すでに何人かが固まって話している。笑い声。探るような視線。どこにでもある光景。(…適当にやり過ごすか)そう思いながら、自分の席を確認する。窓際、後ろから二番目。悪くない。椅子に座ろうとした、その瞬間。「ちょっと」背後から、少し強めの声。反射的に振り返る。そこにいたのは、黒髪の女子だった。肩までのストレート。無駄に整った顔。でも、それよりも。目。まっすぐで、少しだけ冷たい。「そこ、私の席だから」言い方。明らかに柔らかくはない。「…いや、番号ここだけど」自分でも分かるくらい、少し苛立っていた。彼女は一瞬だけ席の番号を見て、小さくため息をついた。「……間違えた」それだけ言って、何事もなかったように隣の席に座る。(謝らないんだ)その瞬間、一気に印象が固まった。感じ悪い。関わらない方がいいタイプ。そう思ったのに。なぜか、そのあとも何度も気になってしまった。授業中。窓の外を見ている横顔。ノートを取るときの、無駄のない動き。そして。たまに見せる、ほんの少しだけ柔らかくなる表情。(…なんだよ)視線を逸らす。でも、また見てしまう。気づけば、意識の中に入り込んでいた。その日の帰り。昇降口で靴を履き替えていると、少し先に彼女がいた。誰とも話さず、一人で帰ろうとしている。(友達いないのか?)一瞬そう思ったけど、すぐに否定した。昼休み、普通に話してた。じゃあなんで。なぜか、少しだけ気になった。彼女はそのまま、振り返
0