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十二の宮と、ひとつの祈り

あるところに、日々「心の音」を聴いて暮らしている人がいました。 彼は人生の流れに耳を澄ませ、季節の風のように移ろう感情に寄り添うのが得意でした。 彼の心には、十二の部屋がありました。 それは人生を彩る「宮」と呼ばれる場所。 家族との絆、親への想い、子との関係、友とのつながり。 お金の巡り、仕事の意味、健康の響き、恋のやさしさ——それぞれの宮が静かに息づいていました。 でも、そのどこかひとつには、必ず小さな黒丸が浮かんでいました。 そこは少し傷ついていたり、滞っていたり、言葉にならない不安が息を潜めている場所。 ある夜、その人はそっと目を閉じ、黒丸の宮へ心を向けました。 そして小さな声でつぶやきました。 「きっとこの瑕があるから、他の場所が守られている。ありがとう。あなたがそこにいてくれるから、私は優しくなれる。」 その祈りは、静かな波紋のように十二の宮へ広がりました。 すると、黒丸が少しだけ透明になり、光がその場所にも差し込んだのです。 完璧じゃなくてもいい。 全てがうまくいっていなくても、心はこんなにも豊かになれる。 彼は今も、宮を回りながら、今日も誰かの心をそっと伴奏しています。
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