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あたしは社畜であんたは天狗

 人間はなんでもすぐ忘れてしまう。  この世の春を謳歌し、溢れるカネに任せて、自分たちにできないことはなにもない、この繁栄は永遠に続くのだと、信じて疑っていなかったのが、つい二十年ちょっと前くらいである。  その頃、オフィス街では五時きっかりになると大量に人が吐き出され、そいつらはあちこちの繁華街に我先にと遊びに繰り出していたものだ。  だが、今はどうだ。  五時くらいでは、誰も仕事から手を放すことができない。  最低あと一時間、場合によっては三時間以上、話に聞くブラックとかいうのに捕まると、帰宅自体がぜいたく品だといわんばかりに……連中は、働かされる。  夜陰を圧する煌々としたオフィス街の明かりを、あたしは上空はるかから見下ろす。  つまらなくなったな、と夜風に独り言ちる。  こんなすり減った連中を、ちょっと前みたいにからかっても、余裕がないせいか、そう面白い反応が返ってくることはまれで。  第一、覇気がない、覇気が。  明日にも自分の国が滅亡するかのような悲観に苛まれたニンゲンどもをさらにいたぶって悦に入るほど、あたしは悪趣味じゃないんだ。  それでもまあ、ニンゲンにちょっかいを出すのがやめられないのが、あたしの性分で。  せめて、何か面白い反応を返してくれる奴を求めて、虹色の翼をはばたかせる。  まあ、この翼に限らず、あたしが望まない限り、ニンゲンにはあたしの姿は見えないんだけど。  夜風に逆らうように上空を流していると、ふと、眼下に気になる光景を見つけた。  背中を丸めて急ぎ足の、一人の若い女。  それだけなら、比較的マシな時間に帰路に就くこ
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