【前嶋拳人】コショウ一粒のために、戦艦を動かす男の日常
もしもあなたが、たった一粒のコショウを手に入れるために、何百人もの乗組員を乗せた巨大な戦艦を動かさなければならないとしたら、それを無駄だと笑うでしょうか。最近のニュースで、情報の記憶装置という小さな部品が、世界中の巨大企業を揺さぶるほど高騰しているのを見て、私はそんな光景を思い浮かべてしまいました。エンジニアとして十年以上、目に見えない電子の世界で戦ってきましたが、今ほど「たった一つの小さな存在」の重みを感じる時代はありません。私たちは、あまりにも便利で安価なものに囲まれ、その一つひとつに宿る魂を忘れかけていたのかもしれません。最新のスマートフォンも、複雑な基幹システムも、それを構成する最小単位のパーツがなければ、ただの重たい置物に過ぎません。大手企業で堅牢な仕組みを築いていた頃の私は、部品はいつでもそこにあるものだと信じて疑いませんでした。しかし、独立して多様な現場を渡り歩く中で、その一粒のスパイスがいかに全体の味を決めるかを痛感するようになりました。最高級の肉を用意しても、塩一振りがなければ台無しになる。システム開発も、人生も、実はそうした些細な細部にこそ、神様が宿っているのです。部品の価格が跳ね上がり、手に入りにくくなった状況を、私は一つの道楽として楽しむことに決めました。足りないからこそ、今あるものを極限まで大切にする。代わりのきかない状況だからこそ、知恵を絞って新しい味付けを考案する。かつての開拓者たちが、未知のスパイスを求めて大海原に漕ぎ出したような、そんな野心的なワクワク感が今の私にはあります。効率化という名の近道が塞がれたとき、私たちははじめて、自分自身の足で歩
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