新聞の嘆き
東京で一人暮らしをしていた頃
最寄り駅は、桜新町だった。
サザエさんの町だ。
栄えている感じではなく、基本的には住宅街であったが、昔からの豆腐屋があったり、散策すると楽しい町だ。
何かの用事で、電車を待っていた。
すると、40代ぐらいの女性に声をかけられた。
「あのう…お時間ありますか?」
何かの新興宗教かな?と身構えた。
「あの男をつけて欲しいんです」
女性は私に隠れるようにして
小声で話した。
指を指した先に、スーツを着た男が立っていた。
「どこの駅で降りるか、わかったら、ここに戻ってください。」
いや、まだやるとは言ってないぞ。
「壱万円お支払いしますから。」
「わかりました。」
迷いは無かった。
当時、私は金欠だった。
金がなさすぎて、
友人のために購入した、
お土産のスルメ(高級なやつ)をかじってしのいでいたくらいだ。
飽きると、お湯で戻して食べたり…
ちなみに、普通に食べた方が断然美味い。
煮ると、イカの旨味がすべて抜けてしまうのだ。
私は急いで新聞を購入した。
尾行の必須アイテムだと思ったからだ。
程なく電車が到着。
ターゲットと同じ車両に乗り
顔を隠すように新聞を配置した。
男を見る。
男は雑誌を開いている。
私を気にするそぶりもない。
男は渋谷で降りた。
何事もなく、任務完了だ。
あとは戻って報告するだけだ。
が…
ここから、妙なことが起こる。
電車を待つ間、目の前に
挙動不審な
男がいた。
ずっと
キョロキョロしている。
誰かを探すというより
自分の顔を見せているような動き。
私は、少しだけ距離をとった。
電車に乗っても、相変わらず
キョロキョロ。
たまに
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